間話
その日は突然訪れた。
朝、読書をしているとこちらに向かって複数の足音が聞こえてくる。
「あれ?今日の検診はまだのはずなんだけどどうしたんだろ?」
と考えていると、ドアがノックされ主治医の先生と看護師さん達が入ってきた。
後ろには母さんと父さんもいる。
だんだん不安になっていった俺は主治医の先生に質問をした。
「あの、もしかして俺に何かあったんですか?」
すると先生は笑いながら答えてくれた。
「逆だよ、おめでとう!君に適合する心臓が見つかったんだ!」
「えっ?!」
「これからすぐ移植手術の準備を始めるからそのつもりでね」
「本当、本当何ですか先生!」
「ああ、もちろんさ」
「ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとう・・・ございます」
俺は感動のあまり涙を流しながら先生の手を掴む。
それから先は忙しかった。
まず、検査と問診をした後、手術の説明を聞いた。
そして、心臓の移植手術が始まった。
後から聞いた話では、手術はかなり難航したが執刀した先生(主治医の先生)が心臓外科では権威の先生だったらしく無事に移植が終わった。
手術が終わり、目が覚めると俺の側には両親がいてくれていた。
母さんは、起きた俺を見て涙を流し、父さんは喜んでいた。
ナースコールでやってきた先生と看護師さんがバイタルや健康状態を確認している間に、俺は気になっていた事を先生に聞いた。
「すみません、俺のこの心臓の持ち主はどなたなんですか?お礼がしたいんです」
すると先生は困った表情をしながら答えてくれた。
「ごめんね、ドナーについては患者さんやご家族には伝えられない決まりなんだよ」
「そうなんですか。・・・ならせめてどんな人だったのか、教えてもらえませんか?」
「詳しくは話せないけど、君の2つ歳上の男の子だよ」
「あっ、ありがとうございます」
「ごめんね、これ以上教えられなくて」
「いえ、お願いを聞いて頂きありがとうございました」
その後、術後の合併症も無く俺は元の病室に戻る事ができた。
手術から1ヶ月がたち、必死のリハビリでようやく日常生活が送れるくらいの筋肉が付き、俺は病院内を歩けるようになったので、約3年ぶりに俺は外に出た。
俺は感動した!
久しぶりの外に出た事よりも、自分の足でどこかへ行ける事にだ!
俺はようやく、自由を手にする事ができた。
《人生》
これも、俺に新しい心臓をくれた、名前も顔も知らない2つ歳上の男の人のお陰だ!
俺は生涯、その人の事を忘れないだろう。
そして・・・
さらに1ヶ月がたち、俺は約6年に及ぶ闘病生活を乗り越えこの日、退院した。
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