第5話 彼の過去と悩みの正体②
正直な所、政志がどれくらい傷ついていいるのか、私には推し量る事が出来なかった。女性の私では政志の馬鹿にされた原因、虐められた原因について知っている事が
あまりも少なすぎる。
男友達と言えば、政志しかいないし、かといって政志にいきなり話す内容では
当然ない。
自身を傷つけた話題なんて、十年ぶりに再会した人からいきなり聞きたいはずはない。
今すぐ、政志の所へ向かって、慰めたい気持ちもあったが(当然家は知らないのだけれど)あった所で、何を話せばよいのか、言葉が浮かんでこない事だけは間違えなかった。
そんな事を考えながら、歩いていたせいか政志と再会しコンビニを通らず少し、遠回りをしながらた私は最寄り駅から、自宅へとモヤモヤした感情を抱いたまま歩いていた。
虐めの話、馬鹿にされた話、今すぐ政志に会いたい気持ちと会いたくない気持ちなど
いろいりな、感情が混じりあっていて、私の頭の中は混乱していた。
そんな事を思いながら歩いていると、おもむろに私のスマホが着信を知らせてきた。
”まさか山中じゃないよね”心の中でそんないらない心配をしながら画面をのぞくと
「美香先輩」
と表示されていた。
おもむろに電話にでると、普段と変わらず明るく、軽い口調で、
「法子、今週空いてる日あるぅ」
といきなり切り出してきた。美香先輩とは大学のサークルの先輩で口調は軽く
なんでも話しやすいタイプだったので、信頼している、先輩の一人。
相談事は美香先輩にすることが多かった。
口調は軽いけ、口は堅い所も信頼できる理由の一つなのは、間違えない。
「明後日なら大丈夫ですよ」
私も軽い口調で返答した。
「オッケー分かった、当日また連絡するね~」
そんな、軽い感じでいつもの女子会の約束をした。
女子会と言っても基本は、美香先輩と私の二人なのだが。
軽い雑談も電話越しにしながら、歩いていると自宅の前まで来ていた。
ちょうど、雑談も終わり電話を切ってから私は、先程のモヤモヤも少し晴れた気分で
自宅の扉を開けた。
普段なら、ちゃんと行うスキンケアもそこそこに、私はダル着に着替えていた。
今日はとても長い一日だった気がしていた。
それもそうだろう、政志と山中が同じ高校だったとは予想していなかったし、話もまさかの内容だった。
出来れば、政志の高校時代での活躍とか、いい話が聞きたかったのだけれども、現実はそうはならなかった。
政志の高校時代の話は、かなり悲惨なものであったと感じた、
感じたとは、正味な所、女性の私では表面上しかわかっていないと思うからで
決して、政志を軽く扱っているわけでは無い。
でも...
なかなか、抜け出せない思考のループに陥りながら、私は今日の出来事を
ベットに寝ころびながら自然と反芻していた。
もう山中の顔は見たくない。反芻すればするほど、そう思わせてくれるほどに
彼のニヤケヅラは深いなものだった。
まぁ、とは言っても会社では顔を合わせるわけでこれは致しかた無いが
きっと、会っても今までよりは冷たい態度になっているだろう。
問題は政志と再び再会する時だ。
まだ、会うと決まっているわけでは無いけど、あのコンビニは日常使うし
”政志もきっとそうだろう”と思いながら。どういった顔で話すべきか。
幼馴染とは言え十年ぶりに再会した人から、過去の虐めや、辱め、馬鹿にされた話を知ったなど、知りたくもないだろうし、話を聞きたくもないだろう。
どうするのが、政志にとって一番良いのか、出来れば力に成りたいのだけれど。
きっと、今日の山中の話が政志の変化のきっかけや答えになっていると思うから。
そんなことは考えながら、私は自分への労いも込めて
”おやすみなさい”
と、心の中で呟いてから瞳を閉じた。
少しの時間、今日の出来ごとをもう一度思い出していたきもするが
相当に疲れていたのか、私は気づかぬうちに、眠りに落ちていた。
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