恋
……1年前のことだった。いつも通り任務を終えて帰路についた時、家近くの公園で光り輝くスーツケースを発見したんだ。
普段の俺じゃ近寄りもしなかっただろうが、その時は何故か異様にテンションが高かった。勢いそのままにスーツケースをこじ開けて中身の注射器状のなにかを腕にぶち込んじまった。その時はなんの症状もなかったんだが、翌日に俺に起こった異変に気づいたんだ。
自宅で酔ってた俺は、運悪く足を滑らして机の角に勢い良く頭をぶつけちまったんだが、脳漿が出るほど損傷していたのに、次の瞬間には治っちまってたんだ。ありえねぇと思うだろうが、マジの話なんだぜ? 俺は超人ヤカランになったってことだ。俺を止められるやつは誰もいねぇ、目の前の蜂頭でもだ!
「君、ウチの製品を使ってるみたいだね。その耐久性は明らかに異常だ」
「うるせぇぞ! かかって来い!」
「恐らくだけど、君が使ってるのは僕らが使用してるチップの試作品。だから人体の基準値を超えて性能を発揮している。そのままなんの処置もしないと….今日で死んじゃうね」
「お、あ? マジか?」
「大分マジ」
蜂頭の言ったことは…本当かどうかわかんねぇけど、嘘かマジかだったらマジよりかもな? いや、信じるわけじゃないけどな? あの注射器にもなんかロゴがついてたような気もしないでもないな?
「ふふ、君って結構単純なんだ。全部顔に出てる。こっちの味方してくれればその体も治してあげるんだけどな〜」
「いや、流石にそれはダメだ! 隊長にも任せとけって言っちまったしな」
「本当に死んじゃうんだよ? 良いの? そんな化け物みたいな体で死んだら黄泉の国からも門前払いを食らうだろうけど」
「化け物なんて言わないでくれよ、気にしてんだぜ?」
「君は常軌を脱したポジティブマンだね…もういいや」
会話が途切れた瞬間にレミントンをコッキングして頭に一発ぶち込んだ。蜂頭が飛び散り、新たな頭が再生する。可愛らしい顔だった。
「ふふん、驚いたかい? これが製品の再生速度だよ。君の使った注射はこれの基礎となっているんだ」
「恋、しました」
「は?」
スウェーレシティ カナンモフ @komotoki
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