第6話 ミアとマキト

「マキト〜どこなの?スライムってどこに集まってるのー?山に入ったら直ぐにマキトが出てきてくれるかと思ってたよ〜。アニメとかならそういう場面じゃん」マキトは、なかなか見つからず、歩き疲れ、自分の思い描いていた異世界ストーリーの様にはいかないという事を、多恵は実感していた。

「ミアちゃんも待ってるし、とりあえず今日は一旦戻ろう!」

多恵は街まで戻ることにした。

「ただいまー!遅くなってごめんね。」とミアに声をかけると、ミアは「おばちゃん帰って来ないかと思っちゃった。ミア、1人でちゃんと待ってたよ」と多恵が帰って来たことにホッとしたミアは、「おばちゃんは、山に何しに行って来たの?」と尋ねた。「人を探しに行って来たのだけど、今日は、見つからなかった。」多恵が正直に話すと「じゃあ、また山に行くの?ミアも一緒に行く」とミアが言い出した。

多恵は、もし魔物が出たとして、今自分にはどうすることも出来ないから、ミアを連れて行くのは危ないだろうと思った。「山は何があるか分からないし、それに、マリアが良いって言わないよ危なくなければ連れて行ってあげたいけど、ごめんねミアちゃん」多恵はミアに謝った。ミアは、口を尖らせていたが、マリアが良いと言う訳がないことも分かっていた。

翌る日、多恵は「夕方までには戻るからね」と告げて山に出発した。ミアは、多恵について行こうと急いで家を出た。小さいミアには追いつけるはずもなく、山の入り口で「おばちゃーん」と叫んでいた。

多恵には、ミアの声は届かず山奥へ進んでいった。ミアは、しばらく山の入り口で立っていたが、疲れて座り込んでいた。山の中まで追いかけていく勇気がなかったのだ。

歌って気を紛らわせていたがそのうち眠くなりそのまま寝てしまった。

「あー、こんなところで寝たら直ぐ魔物の餌食になっちゃうよーおい、チビちゃん起きな」ミアに声をかけたのはマキトだった。「うーん。あっ、寝ちゃってたんだ。誰かに起こされたと思うけど」ミアが目を覚ます時にはマキトは姿を消していた。「おーい!起こしてくれてありがと」ミアは山に向かって叫ぶと、マキトは思わず笑い出した。「ククク」「やっぱり誰かいる。おーいどこなの?」ミアはキョロキョロしていると、マキトは「仕方ないなぁ、こんな所にいたら危ないだろう、早く街に戻らないと」と言いながら姿を現した。「チビちゃん、何でこんな所に来たんだよ!ダメだって言われてるだろう」と言うと、ミアは「ミアは、おばちゃんについて来たんだけど、おばちゃん見えなくなっちゃって」とめそめそしだした。マキトは慌てて、「泣くなよ、村から山に来る人間なんてそうそういないだろう山に来たんじゃないんじゃないか?」と、マキトが話すと、「おばちゃん、人を探してるって言ったもん!山に行くって言ったもん」と、ミアが泣き出した。困ったマキトは、「とにかくここはチビちゃんが来ていい所じゃない。そのおばちゃんも、山に入ったなら無事かわからない帰るんだ」とマキトが帰るように話すと、「嫌だ、それに、チビちゃんじゃないもんミアだもん」と言い返す。「参ったなぁ」マキトは、「ここには、魔物が沢山出るんだ。早く帰らないと食べられちゃうんだぞ」とミアを脅すが、「お兄ちゃんが一緒にいるから大丈夫でしょ」とミアはにこにこして答えた。マキトは「あーーー」と頭を掻きながらミアの隣に座った。

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