第4話 彼の過去と悩みの正体①
19:00を少し過ぎた当たりで、私はようやく指定されたお店にやってきた。
ここまでの道のりはそう遠くはないのだけれど、途中まで断わろうか、とも考えて
歩いていたら約束の時間を過ぎてしまっていたので、慌ててお店へは入っていった。
「いらっしゃいませ」
お店の店員の声と共に山名君の声も聞こえてきた。
「忙しいと事ごめんね。」
山中君は、私の遅刻を咎める事なく、いつも口調で私を心配している
言い方をした。
「遅れてごめん」
居た堪れない気持ちを抑えながら、簡単に私は謝罪をした。
「全然、大丈夫だよ、こっちも急に誘っちゃったし」
そんな他愛もない挨拶めいた会話から、私の長い相談会は
はじまった。
比較的明るい照明とラテン系の音楽が、かかっている店内は私の不安な気持ちを
少しだけ、和らげてくれていた。
ここへ来る、道中は久しぶりに再会した政志の根拠のない心配に対して、同僚に相談
しても良いものかと、あまりに心配し過ぎではなかいと、そんな事ばかり考えていた
そもそも、偶然再会した旧友のふとした表情が気になった、程度で大げさい相談する人はあまりいないのではないだろうか、十年以上会っていなかったのだから、心配や不安に思う気持ちまで、偽善に似た、偽りの感情ではないかと、そんな事を頭の片隅で考えながら、私は手渡されたメニュー表へ視線を送っていた。
なかなか、メニューを決められない私へなにか言うわけれは無く、山中君は静かに待ってくれていた。きっとこういう所もモテる要素なのだろうと思いながら、私はテーブルに置いてあるベルを押し、注文の準備を始めた。
軽い軽食とビールを頼み、飲み会恒例の乾杯をしてから、軽い雑談を私たちは始めた
最近の仕事はどう、上司の愚痴や取引先との話題などお互いの近況を報告しあう感じが小一時間程度続いていた。
そもそも、同期や同僚といっても、それぞれ上司は違うし仕事内容も取引先によってはかなり差がある。
少し合わないだけで同じ社内で働いている同僚とは思えないような話さえ、飛び出してくるそんな業種で私たちは働いている為か、雑談の話題にはことをかかない。
これは、誰と食事にいってもだいたいそうだ。
「そういえば、朝は珍しく眠そうだったね」
しらじらしいのか、うまく相談の話に持ってい行こうとしているのか、微妙なラインではあるが、今日をセッティングしてくれた彼から、話の切れ間に話題を振ってくれていた。
「そうだね。昨日ちょっと再会した人の事で。」
私はどのように彼に話べきだろうか。お互いを知っている中学時代の友人へ相談しているなら、簡単に話せるのだけれども全く知らないであろう山中君へ話をするのはどのこから話すべきか、少し迷っていた。
「元彼の話とか?」
そう考えるのが普通だろう、女友達と再会しても男性には相談しないだろうしましてや元彼とかではない男性の話をしようとしているなんて、夢にも思っていないはずだよね。
「いやぁ、男性は男性なんだけど、ただの友達というか、幼馴染というか。」
私の精一杯の返答だった。まぁ、幼馴染の話ならそれなりにするか。と謎に自分を
納得させながら、昨晩の出来事を山中君へ話をした。
そんな私の話があまり面白くはなかったのか彼は時々スマホをいじりながら
私のを向き時折軽い相槌を打ちながら聞いてくれていた。
相談というよりは出来事を話だけで、私も話しながら結局、なにに悩んでいるのか、心配しているのか、正直明確ではなかった。
言葉に表すなら”女の勘”だろう。
「そっか、葉山さんはなんかそういう勘が働く所あるよね」
私の心が読まれているかのように彼は話始めた。
まぁ、私の話のから推測するとただの勘で心配しているとしか、読み取る事は
出来ないだろ。私自身が、”女の勘”といっているのだからそれ以上の答えはないのみ事実だとは思う。
「久しぶりに、会った幼馴染にそこまで心配出来るなんて、優しいよね。
そう彼は、言いながらどことなく違和感を覚えていた。これも”女の勘”だろうか。
先程までは、雑談も、相談事も、嫌な空気感にはならず話をしていたけどなんか
微妙な空気が流れているのを感じ取っていた。
私、なんか変の事いった?
心の中でそう呟いているとき、ふいに彼は切り出して来た。
「そういえば、葉山さんの中学校て○○中学だよね」
なぜ、彼が知っているのか?すぐにはわからなっかが、そういえば
入社当初の研修の際に”私の履歴書”みたいな感じで生い立ちをプレゼン形式で
話した事があったのを思いだした。
なかなか、他人のそれも、今後どの程度関わるのかわからない入社同期の出身中学までインプットしている人も少ないだろう。おそらく地元の人間だけだと思う。
「そうだけど。」私は少し困惑気味に」答えた。「なにかあった?」
「今の話のさあ、工藤政志だけど、俺高校同じだったんだよね。」
そうなのか、政志とは中学までは一緒だったが高校からの進路が違っていたし私も政志も中学校ではスマホは持たされていなかったから、連絡先も分からずで、たまに町であっても軽く目を合わす程度だった。
思春期特有のあるあるかもしれないけど、そういうものだろう。
誰だって、異性の幼馴染と町で会えば勝手に気まずくなるものだ。
「あいつさぁ...」
山中君は、私が温かい思い出に浸っているのも知らずに高校時代の政志の事を
話始めた。正直、高校や大学で政志がどんな風に過ごしてきたのかは知りたっかたし
今度、また、会ったときに話題に困らなくて済むかもと、安易に考えていたのは一瞬で崩れ去った。
からは”ニヤ”っと嫌な笑を浮かべながら私のこういった。
「高校の修学旅行で包茎なのバレてさぁ」
「それから、かなりからかわれたり、いじめに近い状態にあったんだよね」
正直、政志がいじめられるのは想像が出来なかった。
どちらかと言えば、いじめを止めるタイプで正義感が強かった。
もちろん、いじめを行っていたとかでなくてよかった気もするが、なにより気がかりなのは、山中君の笑みだ。
さっきの嫌な感じの正体は間違えなくこれだった。
スマホを見ながら彼、山中翔太は”ニタニタ”と人を馬鹿にした笑みを貼り付けながら
まるで、自慢でもするかのよう、政志がどのように虐められていたか、馬鹿にされてきたかを話始めた。
正直私には、包茎だから虐める、馬鹿にする、の意味が分からないでいた。
女性である私には、理解が追い付かないのみ無理はないけど、身体的な事がそんなに悪い事なだろうか。
当然いじめは悪いが、包茎は悪くはないだろう。
まぁそれを同期と言え伝えてくる目の前の山中君は間違えなく、性根が悪いがだろうけど。
「そんな事で、政志を虐めてたんですか」
私は気づかぬうちに敬語になっていた。
正直かなり怒ってもいた。
いち早く、この場から立ち去りたかった、このニタニタ男の前から。
そんな、感情を押し殺して私は。
「それで。」
かなり冷たく、そして語気を強めて、話の続きを山中へ促したのだ。
彼は、相変わらずニタニタ顔のまま政志の高校時代がいかに悲惨であったかを
話続けていた。
私は話の途中で、何度このニタニタ男に平手打ちの一発でもかまして
しまおうかと考えた事か。
それほどまでに、山中の話に嫌悪感を私は抱いていた。
男性の身体も問題にかかわらずいじめをなど、間違えなく悪い事を山中は
さも、自身があるように語り続けていた。
私は話が一段落したであろうタイミングで、目の前のテーブルに足りるであろう
今日のお会計分のお金を置いた、というよりは叩きつけるに近かった。
山中は少し驚いた表情を見せてはいたが、そんな事は気にせずに私は
席を立とうと準備を始めていた。
「もう帰るの?」
よく言えたものだと逆に感心すら覚える。
あれだけの話をしておいて、私は目の前のニタニタ男より、政志の方が何十倍も大切だ。
そんな私が、山中と一緒に成って政志の高校時代の嫌な思い出話で笑いながら、共に馬鹿にするとでも考えているのだろうか。
そんなことは決してない。
「はい」と、意思表示だををしては私はニタニタ男こと、山中を残して足早に店をでた。
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