エピソード9 土曜日を過ごそう。(1)
〈赤の竜〉は何を思うか
〈白の地〉に現れて紫の霧を発し、世界の境界線をあやうくする〈赤の竜〉。
〈彼〉は、何も思うことはない。ただ、遂行し、障害は排する。
〈彼〉のいる世界は、〈混沌〉と〈安定〉を繰り返す。
〈混沌〉がなく〈安定〉が続けば、いつか硬直しくだけ散る。
〈混沌〉ばかりが続いて〈安定〉がなければ、あちこち侵食し合うばかりで、いつか互いに燃え尽きる。
二つの均衡で長い時の中、世界は維持されているのだった。
〈住まうものたち〉のことを、〈赤の竜〉は、いつも不思議だと思っていた。
それぞれの世界に生息し、混沌期に小競り合いを起こしてせっかくの世界を自ら滅ぼしたり、〈混沌〉を止めようと立ち向かってくることもある。
なぜだろう。
世界はもともと、そのようなものなのに。
この間、〈混沌〉の作用が強くなり、似た種族の世界が一足飛びにひとつになった。
ひとつになったときに、世界が重なりあったものだから、同じ座標にあった建物が重なり奇妙なものとなる、複数人の種族の身体と心がひとつになるなど混乱したが、いずれも分離魔法が使えたため事なきを得たと〈クギバネ〉から知った。
かように、解決策のない世界に向けて〈混沌〉も作用を強めたりはしないのだ。
なんの問題があるのだろうか。
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