第14話

 コロニーの空白の区部を利用した企業と契約をしているTA乗りの戦いが激化する中、影を潜めていた者たちが現れ始める。

 有象無象であった武装集団は過激な組織であった宗教団体【リトル・クゥ】に吸収され、両方の企業に攻撃を開始した。

 彼らリトル・クゥの戦力は軍用WFや旧型、次世代型ノーブスまでも所要しており、お互いの企業はこれらに対処するために争いを一度終わらせる必要が出てきた。


『全てを崩壊し、浄化から秩序へ』


 彼らの掲げるスローガンに沿うようにリトル・クゥはゲリラ的な強襲を続ける。

 企業同士の戦いからテロリストへと、争いの矛先は変わりつつあった。






 ――某通信記録。

「……さて、揃っているかね?」

「ええ、ここにいますとも」

「私もここにいます」


 それぞれ異なった三人の人間が一つの通信回線に集まる。


「よろしい。今回の話は他でもない。皆が頭を抱えているであろうテロリストについてだ」

「リトル・クゥ……。あの宗教組織があれほど準備をしていたとは……」

「以前から警戒はしていましたが、この争いが起こった直後に多数の武装組織の攻撃……恐らくリトル・クゥが裏にいるのは想像できるでしょう」

「問題なのは奴等が抱え込んでいる次世代型ノーブスだ。君たちのTA乗りが関与しているというのはないのかね?」


 一人の老人が他の二人に対して疑問を抱く。


「私の管理は完璧です。それはありえません」

「彼女と同じです。そういう貴方の方は大丈夫なのですか?」

「こちらが聞いている以上、それはありえない。つまりは"契約漏れ"の連中が奴等のとこに集まったということでよろしいかな?」

「そうことになるでしょう。ですが彼らの目的が分かりません。破壊活動なら今じゃなくてもいいはずです」


 女性の声の主が今回の無差別な破壊活動に疑問を抱く。

 それに対して落ち着いた男の声の者が話し始める。


「奴等の目的は恐らくロスト・アーカイブでしょう。理由は不明ですがロスト・アーカイブを保有している施設が多く狙われています。そちらも同じでは?」

「……エネルギープラントなどもあるが、大体は合っている。奴等の狙いは前時代の遺産か」

「解明されていない部分をあの組織で解読できるほどの技術を保有しているとは考えにくいです。別の狙いでは?」

「現状ではその目的で間違いでしょう。現にロスト・アーカイブを多く保有しているせいなのか、彼らの攻撃は激しさを増しています。あの組織に解読できるほどの技術力を保有していると考えるのは不思議ではありません」


 しばらくの沈黙。

 やがて老人が口を開き始める。


「皆が保有するロスト・アーカイブを奪われているのもまた事実。我々のやることは一旦保留すべきで、奴等を根絶やしにするのが必要だ」

「……仮に彼らからロスト・アーカイブを取り戻したところで、それの持ち主に正しく返ってくるのでしょうか?」

「君は前時代の遺物に自分の名前を記しているのか?それだったら話は早いが」

「なるほど……。では我々の目的は一度保留に、そして表では過激派組織リトル・クゥの鎮圧に協力的になる……ということでよろしいかな?」

「……分かりました」

「それでいいだろう……。我々が用意した舞台を荒す輩は退場してもらうしかあるまい。それが例えそらからの来訪者でもな。そのために我々は猟犬飼っている。それが一番であろう」









――某窓のない空間


「先生。例の組織が現れたようです」

「あの見境なしの集団か。彼らの目的は?」

「こちらで掴んだ情報ですと、ロスト・アーカイブとのことです」

「そうか……。これはチャンスかもな」

「というと……?」

「企業が管理している前時代の遺産を彼らが解き放っているとも見えないか?」

「……なるほど。そういうことですか」

「ああ、これが手に入れば我々の研究も捗るというものだ」

「ですが彼らは他の武装集団を取り込んでいるということです。戦力的に大丈夫でしょうか?」

「手は打ってある。試作品を用意した」

「なるほど、一石二鳥ですね」

「そうだな。彼の戦果が待ちきれないよ。ついでに企業が秘匿しているあの施設。あれの存在を知れればよいのだが」

「あの施設の情報……。発見されて以降、調べても厳重なセキュリティによって中身を知ることができません」

「まぁ時間が解決するだろう。最もあの施設はパンドラの箱だと解っていても開けたいものだな」

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