第24話
『作戦の説明をする。
コロニーを半壊させたミラージュ・ピース本社を襲撃する。
情報によるとその施設の地下が一部が厳重なシェルターになっている。
その中には管理者という今回の黒幕がいるだろう。
奴を倒すためにも、地下シェルターに侵入しなければならない。
ミラージュ・ピース社の外部には無数の自立型兵器が警備として徘徊している。
シェルター侵入までに機体にダメ―ジを負わせるわけにはいかない。
突撃用装備としてお前の機体の外側には【ワーデン・ダイバー】を纏ってもらう。
施設内にはヴァルネイム・スリーの反応も確認した。
奴との決着をつけるには相応しい舞台だろう。
説明は以上だ。
上の連中共は次の時代に向けて眠りに付こうとしている。
奴等のゆりかごを破壊し、責任を負わせるぞ』
かつて最も復興が早いと言われていたコロニーの天井には無数の穴が開いている。
その部分から汚染された外気が流れ込み、コロニー内はまともに住める場所は限られていた。
虐殺に等しいヴァルネイム・スリーの凶行によってコロニーの人々の大半は死滅してしまった。
生き残った人々は緊急用に造られた地下へと逃げ延びたが、それも時間の問題だろう。
近いうちに降り注ぐ
一つの時代が終わるという絶望が包み込む中で、ただ一人に全てを託していた。
「そろそろ出撃だ。ゲートを開けるぞ」
地下ゲートがゆっくりと動き出し、地上から外気を吸い込む。
中は発射口になっており、入口まで誘導する明かりが照らされる。
地下ゲートの奥には修復された蒼い機体、ブルー・スワローがカタパルトに立っていた。
その姿は以前のような細い姿ではなく、全身を黒くて分厚いコートで覆ったような姿であった。
「よし、行け!」
カタパルトが急速に動き出し、黒い機体を外へと押し出すように真っすぐ外へと向かう。
やがて地下ゲートから一つの機体が吐き出されるように飛び出した。
その機体は装甲の上からさらに黒く塗られた厚い装甲で上乗せされており、背中には機動性を維持するためなのか複数のブースターが取り付けてあった。
肩には巨大な縦長の包みが装備されており、その姿は通常よりも二回りほど機体のサイズが大きくなっている。
そのせいか、以前よりも精密な動作が苦手になっている。
「作戦の内容通りにお前は何も気にせず一気に突っ込め。立ちはだかる奴がいれば撃滅しろ」
自分は背中に取り付けてあるブースターに火を灯し、ブルー・スワローを急加速させる。
ワーデン・ダイバーの装備による重量の関係上、飛行ではなく地上を滑るように機体を前に倒して進んでいく。
進行途中にある邪魔な瓦礫や倒壊した建物は複数のブースターを細かく動かすことによってすり抜けるように通り抜けていく。
「……身体の方は問題ないか?」
セレナが通信越しで自分の身を心配してくる。
自分は自身の身体を確認し、極めて良好と返事をする。
「……そうか。それならばいい」
半壊したコロニーの区部を通過する。
ミラージュ・ピース本社到達まで残り二つ。
「お前は……お前の選択に後悔はしないのか?」
セレナは自分に疑問をぶつけてくる。
彼女がこんなこと言うのは初めてであり、自分はなんともいえない感情に包まれる。
少し考えた後、セレナに自分は後悔はしてないと伝えた。
半壊したコロニーの区部を通過する。
ミラージュ・ピース本社到達まで残り一つ。
「……なあ、この作戦が終わったら一緒に飯を食わないか?」
セレナのこの場に似合わないあまりの唐突な提案に、自分は少しだけ気が抜けてしまう。
「いやな……。お前とはそういうことをまだしたことなかっただろう?ロウがよくうまい飯屋とか教えてくれたんだ。いい機会だと思わないか?」
セレナの不吉ともいえる発言に自分は思わず苦笑してしまった。
そのことを察したのかこの発言に多少の羞恥心を感じながら、セレナは咳を一つ払う。
その咳を聞くと共にマップを確認する。
半壊したとはいえ電波はまだ生きており、外部から流れ込む黒い塵による障害はないに等しかった。
半壊したコロニーの区部を通過する。
「目標ポイントに到達。らしくないことを言ってしまったが気を引き締めろよ。お前が最後の希望なのだからな」
遠くに一つのモニュメントのように巨大な建物が、その先から青い一筋の光が
「前方に自立型兵器を確認。クレイアシールドを展開しつつ突っ込んでいけ」
徘徊していた複数の四つ足型の自立型兵器がこちらの存在を察知し、装備したバルカンでこちらを撃ち始める。
――ババババババババ!!
四方から撃たれながら目標ポイントへと一気に加速させる。
クレイアシールドがバルカンによって青い火花を散らしているが、お構いなしにミラージュ・ピース社へと突っ込んでいく。
「ミラージュ・ピース本社到達まで、残り五分」
侵入者を察知した自立型兵器がこちらにゾロゾロと集まってくる。
自分は滑るように蛇行しながらできるだけ攻撃の嵐を掻い潜っていく。
「ミラージュ・ピース本社到達まで、残り四分」
ミラージュ・ピース本社が近いためかミサイルを搭載した複数の自立型兵器がこちら攻撃を開始する。
シュォォォォン!!
煙と共に大量のミサイルが侵入者の方に向かって放たれる。
自分は接近してくるミサイルを確認すると、走行するために前に倒していた機体を起こす。
脚部に取り付けてあるブースターの点火のほうを強くしながら両手に装備したマシンガンで降り襲い掛かるミサイルに迎撃を開始する。
――ドドドドドドドド!!
マシンガンでミサイルを迎撃しながら、脚部のブースターで滑るように移動していく。
「ミラージュ・ピース本社到達まで、残り三分」
横に逸れたミサイルの爆風はワーデン・ダイバーの装甲に纏っているクレイアシールドで軽減する。
「ミラージュ・ピース本社到達まで残り二分」
自立型兵器が自分の進行方向を妨害するような位置取りを開始する。
自分はそれらに対して再度、機体を前に倒して手に装備したマシンガンを滑りながら撃ち込む。
「ミラージュ・ピース本社到達まで残り一分」
止まることを知らないブルー・スワローに自立型兵器自体が盾になるように立ちはだかる。
自分はそれを全身を包むクレイアシールドの出力を上げ、強行突破をするように体当たりする。
――ゴガァン!!
巨大な鉄塊がエネルギーを纏いながら高速で突っ込まれた自立型兵器、吹き飛ばされ大破する。
「ミラージュ・ピース本社到達」
いくつもの自立兵器をなぎ倒して進んだ先にミラージュ・ピース本社に自分が操る黒い鉄塊が到達する。
そこは一つの要塞のような作りになっており、その周囲にはモニターで目視しても夥しいほど自立型兵器がこちらに銃口を向けていた。
中にはAIで動かしているのか旧型の機体も混ざっており、数的には圧倒的に不利な状況であった。
そんな中を自分は黒い鉄塊を前進させ、ミラージュ・ピース本社へと突っ込んでいく。
――ドォン!ドォン!ドォン!
――ババババババババババ!!
――ドン!ドン!ドン!ドン!
大量の弾幕が自分の機体を襲い掛かる。
その衝撃に自分は耐えながら加速を行う。
――キュォォォォン!!
大量の弾幕に耐えていたクレイアシールドも枯渇しそうなその時、機体に纏っているクレイアシールドのチャージを開始する。
ワーデン・ダイバーの装甲に纏っているクレイアシールドを急激に圧縮され、やがてその黒色の機体は青く光り出し、その光はさらに強くなっていく。
――キィィィィン……。
一瞬の静寂の後、圧縮していたエネルギーは許容の限界を超えると、一気に青い光が強くなる。
――ドオォォォォォォン!!!
ワーデン・ダイバーの一部の装甲を弾け飛ばしながら、青く光ったその場所を中心に大爆発を起こした。
ワーデン・ダイバーの真骨頂。
それは単なる追加装甲ではなく、装甲に纏っているクレイアシールドを圧縮させ、周囲に大爆発を起こす一回切りの爆破兵器であった。
青い爆発が広がり、ミラージュ・ピース本社も大きく崩壊する。
周囲にいた自立型兵器たちは爆発に耐えられず、撃滅されていった。
チリチリと音が鳴り響く中、爆発の中心にはそれを引き起こした機体だけが立っていた。
――ガコン!ガコン!
役目を終えたワーデン・ダイバーが機体から剥がれ落ちる。
それと共に肩に装備していた巨大な包みを地上に落としながら手に持っているマシンガンをその場に棄てる。
二つの黒くて巨大な包みの中から、一つずつライフルガンを取り出す。
試作型ではない、新開発されたライフルガンを両手に握り込む。
爆発の中心から現れた機体。
それは残骸となった蒼い燕が蘇った新たな姿であった。
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