エピソード15 あらたな局面へ。は、いいのだが明日は試験だ!

おやすみ。

 さて〈白の地〉。

 ベルリオーカから〈夕陽の切れ端〉を分けてもらい、マルウスとニヤは屋敷へ向かった。〈夕陽の切れ端〉はふわりと飛んで、ふたりの行く先を照らしてくれた。


「こっち」


 小さなあかりひとつを頼りに、マルウスとニヤは手をつなぎ奥へ向かう。


「今度、明るい時にゆっくり案内するよ」


 今、屋敷のどこを歩いているのかニヤにはわからなかったが、衣装部屋のようなところへ入った。衣服がたくさん吊るされている。

 その突き当たり。壁一面の大箪笥。


「マルウスです」


 ノックをし、小声で呼びかける。

 箪笥の扉がひらいた。


「マルウス! 今日はどうだった? 学校へ行ったんでしょ?」


 ランプを持った、お兄さんとお姉さんが出てきてマルウスを抱きしめた。薄暗くても三人ともよく似た顔をしているのはわかった。


「お兄様、お姉様も、おかわりありませんでしたか?」

「まあ、早速お友達?」


 小さい猫耳のニヤを見る。

 暗いので、猫耳が髪飾りに見えていたのかもしれない。驚かれなかった。それとも王族は失礼な驚きを見せない態度が身についているのか。


「ニヤです」

「兄のイオ、姉のテセラです。

 ありがとう、初日からお友達ができるなんて」


 短い時間だったが、マルウスたち兄弟には大切な習慣なのだとニヤにはわかった。


 * *


「ありがとう。いっしょに来てくれて」

「こちらこそ、お兄様とお姉様にご紹介くださってありがとう」


 ふたりはトトに乗り込んで、ベルリオーカが戻るのを待っている。


「不思議な家、どうなったんだろう」


 それは、ニヤも気になる。


「あれ」


 トトも気になるのだろうか。


「トト?」

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