第6話 わからない男心①
私は、先日の約束通りに美香先輩との久しぶりの女子会にわずかながら
心躍らせていた。
ほんとうに、気兼ねなく話せる先輩は彼女を置いてほかにいないのもあるが
先日の政志の過去について、あれから心の引っ掛かりとモヤモヤは晴れずにいたからなおさら。
心の中で、山中からの話を法子は思い出していた。
山中の言っていた事はほんとうだろうか、嘘ではないにしろ
おおげさに誇張せれていた可能性はあるのかもしれない。
政志と一回話たほうがいいかな?でも、私から話したりしたら
政志は...
そんな事が永遠に頭の中をぐるぐると駆け巡っている最中、美香先輩からの着信があった。
少し早いが到着したのだろうか、今の悩みもそれとなく相談したいな、と感じていた法子は即座にスマホを通話にして、「もう着いちゃいましたか?」
そう聞いた法子に対して、美香は「法子ごめん」と開口一番伝えてきたのだった。
どうやら、先輩は今日、取引先との接待が入っていた事を忘れていたようで慌てて電話して来たようだ。
美香先輩らしいなと、思いながら、「大丈夫です!、私も相談事あるので今度は私から誘いますね」と伝え電話を切った。
さて、帰りますか。と特に深く考える事は無く、法子は自宅へと向かって行った。
暗い部屋で、かなりの時間を過ごしていいた工藤政志は少しだけ、落ち込み度合が回復していた。
法子と再会してからここ数日、仕事には行っているが、自宅へ帰ると再会した日泣いてしまった事、過去を思い出した事を考えてしまい憂鬱の気分で夜の一人の時間を過ごしていた。
ただ、こういった過去の記憶がフラッシュバックする事態は一人の時間をしっかり確保して数日立てば少しづつではあるものの、立ち直っていく事を政志は理解していた為、さほど気にはしていなかった。
コンビニにでも、行こう。そう思い立って政志はいつも寄るコンビニへ向かった。
いつもか会社帰りによって夕食を調達して帰る事がほとんどだけどこの日はたまたま
寄るのを忘れてしまい家に帰ってから少したって、何も買ってきていない事に気が付いた。
普段より、仕事を早く切り上げる事が出来た事も理由のひとつではあるが、なんとなく家に買い置きがあったように思いこんでいたので、コンビニに寄る必要もないなと思いこんでいたことが最大の理由だろう。
夕食を作るタイミングに成って、ここ最近スーパーなどには行っていないので、買い置きなどは無くその日の食料はその日に買う、かなりお金のかかる生活をしていることに気が付いた、少し節約の為にも料理しないとな、そう心の中で思い明日から自炊するかと、なかなか始められない人種と同じような事を考えてはいるが、少し前向きになってきたことを、どことなく嬉しく思いながら、いつも寄るコンビニに入っていった。
「「あっ」」
政志がコンビニ入ると同時に、ふたりの声がシンクロして発生られていた。
まさか、ここで法子とまた会うとは思っていなかった。
いや、今思っていいなかっただけで会う確率はあるのは予想できたのだけれど。
なんで、人は会いたいときに会えなくて思いも寄らないときに再会したり、出会ったり、するのでろうか。
この間の再会もまさにそうだ、法子との再会など夢にも思っていいなかった。
何度、あの時は会いたいと思った事か、なんとなく切ない感じで政志は法子を見つめて固まっていた。
「また、会っちゃたね。」
そう法子は短く、言葉にしてくれていた。
「そうだね」
ぎこちなく、政志もその言葉に返答する。
少しの沈黙の後、今度は政志から口を開いていた。彼なりに
この間、逃げ出すように帰ってしまったのはさすがに悪かったと思いなおしていた。
法子と再会した後に、いろんなことが頭の中を駆け巡ったが、それは決して悪い事だけではなくて、法子とのいい思い出もあったから。
「夕食の買い出し。味気なくない?」
「うるさいなぁ、しょうがないじゃん。」
そんな中学校依頼の会話をし思わずお互いの顔を見ながら二人は微笑み合っていた。
「俺も、一人飯だし、何か食べ行く?」
政志自身もびっくりするくらいスムーズに法子を食事に誘う言葉が出ていた。
女性を食事に誘うなんていつぶりだろうか。
いや、社会人に成ってから?はないか。そんな自虐をしながら、内心では法子の返答にワクワク、ビクビクしていた。
「うん、いいよ。私もひとり飯だし」
法子は笑いながら答えへくれた、コンビニに入っただけではなんか悪いと感じたので
二人分の飲み物だけ買い、近所にある居酒屋へふたりは向かっていった。
席に着くなり法子は「ほっんと久しぶりだよね。実際何年ぶりだろ。」
先日の微妙な再会などお構い無しに法子は話始めた、彼女は先日の事は全く気にしていないのだろうか。いやきっとそんな事はないか、彼女なりの気遣いだろう。
法子は昔から人の感情を読み取るのが上手くて俺もよく言い当てられたものだった。
ここで、自分から先日の事をいきなり話すのは野暮だろう、そう思い俺も会話に
参加していった。
「今、26だから11年ぶりくらいか」
「ずいぶんご無沙汰してたけどすぐにわかるもんだね」
確かに!
そう心の中で思いながら、我ながら法子との話は一言二言でも楽しいものだと改めて気づいていた。
中学校の頃から、法子と話ているとあっという間に時間が過ぎ去っていっていた。
とくに、難しい話題やテーマがあるわけでは無く、取り止めない雑談をただ永遠に繰り返していただけなのに、今振り返ってもかなり楽しかったのを思い出していた。
法子と話ていると過去の嫌な歴史は全て忘れる事が出来るんじゃないかと思えるぐらいに時を忘れている。現に今も。
「ねぇ、聞いてる?」
唐突に法子が聞いていた。話を聞いていないわけでは無いのだけれど
法子といるこの空間に少し酔っぱらっていたようだ。
「聞いているよ、文化祭の話でしょ」
そうそう。法子は返答しながら思いがけない一言を発してきた。
「高校時代の文化祭とかどうだった?」
えっ、高校時代か。てっきり中学時代の話だと思っていた。
「そう、高校時代の文化際とかどうだったのかなって。」
政志hは少し当惑しながら、答えに詰まっていた。当然高校時代の文化祭に良い思い出などない。出来ればすべて忘れてしまいたいくらいだ。
「高校時代か、どうだったかな」
なんとか、やり過ごそうと精一杯のごまかし返答を政志はおこなっていた。
「中学時代はあれだけ、覚えているのに。」
政志は中学時代の文化祭の話は喜々としてはなしていたようだ。先ほど法子との空間に酔っていたときにきっと話たのだろう。
その流れか。まぁ、普通はそうゆう流れになるよな。
「やっぱり、何かあったの?」
またしても、法子から発せられた言葉に困惑した。
何かあったの?はわかる。こんなはぐらかし方をしたなら法子でなくとも気づくだろう。
気がかりなのは<やっぱり>の方だ。
政志は思わず聞き返してしまっていた。
「やっぱりって?」
政志は、もう少しまともな返しは出来ないのかと思いながら、しかしこれ以上が難しいなと思いながらそう法子へ訪ねていた。
やっぱりとはどういう事なのだろうか。あっている中で何か気づいたのか、法子ならあり得なくはないけど、法子の表情から察するにきっと確証があって聞いているのだろう。
正直、話したくない。これがすべての答えで相手がだれであっても高校時代は特に話したくない。
少しづつ前向きになっていた、法子に会いさらに上向いていた感情がここに来て下降線を辿り始める。
「ごめん、実は政志の高校出身の人がたまたま会社にいて」
そうか。どうして俺の事を話したのかは、疑問が残りはするけど。そういう事もあるだろう。
実際、幼馴染に久しぶりにあっての話から、高校どこ?はない会話ではないだろう。
ただ、悪気はないにせよ俺にとっては気分の良いものではない。
法子の感じと俺を知っている高校の人間が俺のいい話をしているわけでは無い事は容易に想像がつく。
「そっか、高校時代の事は正直話したくないかな」
俺は、今できる精一杯の回答をした。これ以上のことは何も言えなかった。
今までの、楽しい空気がすべて、幻であったかのように俺たちの周りだけ妙に静かで重たい空気が流れているのを感じとていた。
「包茎なって虐められてたから?」
法子も言葉を発してから「はっ」、とした表情をしたがときはすでに遅く
俺は過去の虐めを再び強烈にフラッシュバック的に思い出していた。
まさか、法子からそんな言葉を聞くとは思っていいなかったし、高校時代の人間も
普通はなしするかそこまで。と内心怒りもこみ上げて来ていた。
「どうして、その話知ってんの?」
法子に怒りをぶつけるのはお門違いだ、よく分っている。だけれども、出てきた言葉はかなり冷たく、怒気がこもっていた。
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