刀と鎌
武者たちが虹色に光る刀を振り下ろす。αは刀の持ち手を破裂弾で破壊し、そのまま武者の頭へ撃ち込み、殺した。
彼らなら武者を任せていていいだろう、私の所にも来客のようだ。音なく侵入した緑のワンピースの女、手にはジャガーノートの時と同じ、謎の強化剤。
「総支配人も人使いが荒いなぁ〜、こんな老ぼれ、チップを使うまでもないでしょ〜」
女は"チップ"と呼ばれたものを体に突き刺し、起動させた。体が内側から変化し、手は鎌のような形になった。カマキリか? とんでも人間め。
「ちゃっちゃと終わらせちゃいましょ〜」
「こっちの台詞だな、老人を馬鹿にすると碌なことにはならんぞ?」
女が右手を振りかぶり、鎌で切りつけようとする。アマチュアが、いくら身体能力が高くても、これじゃあ当たらんだろう。
「ほ〜 今のを避けちゃうんだぁ、楽に死ねたのにねぇ。あっちの心配はしなくていいのぉ〜?」
「よく見てみろ、もう片付いている。後はお前だけだ」
「なっ!?」
残ったのは無惨に撃ち殺された武者の死体。経験が違う。レーザーガンで奴の右手の関節部を狙い、撃つ。ヘンリーのリボルバーの弾みたいに曲がりはせんが、最低限のテクニックはあると自負している。
「わ、わたしの腕が!」
「動揺しすぎだ。まだ左手が残っているだろう?」
「クソがっ! 喰らいやがれ!」
「間抜けにも程がある。本当に左で攻撃する奴がいるか」
差し出された哀れな左手を撃ち抜く事は容易だった。次は右足、左足、運動能力を失い、無様に女は倒れた。
「経験を積んでいれば、もう少しまともに戦えただろうにな。チップとやらは抜かせてもらうぞ」
「ま、まって! い、い、今抜いたら死んじゃうんだよ! こ、こうさんするから! てあてしてください!!」
「さっきまでの余裕はどうした? 助かりたいんだったら情報を吐けばいい。坂井のことやらチップのことやらなんでも吐け、そうすれば助けてやるかもな」
「は、はくから! さかいはサイボーグにされて総支配人さまの手伝いをしてる! チップは強い奴のDNA情報を圧縮して作った着脱化の強化剤! これで助けてくれるんだよね? ね?」
無闇に殺しても意味は無い、拘束して檻に入れておくのがいいだろう。
「名前は?」
「マンティスってみんなからはよばれてます… 」
「口封じの爆薬は仕込まれてるか?」
「た、たぶん、そういうのはないはず… 」
「チップ外すぞ、我慢しろ」
これが爆薬代わりだろう、窓の外へ放り投げると、爆発音が聞こえた。マンティスはピクピクと体を痙攣させ、風前の灯だ。
「治療薬です。隊長、本格治療までの繋ぎにしかなりませんが」
「ああ、分かってる。まだ死なせるわけにはいかない、聞くことが山ほどある」
負傷箇所へ治療薬を打ち込む。痙攣が収まり、呼吸が安定して来た。
「良し、コイツを直ぐに医療室へ連れて行くぞ」
「「「了解」」」
私たちは証拠品とマンティスを車へ運び、赤坂たちと合流した。
「坂井の姿は見当たらぬ。お主らはどうだ?」
「ボディメカニックの刺客を捕らえた。今から治療に向かう」
現状報告をし終え、医療室へ向かう。坂井の状態は大方把握した。苛烈な争いになりそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます