ヤカラン

ボディメカニックはテロ組織としても有名だが、表向きにもトレイン社としての名を持っている。今までは決め手となる事件や証拠がなかったために本格的な調査が出来ていなかったが、今回の坂井の件でようやく尻尾を出してくれた。


 『配置は完了しています。あとは軍からも部隊が派遣されるので、それを待ってから突入しましょう』


 「令状なしで即突入とは思い切ったな」


 『"上"直々の指令が出ていますから』


 近年のボディメカニックは派手に動いていたからな。チップの技術もどさくさに紛れて奪うつもりだろう。"上"からしても奴らは用済みだったということだ。


 「ヘンリー、赤坂、メアリーはまだ病室だよな?」


 『勿論じゃ、初任務からまだ一月も経ってないのに不憫じゃのう』


 『失くすには惜しい優秀な人材だ』


 「よし、各部隊に戦闘準備をさせてくれ」


 指示を送り、私も隊員たちにレールガンや戦闘用Alロボットの待機をさせる。あとは軍を待つだけだ。トレイン社本社ビルを包囲する鉄鋼車が次々とその分厚い扉を開く。


 『配置完了しました。我々グルカも突入用意完了です』


 「よし、レールガンを正門へ放て」


 合図で鉄鋼車の重い扉がゆっくりと開く、細長い銃身から光が放たれた。


 『ギギャガッ』


 正門が蒸発した瞬間にワープゲートが無数に出現。中からは武者。事務所の時の奴らか。


 「隊長、実弾使用許可を」


 「許可する。皆殺しにしろ」


 巡回部隊からの隊員たちは優秀だ。昔の武器を好んで使うのが厄介だが。


 「ヤカラン! そのショットガンの名前はなんだ?」


 「こいつはレミントンM700、手に入れるのには苦労した。良い撃ち心地だぞ」


 「レジャーじゃないんだぞ! 集中して軍の通る道を作れ!」

 

 「た、隊長… すみません…」


 幸い武者の戦闘力は高くないが、マンティスの証言通りならばチップを有した敵も共に居るはずだ。第2射となるレールガンが放たれ、武者が塵となって行く。


 「好き放題して満足?」


 レールガンの眩い光が止んだ後に、蜂頭の怪物が立っていた。チップ持ちだな。


 「レミントンファイア!」


 「ヤカラン!?」


 ヤカランが頭を狙い撃とうとしたが、その前に針がヤカランの目を貫いた。


 「むむ、失礼しちゃうな。挨拶もしないで」


 「ここは俺に任せていけぇ!」


 「ヤカラン!?」


 ヤカランが再び狙い撃とうとするが、その前に針がヤカランの残った目を貫いた。


 「しつこいとモテないぞ」


 「俺に任せていけ!」


 「ヤカラン!?」


 「何なんだこれは…」

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