第16話
放課後
俺と燿は急いで図書室に向かった。
本来なら俺一人で行こうとしていたのだが、燿が「どうせなら俺も行くぞ!」と言って聞かなかったので一緒に行く事にした。
図書室に到着するとすでに角田さんがいたので俺は謝った。
「遅れてごめんね角田さん」
「いいえ鏑木君。私も今来た所なのでお気になさらず。それより、そちらの方は?」
「ああ、コイツは俺の唯一の親友の坂本燿だよ」
「どうも初めまして、坂本燿です」
燿はいつもとは違い丁寧な仕草で挨拶をする。
「初めまして坂本さん。ご存知かと思いますが私は角田亜希と申します」
燿と角田さんはお互いに会釈しあう。
一通り挨拶が済んだので早速本題に移る。
「それで角田さん、調べて分かった情報と言うのはどんな事なんですか?」
「はい、その事なんですが、鏑木君に頼まれていたドナーの情報については残念ながら手に入れることは出来ませんでした」
「そ、そうですか・・・まぁ仕方ないですよね、もう5年も経っていますし」
「ですが、当時鏑木君の担当医をしていた方から色々と教えてもらう事が出来ました」
「本当ですか!」
「ええ、それで分かった事なんですが、まずドナーとなった方の名前は吉川広樹さん、当時14歳の中学生です」
「凄い!名前が分かったんですか?」
「はい、ですが残念ながらご家族がどちらにいらっしゃるかについては分からず・・」
「それだけ分かれば充分ですよ!ありがとう角田さん!本当にありがとう」
「いえ、こちらこそお力になれて良かったです!それに今度一緒に買い物に行く約束もありますから」
「もちろんですよ!」
「うふふ、楽しみです」
「あの〜、2人だけで世界を作らないで貰えませんか?一応俺もいるんだけど・・」
「そうだった!悪い燿、でもこれで燿に貰った資料から調べられるぞ!」
「そうだな、一丁やるか!」
「わ、私もお手伝いしますね」
「頼む2人とも」
こうして、俺たち3人は燿の持ってきた資料を調べる。
調べ始めて30分程経った頃、突然角田さんが声をあげた。
「ありました!お二人とも見つけましたよ!」
俺と燿は角田さんの所にいき、資料を見る。
すると、そこには先程名前が判明した吉川広樹の名が書いてあった。
「えーと、日付は俺が手術をした前の日の夕方、場所は隣町の集合住宅のそばにある公園の前の道で、トラックとの事故か・・・」
(やべー、俺の見た記憶と殆ど合ってるぞ!)
俺が考えていると燿が
「でもこれ、被害者がもう1人いるみたいだぞ!」
「え?」
「あれ?本当ですね。ここに書いてあります。
えーと、小学6年生の女の子とだけ書いてありますね。当時の事件資料によると、この女の子を庇って轢かれてしまったと書いてありますね」
「そのようだな、それにどうやらこの女の子は被害者の妹のようだ」
「っ!!」
俺は驚いた。やっぱり記憶に出てくるあの女の子は持ち主の妹なのだと分かったからだ。
「それでは、その妹さんを探せばよろしいと言う事ですね」
「うん、角田さんの言う通りなんだけど、どうやらこの家族は、両親が離婚してて、現在父親は行方不明のようですね。
となると、母親と妹はえーと・・・えっ?」
「どうしたんだ燿?」
俺は燿の持っていた資料を見ると、そこにはとんでもない事が書いてあった。
「どうされたんですか?お2人して黙ってしまって?」
「なぁ角田さん」
「なんですか鏑木君?」
「角田さんって、神様を信じるか?」
「えっ?!いきなりどうしたんですか?」
「この妹の名前なんだけどな、離婚して苗字が変わったようで、その苗字が桜井なんだよ」
「それって、もしかして」
「そうだ、この子の名前は美波。つまり、うちの高校にいるあの桜井美波と同じ名前なんだよ!」
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