エピソード19 ヴィドーに来たる者の行く先は

タロキチの仕事

 ニヤとマルウスが朝、教室のそれぞれの席について、先生が教壇に立ったとき。


 また、休み時間の教室から図書室のミウ先生に用事があって、上級生の図書委員が廊下を急ぎ足で渡っているとき。


 その水色の髪の生徒はじっと様子を見ていた。


(〈創造者〉さまが学校の描写を再開するまでに、別の姿を見つけなければ……そして、かような仕業を見つからないようにしなければ……)


〈白の地〉で活動するタロキチの今の姿は、ニヤの学校にいる水色の髪の生徒である。


『四十路ですが、この世界では無双できると聞いたんですが?』の、最初のほうのエピソードに登場して以来、出番がないので拝借していた。


(さて。なんとかせねば……)


 神殿の近くにいれば何かと情報が集まるもので、遠出して〈救い手〉を追うか、このままとどまるか。ここのところタロキチはそのようなことを逡巡していた。


(はい。わたしはいつも、このように仕事をしていたのですよ)


「どうしたの?」


 犬の姿から人の姿に変わると、どうも最初ぎこちない。しっぽを振ろうとすると、なんと、ないのだ!


「いや。なんでもないよ。ありがとう」


 水色の髪の生徒は冷静な振る舞いでほかの生徒からかっこいいと思われているらしいので、そのあたりにも気を遣っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る