#15 終了報告

 「おいおい、どうしたチビ助 ?ずいぶんひでぇ面じゃねぇか ?」


酒場に帰還したおれを出迎えたのは、フラジャイルの皮肉混じりのダミ声だった。




 「うるせぇなぁ、いろいろあったんだよ!」


おれはぶっきらぼうに言い返すと、そのままカウンター席へと向かった。


先にカウンター席でくつろいでいたエリルが、おいでおいでをしながら、隣の空席をポンポンと叩いている。




 実際、今のおれの姿は酷いものだった。


全身が泥にまみれ、その上敵の返り血と肉片で全身がコーティングされているのだ。


自慢の雪のような髪の毛は赤と茶色のマダラに染まり、乾いた血肉があちこちにこびりついている。




 それに、臭いもひどいものだ。


血肉の生臭い臭いと獣臭の入り混じった、何とも言えない悪臭が全身から漂っている。


実際ここに来るまでの間、すれ違う人々から好奇と嫌悪に満ちた視線を、何度となく向けられてきた。




 「まったく、掃除するコッチの身にもなってくれよ!」


グラスを磨きながら抗議するフラジャイルを無視して、おれはエリルの隣に腰掛けた。




 「それで、エリル。さっきの話の続きだけど。」


「兄貴、その前にやることあるでしょ?」


「やること?」


はて、ほかになにかやることがあっただろうか?


おれは小首を傾げて少し考えた。




 「報告だよ。フラジャイルに、任務達成のほ・う・こ・く。」


「あーー……。」


すっかり忘れていた。


おれはフラジャイルに向き直り、カウンター越しに奴に話しかける。




 「フラジャイル、任務は完了だ。ダイアラプトル5体、確かに始末した。」


フラジャイルはカメラアイをこちらに向けると、グラスを拭く手を止めた。


そして肩をすくめるようなジェスチャーをし、


「G.E.A.R.を出しな。」


とぶっきらぼうに告げた。




 おれはG.E.A.R.をはめた左腕をカウンター上に差し出した。


フラジャイルはカウンター越しにG.E.A.R.を指さす。


すると、奴の指の先端からレーザー光が発射された。


どうやらG.E.A.R.になんらかのデータが送信されているらしい。




 ジッ……ジジッという短い機械音がなり、G.E.A.R.の中央ディスプレイに立体映像が投射された。






_マーナ・ガルムの任務達成を確認






_報酬1000DGEを支給






_おつかれさまでした






 なるほど、こんな感じで任務をクリアしていくのか。


DGEというのが、このゲームの貨幣らしいな。


1DGEの価値がいったいどのくらいなのかはいまいちわからんが。




 「さて、任務の報告も終わったことだし、そろそろ本題に入ろうか。」


エリルはドリンクを一気に飲み干し、服の裾で乱暴に口を拭うと、静かな瞳でこちらに向き直った。

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