第12話 「未成年」

 スマホの表示を見ると、神薙さんだった。


「うわあ! 神薙さんだ!」

「驚きすぎだろ!」


 まあ、出るけど。


「はい、お待たせしました、鈴木です」


 葦原と栞さんが、息をひそめている。


「はい……」


 ――急にお休みのところ、ごめんなさい。


「いえ。叔父の件では、ご心配とご迷惑をおかけしてます」


 ――そんな。急にこんなことになって、ご家族のほうが大変よ。

 ――それでね、メールしたの、見てもらえたかしら?


「はい」


〈お見せしたいものがあります〉、て、なんだろう。


 ――でね。よかったら今からお邪魔していい? 一時間ほど空いたから。


「あ。……はあ」


 変な声が出る。


「……あ、あの、今じつは友達が来ていて」


 葦原と栞さんが、それはいいから、邪魔なら帰るから、と、小声で口々に言う。


「あでも、大丈夫です」


 ――ごめんなさいね。


「これから来るって」


 通話を切って、俺は顔がこわばっている。


「どうする。俺ら、帰った方がいいのか、別室に隠れてた方がいいか」

「なんだその、別室に隠れる、って選択肢は」


 俺は神薙さんから、そんなに長い話ではないから、お友達にはそのまま少し待ってほしいと伝えるよう言われた、と、二人に告げる。


「おや。俺たちも聞いていい話なのか?」

「いや。長い話にはならないというから、別室に外していてくれという意味だろうよ」

「そうか」

「君らはこの部屋にいてくれ。俺は階下の居間で話すから」


 まさか、叔父の上司をこの部屋に上げるわけにはいかない。


「叔父さん、またこの家、〈呼ぶ〉かしら? 今日がまだ日曜日なのは変わらないし」


 先日のような形で本日二度目の異世界、という形で出現することはあるのだろうか。ないとはいえない。


「そういう事情、理解があるかんじの人か?」


 葦原がいきなり切り込んできた。


「……まだ話しづらいよなあ……」


 とはいえ、いつまで俺たちだけで抱えていいものか。

 なんせ未成年だしな。

 自分で固定資産税払ってないもんな。


「もう少し、日曜日の現象の法則性とかわからないと、話のしようがないからなあ」


 それはほとんど信憑性の話で。

 話を誰かにして、この先の相談につなげるとしても、まず家が異世界に飛ぶ件を信じてもらう必要があって。

 それには、一緒に〈白の地〉を目撃してもらうのが手っ取り早いのだが、そのために日曜日を無駄にする社会人はいないだろう、というのが俺たちの見通しだった。


「お話ししている間に叔父さん来てくれたら、一番いいよね」

「でも神薙さん、仕事の合間に来てくれるんだぜ。〈白の地〉がつながってる間、時間の流れがどうなるか」

「そこまで心配すんなよ浩平。まだ未知の話によ」


 それもそうなのだ。

 とりあえず、居間のほうを片付けるために階下へ降りた。

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