第26話
ミラージュ・ピース本社襲撃後、地下で繰り広げられた死闘の先に管理者の部屋を知る。
そこにはこの世界の真実が記されており、同時にこれから起こる
終わりの時は迫っている。
だがそれでも人類は諦めなかった。
希望の蒼い燕を曇天の空へと託したのだ。
「そろそろ発射体勢に入る。やるべきことは……分かっているな?」
コロニーの外で簡易的に製造されたロケットが打ち上げ準備を行っていた。
生き残った企業が前時代のデータログ……ロスト・アーカイブとそれぞれの力を合わせて
「片道切符だが私は出来る限り傍にいる。安心しろ」
セレナがロケットと共に積まれたブルー・スワローの中にいる自分を最後までサポートしていく。
やがて発射準備が整うとカウントダウンが開始する。
「カウントダウン開始……。十……。九……。八……。」
カウントダウンが減るにつれてロケットに火が灯り始める。
これから行く先……。新天地へと飛び立つために。
「二……。一……。……零。点火!」
ロケットに火が灯り、大きな音と煙と共に打ちあがる。
自分は真っすぐ天に向かって行くのをロケットの外側にある格納庫からその光景を見る。
上がっていく中、その目からそのまま地平線まで続く赤黒く染まった曇天の中に入り込む。
赤黒い雲の層が厚いのかすぐには抜け出さずにその中を突き進む。
ふと横を見ると何か銀色の飛沫が飛んでいくロケットと反対方向へと進んでいくのが見えた。
しばらくすると曇天を突きり、そこにはいつも見ていた灰色の空でない光景と強い光がモニターに表示される。
そのままロケットはさらに上へと、
ガタガタと衝撃がコックピットを揺らしているが、やがてその衝撃も無くなった。
「――」
外を見ると暗い空間にいくつもの小さな光が見える。
下を向くと雲に覆われているせいか白に近い灰色をした星がそこにはあった。
そしてその近くには巨大な衛星施設が存在していることを確認する。
ロケットは燃料が空になった部分を分離しながらその近くまで進んでいき、やがて格納庫から一つの機体が排出される。
自分は無重力の感覚を味わいながら衛星施設の指定されたとある場所まで移動をする。
それは巨大なリング状の形をしており、円の外側を機械が回っているようであった。
自分はその円の中に入り、一つのキーコードを入力する。
――キィィィン。
その入力直後、巨大なリングの外側の部分が徐々に動き出していった。
「聞こえるか?どうやら目標ポイントに到達したようだな」
だが巨大な衛星施設以外何もないこの空間いるときの孤独感で押しつぶされそうになったところにセレナの声を聞いて自分は安心する。
「――こちらは大丈夫だ。なにも気にすることはない」
リングの動きが活発になり、その周囲に磁場が発生しているような現象が起こり始める。
「飯……うまかっただろ。ロウのおすすめは外れがなくてな」
ブルー・スワローのモニターにカウントダウンが表示される。
その数が小さくなるほどにリングの外側の動きが早くなり、何かのエネルギーが発生し始める。
「また食いたいもんだな……お前と」
やがてカウントダウンが零に近くなるとリングの中に光が灯り始め、その光は強くなり始めた。
「私はずっとお前を待っている。だから……絶対還ってこいよ」
セレナのその言葉と共に自分は機体ごと吸い込まれるように光に包まれていった。
――――
光の螺旋のような光景が続く中、自分はエティータにインプットされたナビを起動し、指定の座標まで機体を動かす。
指定の座標に到着させると、その場で機体を停止させる。
やがて光の螺旋が徐々に黒くなり始めると、その周りも景色も同じように黒くなり始めた。
しばらくした後、自分の目には先ほどと同じ暗い空間に小さい光が見えるところに来ていた。
ただ違うのは近くにある衛星施設の形が違うこと。
そしてそこから白い羽がついた機体が無尽蔵にこちらに向かって吐き出されていること。
だがそのことに関して自分には関係なかった。
下を向くとそこには青くて綺麗な星が見えている。
自分はブルー・スワローをその星に向けて、発進する。
降下していく中、大気圏突入の際に起こる摩擦熱によって全身を焼き焦がしながら流星のようにその星に向かって堕ちていった。
まるで幸運を告げる蒼い鳥が、不吉を告げる黒い鳥に変わるように……。
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