第72話 『四十路だけど、この世界では無双できると聞いたんですが?』第72話
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「たしかにここ、俺んちだな?」
本日が日曜日であると告げてくるテレビに続いて、また元の世界の証拠見つけた。
思わず口に出てしまったぜ。ジャッキー・チェンの『酔拳』、しかもゴールデン洋画劇場のやつを録画したビデオテープがあるのが、ここが元の世界の俺んちである動かぬ証拠だ(どんな証拠だよ)。
「は? やはりご自宅?
〈救い手〉様の?」
異世界のブツが唐突に出現することは〈白の地〉の人間なら慣れっこで、今更驚くのも面倒なのだろうが、
「〈救い手〉様の?」
俺の元居た世界の家、となると、博士にしてみても突然プレミア感が増すらしい。
ただの昭和の木造二階建てなんだけどな……
「博士、」
気を取り直さなければ。
「俺の世界にも、燃料になる液体がある。〈燃える水〉みたいなもの。
とはいえ家にあるくらいだから特殊なものじゃない。暖を取ったり、日常的に用いるありふれたものなんだけれど、」
「燃える水が?」
「代用になるものか、見てもらっても……」
最後まで聞かずに突進していったよ、おい!
俺は博士を追った。
てか、もう遅い時間だし、このまま家に泊まって明日にしたらよくねえ?
ていう考えが浮かんできた。急に自宅に戻って人心地ついちまったかな。
いや、こんな心配もあるか。そもそもこの家、前触れなく出てきたし。また前触れなく元の世界に戻るかも。
(……だったら、このまま家に居続けたら、俺は元の世界に戻れる?)
「〈救い手〉殿!」
そこで博士に呼ばれてはっとした。
「こちらの、この容器かね? 三つあるな。
匂いはたしかに〈燃える水〉に似ているようだ」
「そのまま全部、研究室に持っていっていいですよ」
博士の研究室は、分析も得意そうだった。ある日突然、異世界の事物が現れる環境になれば、分析力が生死を分かつ場面も多いんだろうな。
そうして二人で灯油のポリタンクを運び出した。
すると、それを待っていたように俺の家は消えた。
「やや?」
なんだこれ。
俺たちに〈燃える水〉の件を解決するためだけに、木造二階建てが現れた? まさか。
「〈救い手〉の役割からは、逃げるな、ってことかな……」
里心ついてる場合じゃなかった。いかんいかん。
「〈燃える水〉がこれで解決すれば、消えた人探しにも人員を増やせるね?」
博士に言うと、
「もちろん。
さあ、私は今夜は分析で寝られませんな!」
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「……って、わたし、どこまで話したかしら?」
やはりそういうことだった。
迷ったが、思い切って第72話をサイトに上げた。
あれだけ気を揉んだのに、こんな形であっさり更新することになるとはなあ。
ありがたいことに作品のフォロワー諸氏のPVがすぐにいくつかついて、
「あら? 他のみなさんは?」
〈白の巫女〉の再起動に成功した。
「こら! トト!」
玄関口が、騒がしい。
トト?
「え? トト?
あのカメのことかしら?」
また作者である俺でさえ知らないキャラクターがいるな?
いや?
………………知ってはいる。
……しかし、それは。
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