第13話 水魔法

マキトの教えで、多恵もなんとなく意味が分かって練習ができるようになり、コップの中の水に花びらの色を抽出する事は出来るようになっていた。時間も忘れ、真剣に練習していたため、いつの間にか夕方になっていた。

「おばちゃん腹減らないの?そういうとこだけはタフだよね〜」とマキトが話しかけると、多恵は、「そういえば、お腹すいたね!今何時なの?」と多恵が聞いて来た。「もう15時だよ〜!昼メシも食べないでもう限界!!」マキトは、多恵が集中していた為、空腹のまま付き合ってくれていたのだ。「ごめん、ごめん。ミアちゃん達はちゃんと食べてるかな?とにかくご飯にしよう」と家の中に戻ると、アリサが食事の支度をしていてくれた。

「集中するのも大事だけど、きちんと食事は摂ってよね。それと、いつもいつもこんな食事が出てくるわけじゃ無いからね!新たな門出だし、お祝いも兼ねてちょっと奮発したのよ。」と照れくさそうにアリサが話した。

「話はもういいからさぁ、俺、腹ぺこ!!早く食べようよ」とマキトが急かし、「じゃあ、食べよう!手を合わせて、恵みに感謝し、いただきます」とアリサが号令をかけた。

多恵は、久しぶりの明るい食卓に、昔は、みんなで色々作って食べて、楽しかったなぁと現世にいる頃を思い出していた。

ミアも「美味しいね」と嬉しそうに笑っていて、異世界に来て、ずっと緊張していた多恵は、ホッとして涙が溢れた。

「何泣いてるのよ!全てこれからなのよ」とアリサが多恵に声をかけると「なんだか嬉しくて、ホッとして力が抜けちゃった」と多恵は涙を拭った。多恵は、嬉しさとホッとしたのと練習の疲れもあり、すぐに寝てしまった。

アリサは「マキトどうなの?」と聞くと、「まだまだだよね〜。多少は理解したけど、飲み込みは悪いし、時間かかるよね。おばちゃんなんだから仕方ないんじゃない。」とマキトが進み具合を話した。「やり方を変えようか?マキトは、どう思う?」アリサは、このままでは変化が見られないのではないかと心配していた。マキトは、「もっと簡単に理解出来るものの方が良いんじゃないかな?ミアが理解出来るレベルでやっとじゃないのかな?」と多恵が原理を理解出来ないと、習得不可能だと思っていた。

2人は考えた末に魔力感知させるのは後回しにしようと決めた。

朝になり、多恵は食事の支度をしていた。マキトが起きてきて、「おはよう」とあくびしながら言うと、「おはよう。もうすぐご飯出来るから、みんな起こしてきて」と多恵が頼んだ。

「えー、嫌だよアリサ怒るもん」とマキトが言うと、「もう、じゃあマキトテーブルの準備しておいて」と言い、多恵がみんなを起こしに行った。「おはようおばちゃん」ミアは直ぐに起きて、マリアの所に走っていき、「マリアお姉ちゃん朝だよ〜」とマリアを起こすと、マリアは、機嫌良く「ミア、おはよう」とミアを抱きしめた。多恵が「朝ごはん出来てるから。」と声をかけると、マリアは、黙って食卓についた。朝食が終わり、多恵が片付けをしようとすると、マリアが「今日から少し違うことをしてもらうから。外に出て。ミア、お片付けお願い」と声をかけるとミアは嬉しそうに片付けを始めた。多恵が外に出ると、「ハッキリ言うけど、飲み込みが相当悪い。自分の頭で簡単に理解出来ることしかスムーズに進めていけないようだから、魔力感知は、後回しにする今日からは、簡単に使える魔力操作をしていこうと思う」とアリサが話した。多恵は「ごめんなさい。私が鈍臭いから」と落ち込むと、「落ち込んでる場合じゃないの。前に進まないと。まず、昨日まで水を扱ってたから、水魔法がやりやすいと思うからそこから始めるわよ」とアリサが言い、手のひらの上に水の玉を作って見せた。多恵に「やってみて、空気中の水を集めるイメージで」と言うと、多恵は手のひらを広げ水を集めるイメージをすると水の玉が出来上がった。「近いけどそうじゃないの。空気中に湿気があるでしょ自然の中にも、見えてはいないけどそこから感じとる。多恵が今やったのは、水を集めるイメージだけど、実際の水という物質を集めてる。もう一度やってみて」とアリサが言うと、多恵は少し考え、手のひらに水を集めるイメージをした。すると水の玉が出来上がった。多恵がやると、水の玉は出来上がるが、コップやバケツの中から水が集まっていた。

「やっぱりそうなのね。見て」と言いアリサは雑巾を濡らし、「この中に水は見えてないでしょ?でも、絞ればこういう風に水が目に見える形になる。簡単に言えばこういうことよ。目に見えていなくても、空気にも土にも水は含まれている。あなたは、難しく考え過ぎよ!もっと柔軟に考えてイメージして」と多恵の欠点を指摘すると。「そうか。やってみる」と言い多恵は目の前の木から水を吸い取るイメージをして手のひらに水の玉を作った。

「まぁ、良いでしょう。とりあえず完璧にできるまで練習して」と言いアリサは、家の中に入った。多恵は、同じ動作を何回も練習した。

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