レトロマニア

 午前7時、捜索部隊は会議室へと集まった。人数は私を含め30人、赤坂、ヘンリー、メアリーはメールを見て参加したようだ。まともに働いてくれれば良いが。


 坂井の捜索は、奴の事務所、事件現場、周辺の20番地に分けて行われることとなった。当然、暴動が発生すれば、そちらが優先だ。短い時間を有効に、活用しなければ。3班に別れ、捜索を開始する。 


 私と赤坂は事務所、メアリーは事件現場、ヘンリーは20番地の捜索をすることとなる。捜索時間は7:30〜12:00 で一度終了だ。その後に各班ごとの捜索状況を報告し合う。


 私の指揮する1班には、赤坂の他に警備隊のエリートである"グルカ"から派遣された3名、残りの5名は情報課の新米が派遣されている。いい人材を分け与えて貰えたようだ。キースが手を回してくれたのだろう。


 「隊長、到着しました。随分と小さい事務所のようですが、一気に全員で捜索しますか?」


 「いや、グルカの君たちは私と事務所へ、赤坂と新米共は事務所の裏口などを調べていてくれ」


 「え〜例の警官殺しの事務所ですよ? いざという時にこんなお爺ちゃん1人であたしらを守れるんですかぁ?」


 「静かにしろ、早く捜索に移るぞ。赤坂は見た目より素早く動く、遅れるなよ」


 赤坂たちと別れ、事務所内へ潜入する。グルカの構える特殊破裂弾射出機のライトが床を照らす。1階、2階、3階、見た目より大きく思えるな。


 「隊長、ここが最上階です。中は随分と荒らされていますね、散らばった武器は旧式だがよく手入れされている。見ろ、β、2050年製の小型ミサイルだ」


 「今ではプレミアだからな、砂時計のシンボルはトラッキン社の物だ。追尾型ミサイル専門の会社だったんだが、10年持たず潰れた。残念だ」


 追尾型ミサイルは、坂井が使用していたものと同じだ。流通ルートを絞るか。 


 「レトロマニアか? まだまだ出て来るぞ、レールガンの威力減衰型、これまた珍しい、義手にも仕込める便利な奴だ。ん? これはワープ戦争の時に支給された奴だな。ご老人だ」


 「ワープ戦争経験者か、隊長も覚えてますよね?」


 「勿論だ。坂井の軍在籍記録は残っていないが、調べなくてはいけなくなったな」


 「あの戦争は激しかった。ワープを使うオーロラ国の奴らが悪魔に見えたさ、今でもワープを見ると体が震えちまう」


 坂井が使用していた机を調べる。中には客の名簿が1枚、入っていた。


 「こいつはボディメカニックの奴だな、目立つ手術痕だ」


 いい情報が手に入った。名簿をファイルに入れ保存する。


 「コイツはひでぇ、見てください、隊長」


 αが指さした床には、大量の薬物。錯乱していたのか? 押収しておこう。


 床に手を伸ばした瞬間だった。部屋に光が溢れ、ワープゲートが出現した。中からは能面を付けた武者が3人、緊急事態だ。


 「おいおい… よりによってワープかよ、ついてないな」


 αがそう言いながら、β、γにフォーメーションの指示を出す。私もレーザーガンを構える。戦闘開始の合図のように、銃声が響いた。  

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