第13話


前回、俺の腰抜け・・・もとい慎重具合を知った外野の諸君、刮目してみよ!

俺は今、新しい記憶を見るために家の階段から落ちようとしている。


・・・が、やっべ、めっちゃ怖い!

いくら大した高さではなくても、自分から階段に落ちるのは気が引ける。


しかし、現時点で取れる手段はこれしか思い浮かばない。

流石に、前みたいにボールにぶつかって気絶するなんて奇跡がもう一度起こる事なんてまずないだろう・・・あっ!それを言ったら階段から落ちたとしても都合良く頭を打つ訳ではないし、記憶を見れるかどうかも分からない・・・


それでも可能性があるなら俺は試して見たくなる。実際、病気の時は何度も医者に勧められた薬で、体調を回復した事がある。


よし、心の準備はできた。


やるぞ!ハレルヤチャンス!


ゴロゴロドン!ガタッン!


予定通り、俺は綺麗に階段から転がり落ち頭を強打したのだが、意識がある。


「嘘、だろ。何でだよ」


本当なら階段から落ち、頭を強打したのに意識がある事に感謝しなければならない筈なのに、俺は神を恨んだ。


落胆した俺は立ち上がろうと側にあった柱に手をかけ、体を支える。


すると、先ほどまで緊張していた俺は通常よりも手汗をかいていた俺の手は漫画のようにツルッと滑り、体重をかけていた俺は盛大にに転んだ。


ガツン!


さらに転んだ拍子に頭を強く打った。


ゴン!


その衝撃で、俺はその場に倒れた。


そして、謎の浮遊感と気怠さが襲い、そのまま目を閉じた。


結果的に、当初の目的は成功したが漫画のような展開になってしまい、俺はなんともやるせない気持ちに陥ったのは言うまでも無い。




目を閉じてから、体感で約3分程経ってから俺は目を開けた。

すると目の前にはいつもの女の子、ではなくこの記憶の持ち主の母親と父親だった。


どうやら今回は家の中での記憶の様で、俺と両親はテーブルで何かの話し合いをしている。


そして1番驚いたのは、テーブルの上に離婚届が置いてあることだった!

どうやらこの記憶は、両親の離婚に関する記憶の様だ。

何を言ってるかは知らないが、だんだん剣幕になっていく2人の顔に恐らく、話し合いが上手くいって無いことが分かる。


そして、突然母親が俺に手を差し伸べできている。

俺は母親の顔を見て驚愕した。

その顔は酷くやつれていて、まるで俺に縋り付いている様だった。

しばらく時間がたち、俺は母親の手を掴まず何かを話した様だ。


そして俺は理解した。

この話し合いは心臓の持ち主と女の子の親権についての話し合いの場の様で、どうやら持ち主は母親ではなく、父親の方を選んだ様だ。


(そう言えば、前見た記憶でも俺は父親と一緒で、女の子は母親と一緒に行ってしまったんだった。でもなんで、持ち主は母親の方へ行かなかったんだろう・・・)


俺はそんな事を考えていると、いきなり目の前が真っ暗になる。


そして、また新しい記憶になる。


・・・・・・え!


俺は驚愕した。と言うよりも知りたくなかったと言った方が良かっただろうか・・・


新しい記憶は、それほどまでに衝撃的だった。


そこには、リビングで母親に暴力を振るっている父親とそれをドアの隙間で見ている女の子と俺がいる記憶だ!


正直、胸糞が悪かった。あんなに仲の良さそうだった2人が、こんな風になるなんて思いもしなかったからだ。


しばらく見ていると、どうやら耐えきれなくなった持ち主が、2人の間に割って入り、父親の事を怒鳴っているようだが、残念ながら聞き取れない。


そして、怒鳴り合いの末、父親が俺を殴って来た。俺は殴られた拍子に倒れると女の子が駆け寄ってくる。

女の子は俺の前に立ち、両手を広げて何かを叫んでいる。

すると父親は、女の子の方に近寄りその頬を叩いた。

倒れて泣いている女の子に俺は優しく頭を撫でた後、父親に向かっていき、その顔を殴りつける。


そして、倒れた父親に向かって何かを叫んだ後、目の前が真っ暗になり、そのまま目が覚めた。










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