第5話 たぬきの里
テレポテーションで空中に逃げた慎之介と雅。
寺町御池のアーケード下で遊び始めていた。
突然現れた2人に、本能寺の寺務所で驚いたオッサンが寺町通りに出て来た。
『雅、慎坊お前達今までどこに
いた。
なんで突然此処に。』
驚いてはいたが、技術的なことがわからないだけで恐怖は感じていない。
『父上。
こちらにおられたんですか。』
オッサンは望月孝遠。
望月雅の父親で、甲賀忍者の棟梁。
『慎坊、半蔵殿は。』
『呼んできましょうか。』
『頼めるか。』
慎之介、ズボンのベルトをいじるとフワっと浮き上がった。
忍術でもなんでもない。
ズボンに取り付けられた反重力装置を作動させただけで、浮かび上がることしかできない。
推進力は、火薬などで噴射するか風力発生をして進むしかないが、慎之介は、この時、火薬を使った。
爆発的に進むからである。
急ぐことを優先したのであるが、この方法、爆発的に進むのは良いが、速度が速過ぎて、止まることが難しい。
慎之介、両足を前に出して、足に着けた噴射装置を噴射してブレーキをかけて、半蔵のそばで速度を落とそうとした。
そこは幼児のあさはかさ。
体幹のバランスを崩してポテっと転倒して頭をしこたま打ち付けてしまった。
『ハハハ・・・
父上、本能寺の寺務所に佐助
様がお越しです。
それと、いつもの白髪白髭の
お爺さんも。』
白髪白髭のお爺さん、甲賀忍者ではないが、信楽の里に住んでいる。
度々、京都に出てきては、慎之介に会いに来ている。
慎之介は、白髪白髭という風貌が怖くて、このお爺さんが苦手であった。
とはいっても、このお爺さん、慎之介の父半蔵の父親である。
つまりは、慎之介の祖父。
戸澤白雲斎。
日本忍者の総元締めであり、忍術陰陽術学校の校長である。
伊賀の忍者であるが、名前は伊賀忍者の者ではない。
甲州忍者、風磨の有名忍者の名前である。
戸澤白雲斎の名前が歴史に出てきたのは、武田信玄の忍者軍団の指揮者としてである。
武田の滅亡とともに、行方が不明になっていた。
山深い伊賀の山奥に隠れ家を営んでいた。
そのうちに、服部と婚姻してその家系は途切れたが血筋は残した。
忍者に家系という概念は薄い。
したがって、自らの血筋を残したのであろう。
そして、当代の白雲斎。
初代から数えて十六代になる。
孫の慎之介が可愛くて仕方がない。
三重県伊賀市と滋賀県甲賀市の県境に城のような広大な地を開墾して、忍術と陰陽術を教える道場を開いている。
三重県の伊賀市は言うまでもない、伊賀忍者の里である。
隣接地の滋賀県甲賀市は旧町名で滋賀県甲賀郡信楽町。
いわゆる焼き物の町として、たぬきの焼き物で有名。
戦国時代には、甲賀忍者多羅尾氏が治めていた。
甲賀二十六家の多羅尾氏に身を寄せて、伊賀忍者の服部氏を隠れ蓑に江戸の世を生きてきた。
平成になって、身を潜める必要がなくなって、京都の街に出てくるようになった。
龍門館と名付けられた忍術陰陽術道場。
山城かと見違えるほどの広大な土地であるが。
もちろん、城ではないので、天守閣等ない。
戸澤白雲斎の居所は、寺の本堂に似ている。
もちろん、忍者であるので本尊として、毘沙門天が祀られている。
毎朝、早朝から読経の声が山中に響く。
白雲斎、この日、慎之介と雅を龍門館に向かえようと思っていた。
まだ幼児の2人のこと、少々早過ぎるとも思うのだが。
あえて、英才教育の道を選ぶつもりになっている。
それほど、2人の才能は秀でている。
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