第14話


目の覚めた俺は、何故かソファーにいた。


「あれ?」


「やっと目が覚めたのね。全く昨日といい、何やってるのよって!どうしたのその酷い顔!」


「えっ?!俺、そんな酷い顔してる?」


「ちょっと鏡見て来なさい!」


母さんに言われて俺は鏡を見る。

すると・・・そこには、真っ青な顔をした俺が写っていた。


「あはは、ひでぇ顔だな、ちきしょう!」


俺は写っている顔を見て、笑っていた。

いやむしろ、笑うしか出来なかったと言う他ないだろう。


そんな俺を見て、誰もが冷酷だとか、ひとでなし、なんて思うだろう。だけどな・・・


俺だって、そんな事分かってるんだよ!


だけどな、俺だってどうすればいいか分かんないんだよ!


これは過去の記憶だ。今更どうする事は出来ないし、ましてや他人の家庭の事情に首を突っ込む訳にはいかない。


けどなぁ・・・俺は、俺はこの記憶を見せてくれた心臓の持ち主の無念を、やり残した事をせめて俺が継いでやりたいと思ったし、きっと持ち主もその為に俺に記憶を見せてくれたんだと思う。


だから俺は必ず見つけ出す。

心臓の持ち主も・・・そして、持ち主が大切にしていたあの女の子の事も!

どんな手を使ってでも必ず・・・・



その後、俺は顔を洗ってからとある人物に電話をかけた。


プルルルル、ガチャ!


『はい』


「もしもし角田さん。鏑木ですが、夜遅くにごめんね。ちょっとお願いしたい事があるんだけど・・」


『なんですか?私で良かったらなんでも言ってください』


「ありがとう角田さん!」


『いえいえ、鏑木君にはいつもお世話になっていますから気にしないで下さい!』


「じゃお言葉に甘えて、実は調べて欲しい人がいるんだけど・・・・」


俺はそれから角田さんに、記憶のこと以外の事を話した。

そして・・・


『分かりました。父にお願いして、調べてもらいます。大船に乗ったつもりで待っていて下さいね』


「本当にありがとう角田さん!この仮は必ず返すから!」


『うふふ、それなら今度買い物に行くのに付き合って貰いましょうかね』


「うん、分かった!俺で良かったら何処にでも付き合うよ!」


『えっ?!はっ、はっい!よろしくお願いします』


「こちらこそよろしくね、角田さん」


『そ、それじゃあまた明日学校で』


「うん、また学校で」


ガチャ!


俺は通話を終了し、今度は別の人物に電話をかける。


プルルル


『おっ!真守か、珍しいなお前から電話なんて!何かあったのか?』


「燿か、ああ実はお前に頼みがあるんだ!」


『なんだ?なんでも言ってくれ!』


「実は5年前に起こった交通事故について調べてもらいたいんだ」


『5年前って言うともしかしてお前が心臓移植した年だよな。てっことは、もしかしてお前の心臓の持ち主について関係してるのか?』


「正直、分からない。なんせ当時俺は血眼になって関係ありそうな事故や事件を調べてみたがそれらしき情報は何ひとつ見つけられなかったから」


『なるほどね、それで俺の親父の出番って訳な!』


「ああ、もちろん無理なら俺の方でもう調べるけど」


『いや、それは問題無いだろう。俺が頼めば、親父なら絶対に調べくれるだろうが・・・・なぁ真守、なんでいきなり俺に頼って来たんだ?中学の時だって俺に頼る事が出来たはずだよな?』


「そうだな、たしかに中学の時もお前に頼る事も出来たけど、あの時は自分の力で調べたかったし、周りに迷惑をかけたくなかったってのもあるな」


『それなら、なんでいきなり頼って来たんだ?』


「多分、信じてくれないかもしれ無いけどいいか?」


『何言ってんだよ!お前と俺の仲だろ』


「分かってたよ燿。実はな・・・」


こうして俺は、燿に記憶の事を話した。



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