第7話 結束

念交信。

いわゆるテレパシーで交信した妙心坊と霧隠慎之介。

『妙心坊様・・・

今、しばらくお時間を頂戴できますでしょうか。』

妙心にも、慎之介がかなり離れた所にいることがわかった。

『たしかに、かなり離れておられますね。

大丈夫でございますよ。

まだ時間はございます。』

すると、次の瞬間、妙心坊の目の前に、黄金の光が輝き慎之介が姿を現した。

テレポテーション瞬間移動である。

わずか3歳ながら、瞬間移動という超能力を披露してみせた。

妙心坊も、テレパシーを送受信できるサイコパス。

驚きはしたが、腰を抜かしはしない。

妙心坊とて、この時、まだ6歳。

『妙心坊様でございますね。

霧隠慎之介にございます。

以後、お見知りおきを。』

『これは。わざわざお越し下さいましたか。

私、南禅寺修行僧妙心と申します。

こちらこそ、よろしくお願い申し上げます。』

とても幼い子供同士の挨拶とは思えない。

この2人、いずれは手を結んで闘うことになるのだが。

とにかく、この時は友情が芽生えた。

そして、慎之介はついでとばかりに、魑魅魍魎の宴会に向かった。

慎之介は、魑魅魍魎に対峙すると、まだ小さな手で印を結んで真言を唱えた。

次の瞬間、慎之介の後ろに光輝く毘沙門天が現れ、魑魅魍魎に光を放った。

魑魅魍魎全てが、バラバラに消し飛び、辺りに静寂が戻った。

妙心坊。

さすがに今回は驚いた。

『慎之介殿。

貴殿、毘沙門天様を。』

妙心坊は、子供とはいえ、妙覚寺派大本山南禅寺の修行僧。

毘沙門天を守護神に持つ人間など初めて見た。

『いやいや、毘沙門天様は、私の守護神ではありません。

ご容赦のほどお願いします。』

妙心坊にしてみれば、冗談ではない。

自身、多聞天を守護神に持つ闘士である。

毘沙門天の守護を受ける闘士であれば、かけがえのない仲間にほかならない。

『では、慎之介殿。

あなたは、いったい。』

『そのことは、おいおい。

いずれ、お見せしなければならなくなりますよ。』

慎之介、自身の守護神については、あまり明らかにしたくはなさそう。

妙心坊も、それ以上深入りしない。

見事な阿吽の呼吸が生まれていた。

この時、妙心坊ではなく、他の修行僧達が騒ぎ始めたから、それ以上続けると、自らのことも話さなければならなくなると判断した。

わずか6歳の小坊主ながら、妙心もまた見事な小坊主であった。

他の小坊主共がワラワラと集まってくるのが見えたので。

『それでは妙心坊様。

私は、これにて。

いずれまたゆっくりと。』

『慎之介殿。

ご助勢ありがとうございました。

いずれ私、龍門館にお訪ねいたします。』

その時、慎之介また光に包まれて、姿を消した。

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