第12話 特訓

多恵とミアは、荷物を持ち、家をあとにした。山の入り口にはマキトが待っていた。「ミアも一緒に来たんだね。大丈夫?」とマキトが聞くとミアは、「お姉ちゃん、行って良いって。だから大丈夫」と笑って答えた。マキトは、「じゃあ、行くよ」と言いアリサのところまで案内してくれた。マキトは、「おばちゃん、しっかり魔力使えるようになってよ。そうしないと何もかも始まらないんだから」と言い、多恵の背中を叩いた。「痛ッ!もう、分かってるよ。これから2人とも宜しくお願いします。ミアちゃんの事も宜しくお願いします。」と多恵は背中を押さえながら深々とお辞儀をした。アリサは、ミアの所に駆け寄り、「ミア、よく来たね〜!良く決心して偉いよ。これから沢山の事を覚えていこう」と抱きしめた。アリサは、「多恵は荷物を片付けて昨日の続きから。部屋はそこを使って」と部屋の入り口を指差した。そして、「ミアは、こっちね」とミアを連れて部屋の案内に行ってしまった。

多恵が、「アリサちゃん私には冷たいんだから」とぶつぶつ言いながら部屋に向かおうとすると、コツンっと杖に頭を叩かれた。「痛ッ、私ばっかりこんな役回りなんだから」と言うと「ぶつぶつ言ってる暇は無いのよ、早く片付けて始める。マキト!あんた要領良いんだから、コツを教えてあげなさい」とアリサが振り返り叫んだ。マキトは、内心[えーっ!自分が教えるの?]と思ったが、アリサが怖い顔をしていたので、言い返さないほうがいいと思った。

「分かったよ!行くよおばちゃん!!荷物だけ早く置いてきて」とマキトが言うと、「素直でよろしい」とアリサがご機嫌で頷いていた。

多恵が、荷物を部屋に置き出てくると、マキトが「おばちゃんこっち」と外から呼んでいた。

多恵が外に出るとマキトが水の入ったコップと青い花びらを浮かせたコップを用意していた。

「まず、昨日と同じようにこっちのコップで水が溢れる感じでやってみて」と水だけが入ったコップを前に出した。多恵は「分かった」と言いコップを持ち集中した。すると直ぐにコップにヒビが入ってしまった。「あー!また逆戻り」と多恵が言うと、マキトは「じゃあ、こっちのコップ。あのさ、溢れさせるんじゃなくてさコップの中の水を花びらの色にするにはおばちゃんならまずどうする?」と聞いてきた。「とりあえず、かき混ぜてみるかな?」と多恵が答えると、マキトは「そのイメージでやってみて!コップは触らないで」と言い、多恵の前に花びらの浮いたコップを出した。多恵は、コップの中をかき混ぜるイメージで手のひらに集中すると、コップの水がくるくる回り始めた。

多恵は「凄い」と言うと止まってしまい。マキトは、「おばちゃん集中力欠けすぎ。今、水が回っただけでしょ!かき混ぜるイメージは合ってるけど、花びらと水の色が一体化していくイメージが必要な訳」と呆れ顔で言うと、多恵は「それこそ難しくない?」と多恵は困った顔で言うが、「やってみてよ」と言われ、今度はかき混ぜたら花の色素が抜けてくイメージをしながらコップに集中すると、コップの中で渦ができ、花びらから青色が溶け出した。

「はい。良くできました。」マキトが声をかけると多恵は驚いた様子で、マキトを見た。

マキトは「魔力感知っていうのはさ、実際、眼に見えないものを見るっていう事な訳、おばちゃんの場合さ、水を溢れさすっていう事に対して、イメージが上手く出来てないんだよね。まずは、おばちゃんのイメージしやすいものに切り替えて練習していった方が良いと思うんだよね。見てて」と言いマキトがコップの上から手をかざし魔力を注ぐとコップの中の青色だけが分離したようにマーブル模様の様に見えた。

「これが魔力が眼に見えるという感じ。これはコップの中に色をつけたから見えている訳。普通の水だけならおばちゃんにはまだ見えないでしょ?これを見えるようにしていかなくちゃいけない」と説明してくれたが、多恵は見えるようになんてなるものなのか?と不安に思った。しかし、アリサよりも丁寧に教えてくれるマキトにありがたいと思っていた。

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