スプラッシュ!

スウェーレシティ24番地、深夜2時に奇妙な男が出没する。この噂は24番地に住む全員が知っている。だから、夜に外出する者は居ない。


 最初の目撃証言は10年前だった。犠牲者は近所の酔っ払いのおじさんで、遺体には鋸で切り裂かれたような傷が残っていたそうだ。今、その男が私の前にいる。


 こんな遅くに帰るつもりはなかった。いつも通り学校からそのまま帰るつもりだった。ただ魔が刺してしまったんだ。どんな奴なんだろうって。


 「こんばんは、良い… 骨格をしているね? バランスが良い… 程よい脂肪… 筋肉… どんな硬さだ? 気になるね、君も知りたいだろ?」


 鋸を頭にめり込ませた男は私に尋ねる。


 「良いね… 恐れが良い… 顔も整ってる… いや、整えているのか? 女性の解体は久しぶりだな? 緊張するね…」


 声が出ない、想像以上だ。男が鋸を2本、着ているロングコートから取り出す。男の右手が、消えた。 私の腕も消えていた。 


 男が左手に持っている鋸を投げようとするのが霞む意識の中見える。男の手が……


 「おい、大丈夫か? 大丈夫だったら良いんだがな」


 「えっ? あっ、はい! あの…私の腕知りません?」


 「待ってろ、こいつを殺してから探してやる」


 全身から蒸気を出しているサイボーグが突然、現れた。空から? まさか。


 『初仕事だ、ユー! 戦闘プログラム起動! AIナビゲーションがユーの力になるであろう!』


 「目がチカチカするな… これがナビか?」


 『Yes! 敵の軌道を予測し、防御方向を示してくれるのだ!』


 鋸男が会話中に接近し、左手の鋸を目で追えない程の速度で投げた。サイボーグがそれを難なく掴み取る。


 「止めた… 良いな… 知りたいな、君の硬さを… 切れるかな? 私に」


 「無理だな、お前じゃ、自分の硬さを知れるいい機会じゃないか、かかってこい変態野郎」


 2人は同時に構え、駆け出した。

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