第12話

放課後


俺は図書委員の当番で図書室に来ている。

この学校の図書委員の仕事は本の貸し借りの手続きと、本の整理整頓と言った他と特に変わりのない簡単な仕事だ。

その上、放課後は殆ど生徒が来る事は無く、基本は暇で正直1人いれば事足りるのだが、図書委員は基本2人1組で仕事に当たる。


俺はいつも通り今日返却された本を元の位置に戻し終え、カウンターの方へ戻る。

すると・・・


「鏑木君お疲れ様。ごめんね、私が役立たずで・・・」


と謝って来るのは、同じ図書委員で隣のクラスの角田亜希だ。

角田さんは少し茶色がかった黒髪を背中まで伸ばした女子で、眼鏡をかけている。


あまり目立たないが、眼鏡を外すと桜井並みの美人になるが、本人は目立ちたくないため普段は眼鏡をかけている。


なら何故、知っているのかって?よく突っ込んでくれた外野!


そう、あれは俺と角田さんが図書委員で初めて仕事をした時の事、高い所の本を戻そうとした角田さんが台から足を踏み外し落ちそうになったので俺がなんとかキャッチした時に体勢を崩して角田さんを押し倒す形になってしまい、その時に眼鏡が外れてしまったのだ。


なに?そんなラノベみたいな展開あるかよって!


それがあるんだよ!分かったか外野!


まぁ、そんな訳で俺は角田さんの秘密の共有者と言うなんともラノベ展開の関係になってしまったのだ。


因みにその一件から基本的に俺が本の整理をして、角田さんにはカウンターで仕事をして貰っているのだが、いつも俺ばかりに負担がかかっていると言って謝ってくるので正直凄く困るが、辞める気配が無いので俺はいつも


「そんな事無いよ角田さん。角田さんにはこうしてカウンターを見て貰っているしね」


と言う。


「そう言って貰えると嬉しいわ。ありがとうね」


「まぁ、適材適所ってやつだよ」


仕事も落ち着き、もうじき閉館時間になる頃角田さんがいきなり話しかけて来た。


「あの、鏑木君に聞きたい事があるんだけどいいかな?」


「ん?なにかな角田さん。俺に答えられる事なら大丈夫だけど」


「あの、その、鏑木君は桜井さんとは仲がいいの?」


「はっ?俺が桜井と、なんで?」


「だって、いつも会うと必ずって言うくらい喋ってるから。それにクラスの女子とかも偶に噂してるよ」


「マジでか、角田さんが何でこんな事を聞いて来たかは知らないけど安心して欲しい。

俺と桜井は全くと言っていいほど仲が良く無い!それどころか、出会う度に口喧嘩は当たり前、この前なんかお互い罵り合っていたくらいだ!だから俺と桜井はそんな関係じゃないよ」


「あっ!そうなんですね、良かったです。もし鏑木君と桜井さんが付き合っていたら私どうしようかと心配してたんです」


「さっきも言ったけど、それはあり得ないから大丈夫だよ角田さん」


「うん、分かった。答えてくれてありがとう。あっ!もう閉館の時間ですね、帰りましょうか鏑木君」


「ああ、そうだね角田さん」


俺と角田さんは図書室の鍵をかけ、図書室管理の先生に鍵を渡すと2人で校門まで向かう。


「それじゃあ角田さん、俺は電車だからここで」


角田さんは駅とは反対側に家があるので、いつも校門で別れる。


「はい、お疲れ様でした鏑木君。また明日」


俺は角田さんが見えなくなると駅の方へと歩いていく。


あっ!もしかして角田さんが俺に気があるんじゃないと思ったそこの外野!


君たちの予想は、九分九厘当たっていると思うよ!なんせ俺もそう思ってるからな!


でも、流石にそれを聞くのはきつい!


もしこれで振られでもしたらおそらく某青春ラブコメの主人公であるヒッキーよろしく、次の日にはクラス中にその事が広がり、俺は瞬く間に学校の笑い物になる事だろう。

もしそうなったら俺も燿のように、女性不審になる事間違いなしだな!


だから俺からは特になにも言うつもりは無い!


なに?この腰抜け腑抜けチキン野郎だと!


うるせーぞ!外野!!






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