エピソード16 続・あらたな局面へ。は、いいのだが明日は試験だ!
木造二階建ての潜在力とは
ニヤちゃんは、不思議な家で薪のいらない調理台や、氷のいらない冷蔵庫を見て、案内人(なんで葦原なんだよ)の助手たる俺から〈泡がぱちぱちする飲み物〉のグラスを受け取った。
「しゅわしゅわしてるー」
「こちらの世界では子供の飲むお酒が?」
王子は大人の飲み物をよく見ているようだ。
てか、〈白の地〉にも発泡酒的なものがあるのか?
「大丈夫。子供の飲み物です」
栞さんが優しく答えると、王子もニヤちゃんも安心してひとくち、
「しゅわしゅわします!」
「しゅわしゅわするね!」
楽しいひとときである。
「あと、どこかなあ」
うちは狭いので、見て回るといっても大したことないよな。
と思っていたのだが、ニヤちゃんのこの台所での反応を見せられると、もっと面白がってもらえるのでは? とか、木造二階建て昭和の家のポテンシャルについて思いが巡るんだな。
「ニヤちゃん、王子、もうすぐおやすみの時間だったのよね? くたびれていませんか?」
しかしそんな時でも栞さんの気づかいはぬかりない。
「ふしぎだけど、なんだか平気」
「僕もです。
あ、僕のことはマルウスで結構です。異世界にあって王族など」
時間の流れがおかしいせいなんだろうか。
てか、王子ってこんな歳から(略)
「じゃあ、大人の人たちの話が終わったあたりで、おにぎり食おうぜ」
「おにぎり?
栞さんのお父さんが作った? 食べてみたい!」
ニヤちゃんが猫耳をばたぱたさせて嬉しがるのを見ながら、このままさっきこちらの世界の名前をうまく言えなかったことがうやむやになってくれと願った。
そもそも叔父さんの作品世界でも〈白の地〉以外は〈猫耳の世界〉とか適当じゃなかったか。
でも、子供の疑問にはそんなの通用しないんだよな。
「宝の部屋行こうぜ!」
葦原が納戸のことを無理矢理〈宝の部屋〉ということにするようだ。
何か彼らに面白いもの、あったかなあ。
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