死に場所
「騎士塚康二、37歳。こんな廃墟に閉じこもって1人寂しく死ぬ、そんな人生でいいのか?」
古いマンションの廃墟内で男が2人向かい合っている。
「お前に良い仕事があるんだ、ただ暴れ回るだけの単純な仕事だ」
「受けるか?」
その言葉に騎士塚と呼ばれた男が頷いた。目標はボディメカニック本部、今日は長い1日になりそうだ。
*****
「私が尋問で得た情報を今から伝える、今後に関わる重要な情報だ。しっかりと聞くんだぞ」
「はい!」
「赤坂とヘンリーは部隊を連れてボディメカニックの拠点を調査しに行っている。メアリー、お前のその… 体についてのことは、技術課のティップスが説明してくれるとのことだ。今から本人がこの解剖室に来てくれる、大人しくしているんだぞ?」
「解剖されるんですか!?」
「解剖室はDNAを調査するための備品が置いてあるから使用しているだけだ。解剖はしないだろう、多分」
「多分!?」
こいつの体は明らかな変異を遂げている。チップに適応したからだろうか、今は様子を見るしかない。バタン、と解剖室の扉が開いた。
「メアリーさん、おはよう、情報課主任のティップスです」
「ティップス、説明をよろしく頼む」
彼は文字を空中に投射して指さした。
「メアリーさん、今の貴方は臓器や心臓などをチップとやらの効果により補われている状態です。まあ、言ってしまうと、貴方はチップを失ったら死んでしまう身なんですな」
「任務遂行は出来ますか?」
「上からは積極的に任務にあたって欲しいとの伝達が来とりますね。私個人としては安静が一番だと思うとるんですが」
「メアリー、自分のことを第一に考えろ。 死んだら何の意味も無いぞ」
「私はクソテロリスト共を潰すまで止まりたくありません、任務に参加します」
「そうか、来週にはボディメカニックを叩く、それまでは安静にしていろ。これも新人指導の一環だ」
決行日は今日だが、今のメアリーの精神状態ではとても任務は出来んだろう。ティップスに連れられ、メアリーは簡易病室へと移された。若い芽はこんなところで摘ませる訳にはいかない。
今日の任務は老人の死に場所に丁度良い。
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