第五話 対決する綾乃 

 1


 馬車道を歩く通行人たちが、大きな声を出した人物に視線を向けている。

麗香に続いて、綾乃が速足で奥村に近寄った。

「奥村憲一さんですね? 私は、加賀町署の成宮です。少しお話を聞かせてもらいたいのですが…」

「えっ、麗香ちゃん、どういう事?・・・」

奥村は、麗香と綾乃の顔を見比べている。

「ここでは、何ですから、車の中で話しましょう」綾乃は、奥村に促した。

「私が誰だか分かっているのですか?」奥村の声が、怯えているように聞こえた。

「もちろん知っているわ。『マトリ』さんでしょ!」

「どうしてそれを?・・・」奥村は、麗香の顔を不思議そうに見ながら言った。

「あなたは、同じ課の川端直樹さんとクラブ『エンジェル』に行ったことがあるわね?」

「・・ええ、確かに行ましたけど、それが何か?・・・」

「目的は、オーナーである滝本さんが関与しているらしい覚醒剤の流れを調べることだった…違うかしら?」

「何を根拠に?・・・」

「惚けても無駄よ。あなたの処遇は日下部部長から私に任されているの。    要するに、奥村さんは、組織に見捨てられたという事。分かったかしら?」

「そんな、信じられない・・・」

「信じられないのは、どなたかしら?あなたは、潜入捜査にあたっていた川端さんの存在を『エンジェル』側にリークしたのよ。明らかに、『国家公務員法の守秘義務違反』ね。この容疑だけでも、十分逮捕出来るわ。付け加えれば、『未必の故意による殺人』もね」


「・・・、成宮さん。わたしは・・、どうすれば・・・?」

「川端さんを殺害した真犯人を捕まえるためにも、起きたことを正直に全部私に話して! 野放しにする訳にはいかないのよ」

「・・・分かった。オーナーの滝本は、反社からの情報で、もともと『マトリ』が客として潜入捜査をしていることは知っていたのです。でも、それが誰なのかは分からなかったみたいで・・・。

でも、二か月ほど経った頃です。運の悪いことに、私が以前情報屋として使っていた売人が、偶然にも店に現れたのです。結局オーナーが、私が『マトリ』であることを知るようになるのに時間は掛からなかった。そこからが、悲劇の始まりでした。

私は、VIPルームに一人呼ばれると、黒田組の幹部から脅迫を受けたのです。


『マトリさん、あんた一人じゃないはずだ。潜入しているマトリを全部ばらすんだよ。でないと、お前の好きなホステスの麗香も、可愛い女房もひとまとめにして、『シャブ付け』にしてやるからな』と・・・。」

麗香は、奥村の告白を聞くと、奥村の顔に唾を吐いた。

「さも、私を守ったような口を利かないで…、寒気がするわ」

「麗香さん、僕は君を守ろうとして・・・」

奥村の言い訳を止める様に、綾乃の右手が、奥村の左頬を捕らえていた。


「奥村さん、いい加減にして! そもそも、あなたの面が割れたせいで、川端さんが命を落とすことになったのよ。マトリにとっても、優秀な捜査官を失った痛手があなたに分かるのかしら?」

綾乃は、こんな男のせいで命を落とした川端が憐れであったのだ。

「実行犯は、黒田の幹部ね!」

「ええ・・・、間違いなく・・・、黒田組の連中だと思います」

「麗香さんのお陰で、一歩前進ね。ありがとう。署の方で、奥村さんからはもう少し詳しく話を聞くことになるから、今日はここでお別れしましょ」

「はい、分かりました。綾乃さん、あとはよろしくお願いします」


 

 そのころ、前夜香港から入港していた漁船から降ろされた荷は日本の漁船に積み替えられると、すでに那覇を出港し紀伊半島から300km離れた海上にあった。行く先は、八丈島から300km離れた太平洋洋上である。

ピエール滝本をはじめとする5名のクルーが乗り込んだ『エンジェル号』が『横浜ベイサイドマリーナ』から出港し、そして、『逗子マリーナ』では、万が一の事態に備えるためクルーザー一艇が出航の準備を整えていたのだ。



 2 


綾乃は、加賀町署での奥村の聴取を終えると、一旦帰宅させることにした。これ以上追及しても、何も明らかにはならないという判断であった。

「奥村さん、あなたを帰宅させる条件として、『黒田組』の幹部と連絡を取ってくれるかしら?」

「成宮さん・・・、それは何のために?」

「川端直樹さんを殺害した実行犯を、差し出してもらうためよ」

「それは、無理だと・・・」

「無理でもいいから、電話して!」

奥村は、綾乃の剣幕に押される形となった。


「ああ、奥村さんですか・・・、またうまい情報を頂けるのですか・・・」          幹部の声が携帯からかすかに聞こえている。

「それが・・・、」

「携帯を貸して!」 綾乃は、奥村の携帯を奪い取ると話かけた。

「代わりました…。加賀町署の成宮です」

「誰? 加賀町署の・・成宮さん?・・・」

「そうです。あなたは?…」

「・・佐野高志です。成宮さん、僕をデートにでも誘っているのですか?」

「…そうよ。会ってくれるかしら?」

「正直用件は、何なんですか?」

「殺された捜査官の事だけど…」

「う~ん、・・・分かりました。ただしお一人で来ることが条件ですが・・・」

「……分かった…わ…」

綾乃には、内心躊躇する気持ちがあったのも事実である。しかし、刑事としての使命感に背中を押されたのであった。

「古畑巡査部長、『黒田組』の佐野高志につい調べてくれないかしら?」

「警部補、これから『黒田組』に出かけるのですか? 無謀過ぎますよ」

「仕方ないわね。私が持ちかけた話だし…」


 古畑のディスプレイに、佐野についてのデータが映し出された。しかし、表立った活動歴がないのか、あまり詳しい情報を得ることは出来なかった。

【  佐野高志 38歳 

   黒田組若頭 (稲庭会下部組織)                                本部  西区老松町2-*-* 老松ビル                                                                       学歴  **大学法学部卒業

性格 印象は穏かだが、武闘派の一面を持つ。

関連企業など 濱新グループと深い関係があるとの噂があるが、定かではない 】  


 30分後、綾乃の運転する『MAZDA6』が老松ビルの前で止まると、ビルの中から2人の若い男達が飛び出して来た。

「キーはお預かりますので、5階へ上がって下さい。若頭が待っております・・・」

「この車、覆パトだから大事に扱ってね!」

「承知しました!」

一人の男に案内されるまま、5階の応接室に通された。

「お待ちしておりました。あなたが、加賀町署の成宮警部補さんですか・・・、    お噂はかねがね・・・」

「噂って? 誰が私の噂を?…」

「まあ、その辺は食事をしながらでも・・・」

「いいえ、結構です。事件が無事解決した後なら、ゆっくりと……」

「残念ですね・・、では、その黒いトートバックを預からせて頂きます。

何が飛び出してくるか分かりませんので・・、それと携帯の電源を切ってください」

「ずいぶんと、用心深いのね……」

綾乃は、素直に従った。佐野を除いて、3人の男達が入口付近に立っている。


「警部補、私に何を話せと言うのですか?」

「その前に、『エンジェル』の滝本オーナーとは、どういう関係なのかしら?」

「そこからですか・・・、私は、滝本さんの会社の経営アドバイザーといいますか・・、健全な経営のお手つだいをしています」

「端的に言うと、違法薬物の仲介役、もしかしたら、滝本さん所有のクルーザーを使って、『瀬取り』をやらせてるとか?…」

「はっ、は・・・面白い想像ですね。 成宮さん、あなたは、『強行犯罪』が専門のはずですが・・、いつから、『マトリ』の真似事を?・・」

「あなた達に殺された川端捜査官の意志を継ごうと思った時からかしら……」

「そもそも、あなたは、マトリを誤解してますね。そんな、綺麗事を並べられるような組織じゃありませんよ。彼らは、利用できる人間は違法だろうと、誰でも利用するんです。警視庁の5課が横浜分室の捜査員を逮捕したのが、いい例ですよ」

「佐野さん…、私は捜査方法の是非を言っている訳ではないのよ。どんな理由があるにしろ、人の命を理不尽に奪うことが許せないの…。マトリの捜査方法に秘匿性が高いのも、ある意味理解は出来るわ。殺人などと違って、直接の被害者が表に出ないこともあるし、被害者自身も犯罪そのものを隠そうとしているしね……」


「成宮さんのいう事も分かりますが、俺たちも与えられた環境で飯を食っていかなければならない。当然これを邪魔する者は排除するしかないのです」

「あなたは、やっぱり現代のインテリやくざと言ってもいいわね。でも、もっとまともな生業で生きて行けないのかしら?」

「成宮さん、覚醒剤って言うのは、本来薬品なんですよ。人々の苦痛を和らげるためのね。以前は、合法的なクスリだった。ある意味人を救って来たんだ」

「薬に、罪はないという訳ね」

「そのとおりです。規制なんて、その時の時代によっても変わって来る。そういう意味では、酒も煙草も同じことだよ」

「佐野さん、そんな頭の切れるあなたが、司法の眼を意識しながらこそこそと生きて行くなんて残念な気持ちだわ」

「仕方がないさ。これも組から俺に与えられた使命というものだからな・・・」

「佐野さんは、もっと上の人間から命令されていて、本音は、仕方がなくと言いたいのね!」

「・・・、・・・・」佐野は、周りを囲んでいる男達の顔色を見た。



 3



「これは、刑事としての私の勘なんだけど…、あなたが、川端捜査官を殺したとは、とても思えないのよ」 

「あぁ、確かにその通りだけどな・・・」

「だとしたら、それがいったい誰なのか教えてくれない?」

「そんなことが無理なことは、百も承知でしょう・・・。組が潰されてしまう」

「考えてみて! あなたにも子供はいると思うけど…、これが父親として、胸を張って自慢できる仕事かしら? どんなに理屈をつけても本質は変わらないわ。間違っても、自分の子供を『シャブ付け』にしたいと思う親が何処にいると言うの?」


「成宮さん、お説教はその辺で結構です。逆に、県警と接触したらしいが、どこまで滝本に迫っているのか教えてくれませんか?それによって、対応が違ってくるんです。今回の取引は今までにない規模でね。これを成功させなければ、それこそ本当に私の組が無くなってしまう。・・・話して下さい」



「断るわ! あなたの後ろにいる人物を教えてくれたら、別だけど…」

「仕方がない・・・でも、このまま黙って帰す訳にはいきませんよ!」

綾乃は、無理やり椅子の上に座らされると、後ろ手に廻され結束バンドで縛りあげられた。結束バンドが両手に食い込んで来る。

「分かったわ…佐野さん…、話してあげるから、このバンド外してくれない?   食い込んで気を失いそうになるわ…」

「話す気になったのなら、外してやってもいいよ。おい、達也外してやってくれ!」

綾乃は、結束バンドが気になっていたのだ。バンドが、カッターナイフで切断されると床の上に落ちた。

「ありがとう、助かったわ…、いつもこんなものを使っているの?」

「いや、たまたま船に置いてあったものを使ったまでだ」

「……? 佐野さん…、あなたは、少なくとも殺人現場にはいたのね?」

「・・・勘の良いアマデカさんだな・・」

「やっぱりね。実行犯はともかく、あなたと滝本が一緒にいたことは確かだわ。

そして、現場は、『エンジェル』のデッキね。抵抗出来ないほど弱った川端捜査官の結束バンドを外すと、『ベイサイドマリーナ』の海中に沈めて溺死させた。バンドを外したのは、ここから足が付くのを恐れたためだわ。違うかしら?…」


「どこにそんな証拠があると言うんだ? すべて憶測だよ」

「確かに、今わね。でも、滝本が『瀬取り』の現場を押さえられたら、今までのように証拠不十分とはならないはずよ。厳しい取り調べに音を上げて、全てを話すことになるわ。そのために、『県警』が執念を燃やして滝本を追っているはずよ」

「笑わせるな。クスリに関しては、素人同然だな。まあ、いい、少し教えてやるか。

沖縄から漁船に積み込んだ荷の引き取り場所は、八丈島から300kmも離れた海上なんだよ。船を持たない『県警の薬取課』が動いたところで、現行犯で捕まえることは、不可能なんだよ。せいぜい、陸揚げされた現場を押さえるくらいなら、大半の量が国内に入ってしまった後の祭りという事だ」

「佐野さん、実に良い話を聞かせてもらったわ…」

「何?・・そうとなったら、ますますこのまま帰す訳には、行かなくなる・・・」


 突然、佐野の握りこぶしが、綾乃の腹に食い込んだ。閉じられていた両足が意志に反して不自然に開かれた。そして、苦い水がこみ上げると、床が黄色く染まった。

「威勢のいいのも、これまでですか?・・・成宮さん?」

「あなたの強がりも、どこまで続くかしら……」

綾乃は、せき込みながらも抵抗を見せた。

「達也、女だからって、手加減することはない。思い切ってやれ!」

張り手が、左頬に振り下ろされると、まだ治りきっていない唇が再び切れ、鮮血が流れ出た。白いシャツに水滴が染みこむように、赤く染まっていく・・・。

「全裸にしろ! この女は、柏木とやったことがあるんだ。捜査のためには、誰とでもやる女なんだ」

「……柏木って? 『逗子マリーナ』で会った柏木さんのことなの?……」

綾乃は、意識が朦朧としながらも、懐かしい柏木の名前に反応した。

「そうだよ!」

「でも…、どうして…、そんなことが分かるのよ?」

「オヤジの話では、ベッドルームに監視カメラが仕掛けてあったらしいな」

「じゃあ、あのクルーザーの持ち主は……」

「もちろん、ハマシンGだよ。そもそも、柏木は、あんたを殺すために送り込まれた 『スナイパー』だった。しかし、なぜか未遂に終わってしまった。オヤジが原因を探るためにVIDEOを再生したところ、映っていたのが恋人たちのするような愛情を感じさせる行為だったという訳だ。柏木は、あんたを凌辱して殺すつもりが、情が湧いてしまったのだろうな。そして、おまけに足を洗いたいとまで、言い出したのさ」

「よかった…、堅気に戻るつもりなのね……。柏木さんは、そのオヤジさんとは、どういう関係なの?…」

綾乃は、唇からの出血を止めるために、シャツの袖で押さえながら聞いた。

「柏木は、何処にも属してないいわば、一匹オオカミでね。『オヤジさん』直々の命で動く人間だよ。よっぽどの恩義があるのだろうな・・・。               そこで、最後のミッションを無事やり遂げれば、今まで面倒を見て来たこともすべて忘れ、足を洗うことを許してやると言ったんだ。でもな・・・、所詮実行できないと踏んだ上のことだろうよ……」

「許すと言うのも怪しいもんだけど…、最後のミッションて?……」

「そりゃ、決まってるさ。あんたに目の前から消えてもらうという事に他ならない。 俺には、どうしても、ただの女刑事にしか見えないあんたを目の敵にするのかが分からないな。裏を返せば、それだけあんたに執着していて、柏木に嫉妬でもしているんだろうか・・・」


「佐野さんの言っているその『オヤジさん』の正体というのを教えて……」

「アマデカさん、あんただって内心見当がついていると、思うけどな・・・」

「私を、その人に合わせてくれないかな?」

「何のためにだ?」

「柏木さんの希望を叶えてあげたいの・・・」

「それをお膳立てしてやっても良いが、結局は、あんたの命を差し出すことになる」

「面白いわね。やれるものならやってみたら……」

「なに~! 今置かれている自分の立場を考えてみろ。手も足も出ないはずだ」

「そうかしら?…」

綾乃の挑発に反応した佐野の右足が、綾乃の座っている椅子を蹴り上げると、激しく音を立て、綾乃は椅子ごと壁際まで飛ばされて行った。スカートが無残にも捲れ、長い両足が宙を舞うと、男達の視線がそれを追う。その時、予期せぬ黒く小さな四角い形状のものが上着のポケットから転がり出た。

「何だ? これは・・・? 早く踏みつぶせ!」佐野が大きな声を出した。

「若頭、これは・・・、『GPS』発信機じゃないですか?」

男が、慌ててそれを強く踏みつぶすと、鈍い音が部屋の中に広がっていく。

「だから、女は信用できないって言うんだ。服を脱がして、何を持っているのか徹底的に調べあげるんだ!」


床に転がっていた綾乃が、男の手で乱暴に引き起こされたようとした時である。

股間を押さえ、悶絶した男がスローモーションのように膝を崩すと前のめりに倒れて行く。周りを取り囲んでいた男達も、すぐには現実を把握出来ていない。

「こ、この女は、何なんだ! 早くやれ!」

佐野の声に我に返った男が、椅子を手にすると、綾乃の頭をめがけて降り下ろした。間一髪、これを避けた綾乃の右横で激しく砕けると、床に飛び散っていった。

これに呼応するようにバックホルスターのホックを外すと、素早く引き抜きS&Wsakuraのトリガーを引く。意図せず右肩を撃ち抜かれた男が、後方に飛んで行った。

「銃を持ってるぜ! それも、平気で人を撃ちやがる!」男の一人が吠えた。

「動かないで!」                             綾乃は、男達の動きを止めると、両手でS&Wを握り絞め、佐野の眉間に照準を合わせながら言った。

「私は、一発で仕留める訓練しかしてなの。あと、4人は殺せる計算ね。

佐野さん、滝本が今どこにいるのか正直に話してくれたなら、命まで取ろうと思わないわ。どう? 話してくれるわね!」

「・・・あ、あんたは、やっぱりオヤジさんのいう通り、ただの女じゃない。

ある意味、痛快な女だよ。柏木やオヤジが惚れるのも分かる気がする・・・」

「佐野さん…、あなたにも娘さんがいるなら、その可愛い顔を思い浮かべて!

あなたの薬で、どれほどの人が苦しむことになるのか、考えてみて。その薬が

周り回って、娘さんの腕に打たれるのかも知れないのよ。あなたが、家族のためにと

思って働いていても、結果的に家族を蝕むことになるなら、その大儀も失われることのなるわ。佐野さん、どうか教えて……。あなたの家族を助けるためだと思って!」


「・・・あんたって、刑事は・・・。俺を撃つんだ。早く!撃ってくれ!

 そうすれば・・・、」

綾乃は、照準を佐野の眉間から左肩に変えると、躊躇なくトリガーを絞った。

膝が崩れ、前のめりに倒れそうな佐野の重い身体を、綾乃は胸で母のように優しく抱きとめた。

佐野の小さな声を、近づけた綾乃の耳が拾っている。周りには聞こえていないはずである。

「・・・今は、三浦の100km先まで帰って来ているはずだ。もし荷が無かったら、

発覚を恐れて、『浮き具』を付けて葉山沖まで流した後だよ・・。それを、連絡を受けた最後の者が回収することになっている・・・」

「…ありがとう…、あなたは、男らしい男ね。家族も喜ぶと思うわ。すぐ、救急を呼んであげるから…、」


その時、急にドアが開かれると、5人の男達が部屋になだれ込んで来た。

「県警、『国際薬物取締課』の者だ! 警察官の監禁、および暴行の現行犯で逮捕する!」声の主は、城之内俊介警部補であった。

「ありがとう、城之内警部補。あなたから預かった『GPS』壊されちゃったわ」

「そんな事より、途中で信号が途絶えたので、どうなることかと心配しましたよ。

でも、大丈夫ですか? 大分怪我をされているようですが・・・」

「ええ、それよりこちらの佐野さんに救急を呼んであげて…、急所は外してるけど」

「う~ん警部補・・・、これって、過剰防衛に?・・・」

「それより城之内さん、こっちへ来て!」

綾乃は、城之内を隣室に呼びだすと、知り得た情報のすべてを話した。

「いま時分、『瀬取り』の終わった滝本のクルーザーは、三浦半島の100km先に

到達しているはずなの。30ノットだと、二時間余りで帰港してしまうわ。

だから……、直前に捕まえるとしたら、40ノットを出せる船が必要となる計算ね」

「う~ん、40ノットと言えば、陸上の70km越えだから・・・、『ほうおう』しか考えられないですね」

「それは、どこの船なの?」

「『横浜海上保安部』です」

「面識はあるのかしら?」

「ええ、たまたまこの事案の協力をお願いしたばかりで・・・、隊長は、阿部寛和さんですね」

「それって、最近発足した『DCSF』じゃないの?」

「ええ、確かに・・・」



第六話終章へ続く



 作者のことば

この先、綾乃さんに何が起きるのか、作者にも分かりません。

どうしたら・・・、う~ん、でも、乞うご期待です!!















 



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