第74話 大人には大人の話がある
「ベルリオーカさま、お知り合いなの?」
ニヤが驚いた。
「そうなの!
やっぱりここは不思議な家ね? 懐かしい方が偶然いらっしゃるなんて!」
なんかよくわからないけど、ベルリオーカさんも、相当誤魔化すのヘタそうだな。
「そうでしたか。なんだかご事情が……
ニヤ、僕たちはこの家の探検はよして、控えていた方がいいみたいだね」
探検!
さすが子供の発想!
と、思ったら。
「ベルリオーカさま。
僕たちにはもう遅い時刻なので、衛兵のどなたかといっしょに神殿へ先に戻った方がよいと思うのですが」
俺、重ねて言うけど状況まだよくわかってないんだが、王子って、こんな年齢の時から空気読んで行動するの? さっきまで探検、とか言ってたのに。
「え、君たちせっかく異世界のおうちに来たのに帰っちゃうの?」
そこでどうして葦原が元気よく出て来た?
「ここの時間の流れはそちらと違うから、遅くなってもおこられないよ? 遅くもならないかもしれない。こっちはまだお昼なんだよ?」
まだ誰もこの時間の現象について断言できないというのに絶妙なこと言い出した。
「そう。これが、みんなで食べようと思って、私のお父さんが作ってくれたお昼ごはんなのよ」
栞さん、見ればその葦原に持たせているのはご実家のおにぎり屋さんの店名が入った袋じゃないかそれ。お気遣いすみません。
「お昼なの? 私たち、夕ごはん済んだばかりだわ!
それに、栞さんもお父さんが料理人なの? おんなじだ!」
ニヤちゃんの素直な反応を見て栞さんが微笑んでいる。
「おんなじなの? 嬉しいな」
そこに葦原がふたたび割り込む。
「そう。それに、このおじさんたち、ベルリオーカ様とお話しあるみたいだから、俺たちは探検しないか?」
ちびっこふたりは、どう反応したか。
「いいの?」
「いいんですか?」
* *
叔父さん、グレンさん、巫女さん、エルフ様は居間へ引っ込んで、俺たちは〈探検〉に向かった。
「こちらは、普通のお住まいなんですか?」
王子の質問が丁寧かつ礼儀正しい。
「そう。ごく普通の家のひとつ」
「普通のおうちでも、〈白の地〉につながることはよくあることで、ニヤもそうでした」
猫耳の世界でのニヤちゃんの過去のことは叔父さん、本編では描いてない。神殿で父親とふたり、働きながら暮らしているんだから、それなりになんかあったんだろうな。
しかし叔父さん、あのネタ帳に残されたことまで〈白の地〉では具現化してるらしいのに、〈赤の竜〉の設定がゆるゆるってどういうことだよ。
それで助かった面もあるけど、そこにつけこまれたと思われるとこもあるよな。
創作するって、そういうこともあるのかなあ。人間が作ってるんだもんなあ。
「ここが台所だよ」
「えっ?」
また、ニヤちゃんの反応が早かった。
「石炭も薪もない! どうなってるんですか?」
「はっはっはっ」
葦原がガス台の点火を実演する。
「すごーい! 神殿は、石炭ストーブなんですよ? それが、カチッ、て!
ここ、なんていう世界なんですか? すごーい!」
さりげなく困った質問出てきたな!
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