第123話 新キャラ・青い髪の男の子(タロキチ)

(我が主)


 そのころ創作の神の眷属であるタロキチはタロキチ(本体)からは離れていたのでドッグランにはおらず、〈白の地〉にいた。青い髪の男の子としてニヤたちの学校の教室のすみっこに。


(それは性急な動きを求められたものですねえ)


 図書室の本を静かに読んでいる青い髪の男の子は、〈紫の霧〉が濃くなっている校庭の様子を見ながら、主であるグレン・グランハルトの現状を受け取っていた。


(さて。私はどうしましょうワン)


 少し〈犬〉が残っているが、見逃してほしい。


(子供たちは、どんな世の中でもそれなりに育つんですワン。こちらは本日異状無しですワン)


 ニヤたちを見ていての、タロキチの感想であった。


(そう。〈神殿〉の動きが気になりますワン)


   * *


〈白の地〉の神殿では。


「何? この大きな力」


 現実世界の人間には人生ゲームにしか見えないベルリオーカの魔法具。

 今、森の奥で四人乗りのクルマに見えるコマがひっくり返った。


「何か降臨したの?」


 それにしてはそれっきりだ。危険ではなさそう。


「クギバネが大量死していた付近でもあるわね。

 ああ、この魔法具を授かった場所ね?」


 さすがにエルフさまはそこまですぐさま思いあたる。


「〈創造者〉様のところで何かが起こっても、それは私たちにどうこうできることじゃないわね」


 それよりも気になる動きは、やはりブランカとガランスなのだ。


「〈救い手〉様のいらっしゃるブランカ。ガランスは魔法生物たちが騒がしい。

 ガランスの三人。なんだかしんみりした雰囲気なのはなぜかしら」


 現実世界の人間には人生ゲームにしか見えないのだが、エルフさまにはサヤたちの様子がある程度見えているようだ。


「……がんばって」


 がんばれ、サヤ、トーガ、ダン。

 どこまで見えているのかどうかは、我々にはわからない。


   * *


(「人生ゲーム」にしか見えないワン)


 現実世界に通じているタロキチにも、そう見えるようだ。


(約束手形は困るワン)


 人生ゲームの経験を思い出したタロキチ、今は姿を消しているので、〈白の地〉の者たちには見えない。


(ん。〈白の巫女〉殿の気配がないワン)


「ベルリオーカさま!」


 誰かが走りこんできた。


「どうしました?」

「たいへんです!」


(どうしたワン?)


「分散して保管されていた〈赤の竜〉の、」


(古い文献のことかワン?)


 はるか昔、〈赤の竜〉の手を逃れるため、あえて複数の異世界に分散して保管されたという、以前の〈赤の竜〉支配時代の出来事、対処法が記されているという文献。


「ひょっとしてミウ先生の国の?」

「はい」


 走りこんできたのは、青い髪の男の子が通う小学校の図書室詰め、異世界との境界線を守る兵士の一人、トリンである。


「ミウ先生が、」

「どうかなさったの?」

「お国に要件があり数日休暇を取っての帰省をされて、本日お戻りの予定だったのですが、」


 息せき切って、苦しそうな様子でして。


「『鍵が』とおっしゃったきり、気絶されて、今、医務室でお休みなのです」

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