第15話
『依頼の概要を説明します。
今回の作戦はそちらでもご存じの通り過激派組織であるリトル・クゥが各コロニー区部で襲撃を行っており、その撃退になります。
彼らはロスト・アーカイブの強奪を目的としており、私たちとしてもこれを見過ごすわけにはいきません。
ですが敵対企業であるフューチャー・コスモス社にも目を光らせなければいけないこの状況では動きずらいのが現状です。
リトル・クゥに対しては我が社が保有する旧型などのハウンズが抑えに行かせていますが、良い結果を聞きません。
さらには援軍として他の者も向かわせましたがその報告もありません。
今回貴方には援軍として向かって状況を確認してほしいのです。
説明は以上です。
では良い結果を期待してます』
大型輸送機に吊られながら目標ポイントまで蒼い機体が向かっていく。
そこは空白の区部のような人が消えた戦場ではなく、まだ人が存在していた残り香がする場所でもあった。
「過激派組織か……。さて、誰の首輪がついたものか」
セレナが通信越しで呆れたような声で独り言を言う。
今回の作戦は味方の援軍としての作戦であり、その戦場に向かってる間にはいくつもの破壊された旧型やWFの残骸が溢れかえっていた。
「今回は武器の試作品を提供してもらった。もうすぐ目標ポイントだ。試作品の調整を確認しておけ」
セレナに言われたとおりブルー・スワローの両手に持った武器は今回の作戦において企業側から新たなライフルガンの試作品をテストを兼ねて提供されていた。
その新たな試作ライフルガンのデータを確認していく。
「目標ポイントだ。投下するぞ」
ガコン、という音と共に地上に投下される。
落ちていくブルー・スワローは背中のブースターを吹かしながらゆっくりと着地を行った。
「……何か様子が変だな」
セレナが周囲の状況に怪しさを感じ始める。
自分もレーダーやモニターで周囲を確認すると、降りたこの場所にはブリーフィングで聞いていた友軍機の反応がないのだ。
すでに墜とされてしまったのか。
だがそれにしては周囲に気配を感じる。
――ドン!ドン!ドン!ドン!
気配を探っているブルー・スワローに向かって物陰から数発の弾が飛んでくる。
不意打ちによる攻撃によって自分は何発か被弾を受けながらも素早く建物の影に身を隠し、周囲を確認する。
撃ってきた方向をモニターで確認すると、そこには友軍機の番号が表示されていたが識別表示では敵機の証である赤いマークが表れていた。
「きな臭いと思っていたが裏切りか。お前も慣れてきたと思うがこんなんばかりだな」
身を潜めた場所から移動し、ブルー・スワローは見渡すために高い場所に出る。
この状況的に友軍がどういうわけかリトル・クゥに寝返った者が複数いるのだろう。
友軍の存在がいないということを理解し、この場にレーダーに映る友軍機のものは全て敵という表示をさせておく。
「――――」
やがて全方向に向かってレーダーで確認すると友軍機だった十機近くの旧型の表示が赤くなっている。
他はリトル・クゥが保有するWFなのだろう。
全部で二十機程度の敵がこの場所にいると表示された。
「なるほど。報告がないのは裏で通じている者のせいか。不意打ちなら
自分が操るブルー・スワローは手に持った試作ライフルガンを握り込み、その敵機となった友軍機を墜とすためにブースターに火を吹かす。
「浄化から秩序へ……浄化から秩序へ」
敵機となった友軍の旧型がこちらに向かって手に持った武器で撃ち放ってくる。
幸いにも距離は遠く、放たれる弾を避けるのは比較的容易であった。
その間に持っている試作ライフルガンの手を握り込む。
「解っていると思うが今回提供された試作ライフルガンは二種類のパターンに切り替えられる。AとBといったところだろう。A型は発射レートが遅い分一発が重く、B型は発射レートが高いが一発が軽いらしい。どういう技術力かは知らんがライフルガンとマシンガンの両立してるようだ。裏切った奴等をデクにして両方のデータを取っておけ」
自分はまず初めに試作ライフルガンをA型に切り替え、狙いを定める。
目の前には複数の旧型とWFがこちらに向かってくる。
――ドン!ドン!ドン!ドン!
まずはA型のほうで旧型とWFに向かって撃ち放った。
ガン!ガン!と着弾と共に装甲が抉られるような金属音が鳴り響き、数発当たった者から撃沈していく。
撃った感覚的には以前装備していたライフルガンよりも発射レートが若干遅いが威力はそれよりも上のようだ。
自分は襲い掛かってくる旧型の攻撃を飛びながら攻撃を避け、試作ライフルガンで狙い撃つ。
「ば……化け物め」
直線的なジグザグの移動で襲い来る蒼い機体に対して旧型とWFは振り回されるような形になり、こちらを満足に視認することもままならない状態で撃墜されていく。
「よし、A型のデータはこれでいいだろう。次はB型のデータを取っていけ」
目の前の敵を駆逐すると今度は横と後ろ側から反応がレーダー表れ始める。
自分は試作ライフルガンをB型に切り替えてそちらへと加速し、向かいに行った。
「なんだあの動きは……。あんな動きを人で動かすことができるのか!?」
旧型とWFに目には映るその姿は急加速をしながら勢いよくこちらに向かってくる蒼い機体がおり、それに反撃しようと手に持った武器で撃ち払おうとしてもそれは横方向に急旋回をされ回避される。
そして一瞬の間に距離を詰められると、手に持った武器の火が吹き始めた。
――ドドドドドドド!!
鋭い弾幕が旧型とWFを襲い、その弾幕によって自分が操る機体の装甲は穴だらけになる。
撃ち抜かれた旧型の機体が爆散する手前、それに乗っていたパイロットは目に映ったその光景を口にした。
「し……死神……」
B型の連射力は凄まじく一瞬の間に大量の弾幕を浴びせることができ、旧型やWFなどの所謂雑魚の相手には丁度良いと自分は感じた。
だが、A型と比べて弾の消費が激しいことからこのB型を常時で扱うのはやめておいたほうがいいだろう。
「よし、敵旧型及びWFの排除を全て確認。後は黒幕を潰すだけだ」
自分は最後に遠くでレーダーに映っている方向へと向きを変える。
そこにはこの状況を先ほどから遠くで様子見をしている黄色いTAが佇んでいた。
「同士たちがやられしまったか……。だが彼らも我々の計画に参加できて本望だろう。浄化から秩序へ」
肩には黄色のフードがデザインされたデカ―ルが貼られている。
恐らくこいつが今回の主犯なのだろう。
「我らの計画は邪魔させない。【クゥ・リトルソルジャー】。参る」
中量型のその機体は片手しか武器を持っておらず、その片方には大きな箱のような物がついていた。
「あいつ……パイルバンカーを装備しているな。気をつけろ。接近してきたら間違いなくパイルバンカーの直撃を狙ってくる。絶対当たるんじゃないぞ」
クゥ・リトルソルジャーは加速しながらこちらへと向かい、片手にもったマシンガンで牽制してくる。
――ドドドドド!!
自分は試作ライフルガンをA型に切り替え、中距離から狙いを定める。
マシンガンの弾幕の中、自分は落ち着いてクゥ・リトルソルジャーが有効射程に入ったのを確認し引き金を引いた。
――ドン!ドン!
バキン!と数発撃ち込んだ試作ライフルガンの弾の直撃を食らい、身に纏っていたクレイアシールドを四散させる。
だがクレイアシールドを破壊しても黄色いTA、クゥ・リトルソルジャーは気にもせずこちらへと突っ込んでく。
「――!?」
違和感を感じた自分は向きをそのままに後方へと飛びながら咄嗟に試作ライフルガンのA型からB型へと切り替える。
エティータから接近してくる敵機の警告音が鳴り響き、素早く試作ライフルガンの引き金を引いた。
――ドドドドドドドド!!
高レートから放たれる弾幕。
その弾幕の雨を浴びせて尚、クゥ・リトルソルジャーはこちらへの加速をやめない。
すでに手に持ったマシンガンはこちらが放つ銃弾によって腕ごと持ってかれているのにも関わらずだ。
「浄―による秩序を―」
もはや機体の制御が利かなくなっているのか、それとも自分と同じような状態なのか。
クゥ・リトルソルジャーは加速を止めずに後方にバック走をしてる自分に勢いよく向かう。
「まずい!回避しろ!」
クゥ・リトルソルジャーが片方の腕に装備されているパイルバンカーを展開させる。
弾幕をものともせず腕を引きながらこちらへと勢いよく向かうそれはまさに猛進であった。
――キィィィィン!!
クゥ・リトルソルジャーが急加速の音と共に急接近しパイルバンカーがブルー・スワローに放たれるその一瞬、自分の視界が広くなり辺りの経過する時間が遅くなり始める。
横にゆっくりと伸び続ける景色を見ていると脳の裏側を焼き付かせるような感覚に陥りながら自分はブルー・スワローを横に急旋回のハンドルを切ろうと意識する。
その行動をすると、ゆっくりと時が流れながら景色が伸びていた状況から徐々に時が早くなり、それと共に景色も元に戻ろうとゆっくりと収縮し始める。
やがて景色が完全に元に戻るとすでにクゥ・リトルソルジャーは目の前に接敵している光景だった。
――ギュイイイィィィン!!
パイルバンカーから甲高い金属音が鳴り響き、こちらに突き立てようと動作を行う。
その攻撃を自分は間一髪、機体を急旋回させ、横に逸らして回避した。
「―んだと?」
目標物を失いながら高速で通り過ぎるクゥ・リトルソルジャーはその先にいた動かなくなった旧型にパイルバンカーが突き立てられる。
――ギュイイイィィィン!!ガガガガガガッ!!
放たれたパイルバンカーは甲高い金切り音が鳴り響きながら射出物が飛び出す。
その瞬間、射出物によってそこにいた旧型の装甲が一気に貫かれ、そのまま爆散していった。
事前にクレイアシールドを剝がしておいたおかげなのか、クゥ・リトルソルジャーはその爆発に巻き込まれるように黄色い機体を炎に焼かせる。
「――蒼い死神め……。―はり、こい―は消さなく――」
その言葉と共にクゥ・リトルソルジャーの機体は貫いた旧型と同じように爆散していった。
「自滅したか。宗教というものは厄介だな。命の重さを軽くさせている」
セレナがその様子を見て呟く。
セレナが放った命の重さ。
それは自分にも当てはまるのだろうか。
「敵ATの撃破を確認。作戦完了だ。よくやった。裏切りの存在によって追加報酬を貰えるのは良いことだ。お前も様になってきたな」
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