第2話 都大路
俊寛僧都の怨霊、なぜか山荘周りと若王子周りをさ迷っていた。
元々、自身の山荘を造るほどに周知の土地。
土地不案内などということはあり得ない。
しからば、なにゆえとなる。
若王子から山裾は、冷泉通りと呼ばれる。
この冷泉通りを少し下ると、京都市消防局左京消防署鹿ヶ谷出張所と京都市立第三錦林小学校が並んでいる。
俊寛の怨霊、なぜかこの辺りのみさ迷っていた。
それより下ると白川通り。
京都市営路線バスの錦林車庫。
錦林車庫の裏は、小高い丘。
この丘が怨霊にとっては厄介極まりない。
吉田山である。
山中にある吉田神社の大元宮。
日本の八百万と呼ばれる神々が集まって祀られている。
山中には、まだ金戒光寺と真正極楽寺の真言宗大本山が二寺。
金戒光明寺は、新撰組発祥の地として有名。
真正極楽寺は、真如堂絵巻で有名な真如堂である。
こんな神々と仏の結界だらけのような山を怨霊が越えられるはずもなく、俊寛はさ迷うしかないのかもしれない。
山道途中の若王子神社は、恵比寿社である。
商売の神に、怨霊を押さえるほどの力はない。
小学校と消防署の交差点を右に折れると比叡山の影響力が強くなる。
ある時、俊寛の怨霊は左に折れた。
すぐに丸太町通りとの三叉路だった。
三叉路から先には、紅葉狩りの名所として有名な永観堂と南禅寺の寺領となりさすがに怨霊では。
三叉路を右折すると白川通り。
天王町の交差点。
丸太町通りを真っ直ぐに西に向かうと、俊寛怨みの矛先である京都御所だが、平安時代の政敵はすでにいない。
天王町の交差点を右折すると白川通りで、少し行くと左手に焼きたてパンの老舗山田製パン。
浄土寺の交差点付近には、右手に大前開泉堂という老舗の洋菓子店。
その先の銀閣寺交差点近くには、京都背脂ラーメンの代表的名店ますたに。
そう。この辺り、意外に先進的な場所。
大前開泉堂からほんの少し銀閣寺交差点寄りにジュリーこと沢田研二氏の実家。
これ以上詳しくは書きません。悪しからずでございます。
先進的にもなるはずで、京都大学までは徒歩または、自転車での通学距離。
また、銀閣寺交差点は、白川通りと今出川通りの交差点で、同志社大学も近く、立命館大学も、遠いというほどではない。
芸大も近くにあるため、学生が多い。
銀閣寺交差点で、白川通りを真っ直ぐに北上すると、全国的に展開しているラーメンチェーン、天下一品の総本店。
どうしても、先進的にならざるを得ない地域である。
さて、俊寛僧都の怨霊。
まさか、天下一品までは来られるはずはありません。
天下一品総本店の真上に比叡山。
さすがに、近づくことすらできません。
なぜ、怨霊にとってこれほど危険な場所に戻ってきたのでしょう。
鹿児島県の鬼界ヶ島に、俊寛僧都の墓があります。
鬼界ヶ島での俊寛の様子を考えてみると答えは出るのではないでしょうか。
俊寛といっしょに流された2人は、平の徳子の出産祝いの恩赦で赦されて帰京している。
その後、俊寛は悲しみのうちに37歳という若さで亡くなっている。
この時点で怨霊になって京都を目指してもいいようなものだが。
そこは俊寛、僧都という高位の僧侶である。
鹿ヶ谷山荘周りの結界のことは知っている。
帰京するより、手っ取り早く平家相手に大暴れという行動に出たのかもしれない。
鬼界ヶ島から帰京する途中、この時代なら瀬戸内海を通るのだが、その瀬戸内海で、海賊を操ることができれば。
村上水軍である。
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