第10話 練習
アリサは、水の入ったコップを多恵の前に置き、「置いたままの状態でコップを両手で持って手の方に気が流れていくような感じで、手の方に集中を持っていってみて」と多恵に指示した。多恵は言われた通りに手の方に集中し力を入れた。すると、コップが、割れてしまった。「あっ、ごめんなさい」多恵が言うと、アリサは、「力を入れるんじゃないの、流れを集める感じ、イメージして」と割れたコップは片付け、新しいコップを置いた。多恵は、もう一度集中してコップを持っているがコップにはヒビが入ってしまった。「力を入れてるつもりは無いんだけど、力が入ってるって事なんだよね?ごめんなさい。」と言うが、アリサは直ぐに新しいコップに変え「もう一度」と多恵に同じ動作をさせた。10回を越えて「もうコップないから最後だよ!力じゃなくて気を溢れさせる。コップの水を押し出す気持ちで」とアリサが再びアドバイスして多恵がコップを持って集中していると、コップの中の水が溢れた。「出来たー」多恵は、手を叩き喜んだ。しかし、アリサは「喜んでる場合じゃないわよ!普通ならこの程度失敗しても1〜2回よ!」と言い、壊れたコップを魔法で修復した。
見ていたミアは「凄〜い、ミアも出来たら良いのに」と初めて見る魔法に大興奮だった。
アリサは、「今やったように、水を溢れさせる感じを忘れないで」と言うと多恵は「もう一度やっても良い?」と聞いた。「その感覚を身体に覚えさせて欲しいから、練習して!完全になったら私に声かけて」とアリサは言いミアを連れて奥の部屋に入った。多恵は、練習を始めるが、またコップにヒビが入ったり、水がコップの中で揺れるだけであったりなかなか上手くはいかなかった。それでも、何回も練習するうちにコップにヒビが入るような事はなくなっていた。アリサが、声をかけてこない多恵を気にかけて「どう?この子いるから、そろそろ戻らないといけないんじゃない?」と声をかけてきた。多恵は、夢中になっていて時間も気にしていなかった。「そうだ、ミアちゃん帰らなきゃ。ごめんね、遅くなっちゃってそれにおばちゃんミアちゃんの事を放ったらかしで」と多恵はミアの事をすっかり忘れていた。アリサは、「あなたはここに残って練習した方が良いんじゃないかしら?きちんと魔術が扱えるにはだいぶかかるわよ。その間、この子を毎回放っておくのもどうかと思うしね」と多恵が、魔術を修得するのに時間がかかるのを加味して、集中して出来るよう住み込む事を勧めた。
すると、ミアが「ミア何でもお手伝いするからミアもここにいたい。ミアも魔法教えてほしい」と言い出した。アリサは「ミアには魔法を使えるだけの魔力がない。ミアもおばちゃんに付いていて話を聞いていたからきっとわかると思うけど、この人は世界を救わなければいけない。その為には先ず沢山のお勉強をしなければいけないし、世界を旅しなければいけない。危険なことも沢山起きるわ。ミアも危ない事は分かるだろうし、お姉ちゃんが心配するの分かるでしょう?」とミアに説明をした。
ミアは「お姉ちゃん、ミアがいるせいで毎日お仕事して、遊んだりお勉強したり好きなこと出来ないの。だから、ミアは、お姉ちゃんに好きなことして欲しいの。お姉ちゃんが良いよって言ってくれるまで、ミア頑張る。だから、毎日ここに来て良いでしょ?」アリサはミアの言葉に感動していた。「ミアは、お姉ちゃんに心配をさせないこと。夕方になったらお家に帰ること危ないところへは連れては行けません。ミア、ちゃんと守れる?」と聞くと「守れる。ミア、ちゃんと守るし、ここで魔法が使えるようになるまでお勉強する。お手伝いもする。アリサお姉ちゃんありがとう」とミアは、涙が溢れるのを拭いながら話した。多恵は、たった1日で、ミアがとても成長したように見えていた。自分もしっかりしなくてはと思った。そして多恵は「今日は、とりあえず私も一旦戻ります。ミアちゃんのお姉さんにお世話になったので挨拶もしたいし、荷物もあるので、明日また改めてこちらに来ます。今日は、ありがとうございました」と多恵がお礼を言うとアリサは「マキト、送って行ってあげて」とマキトに声をかけた。
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