第8話 説得

多恵は、マリアが仕事に行くのを見送ると、出かける支度を始めた。すると「ミアも一緒に行くー」とミアが手を繋いできた。

多恵は、昨日のように一人で山に入ったら困ると思い、「おばちゃんから絶対離れちゃダメだよ。分かった?」というとミアは、「分かったミア、おばちゃんから離れない」といい嬉しそうに抱きついた。

多恵は、ミアを連れ山に向かうと、入り口で既にマキトが待っていた。

「マキト。良かった会えて。マキトに話したい事もあったし、色々教えて欲しい事があったから」と多恵は話し出した。

マキトに、神様から聞いた話を一から説明し、マキトの協力が必要な事を話した。

「おばちゃんがこの世界の人じゃないっていうのはなんとなく分かったさ、変な感じがしたから。だけど、その神様の話?世界平和?どの種族も仲良く?なんていうのは無理なんじゃない?そもそも、人間は、魔物に対して敵対心を持ってるし、その他の種族だってそうだと思う。自分達の身を守る為に戦ってる。理想的な話だけど、無理難題だな。俺には協力できる事は無いよ」と多恵の事情をあっさり受け入れた上で話した。「多恵は、神様はマキトの協力が絶対必要だって言ってた。マキトは、人間を襲ったりしないし、寧ろ助けてくれる。それに今みたいに人間のような姿にもなれる。だから、マキトが協力してくれなきゃ困る」と多恵は、自分もどうして良いか分からない為マキトを説得しなきゃと思った。「あーー!面倒臭ーな!おばちゃんさ、相当な魔力持ってるんでしょ?使えないみたいだけど、とにかく、襲われないようにするにも、何するにも、まずは、自分の力を使えるようにしないと」とマキトは説得されるまでもなく手伝ってくれる様子だった。

「そうこなくちゃ!マキトには、私が魔力があるって事は分かるの?」と多恵は手をパンと叩きマキトに聞き返した。「分かるに決まってる。おばちゃんの魔力ってオーラが出るくらいデカい。だから魔物もそうそう近寄っては来ないさ。ただ、禍々しいものではなくなんていうのかな、うまく言えないけど、暖かい感じの珍しい魔力だよ」とマキトが説明すると、「どうやって使えば良い?」と率直に聞いた。「俺が変身しているのも魔力を使ってるわけ、力を溜めて放出する様に出して変身する。変身したら魔力を留めておくって感じ」マキトが説明してくれるが、多恵は自分でどうやれば良いのか全く分からなかった。「分からないよー。もうおばちゃんだから、何でも簡単には出来ないし、頭にもなかなか入らないから、簡単にできる事から教えて」と多恵はお願いした。すると、ミアが「お兄ちゃん、ミアにも出来る?」と聞いて来た。マキトは、「ミアには使えるほどの魔力は無いから出来ないかな」と答えるとミアは残念そうに口を尖らせた。

「おばちゃんは、とにかく手のひらに力を溜める練習をしてよ全身に流れるオーラを手に集中する感じ。それが出来ないと進まないから。とりあえず、俺は今日は、用事が出来たからまた明日。練習しろよー」とマキトは帰って行った。

「マキトがいなきゃ出来てるか分からないじゃん」と多恵は、言いながら「手のひらに集めるのね」と言いながら手を見つめるが、何も起きる気配はなく「あーん、無理だよ一人でなんて」と多恵が肩を落とすと、ミアが「おばちゃん、ミアがいるでしょ!はい、手に集めるんですよー」と多恵の手を握りニコニコしながら多恵を見ていた。「頑張るよおばちゃん!」と多恵は言い、手に集める感じと唱えながら練習していた。

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