間話


過去編です。



俺は7歳の頃から12歳までの間ずっと入院していた。


生まれた時から心臓に疾患があり生死の境目を彷徨った事も一度や二度ではないらしい。

それでも、7歳になるまでは薬のお陰である程度の日常生活を送れていた。

不自由な事も多く、色々と制限はあったがそれでも毎日が楽しかった。


だが、楽しい時間は長くは続かなかった。

小学校に上り、友達をたくさん作るぞと意気込んでいると、突然胸が苦しくなり倒れた俺はそのまま病院に搬送された。


病院に搬送された俺は直ぐに手術が行われ、なんとか一命を取りとめたが、医者からはもう俺の心臓は限界に近いと言われた。


俺の病気は拡張型心筋症と言って、外科的な治療は意味を持たず、唯一心臓移植のみ助かる事ができる病気だ!


俺は直ぐに入院する事になった。

容態が悪化した場合、すぐに対応できるようにする為だ。

それ程までに俺の病状は悪く、毎日たくさんの薬を飲んだ。


闘病生活は思っていたよりずっと辛かった。


入院してから3年がたち未だに俺の心臓に適合するドナーは現れない状況だ。

もしかするとこのまま、ずっと現れる事は無いのかもしれないと何度も思ってしまうが、俺は必死に考えないようにしていた。


こう言ったマイナス思考はだめだ!と思ったからだ。


俺は気を紛らわす為に、1人しかいない病室でずっと窓の外を眺めていた。

窓からは病院の外で遊んでいる同い年くらいの子たちが見える。


「いいな〜」


つい思っていた言葉が出てしまった。

俺は自分の感情をなるべく押し殺してきた。


もし、言葉に出して仕舞えばきっと俺はこの生活に耐えられなくなってしまうと思ったからだ。


だが、ついに言葉に出てしまった。

そして今まで押し殺してきた感情が溢れていき俺は泣いてしまった。


「早く治れ!早く治れ!早く治れ!」


と何度、思った事だろう・・・


けれど俺の心臓に適合するドナーが現れる事はなくこのまま死んでしまうんじゃないかと考えるともう、生きている気力が無くなっていく。


そして・・・


辛い体を必死に動かして、俺は屋上へと向かった。


幸い屋上に人の気配は無く、おまけに柵はあっても落下防止用のフェンスは無かった。


俺は柵の方へと歩いて行き、柵に手をかけたその時、後ろから声をかけられた。


「ねぇ君、何でこんな所にいるの?もし良かったら僕と遊ぼうよ!」


これが、俺と坂本燿とのファーストコンタクトだった。





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