芽依の選択
記念すべき100話です!!
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芽依ちゃんを救出してからおよそ10分が経った頃、青山さんが手配してくれた警察や救急隊の人達が到着した。
俺は芽依ちゃんと知らない女性を救急隊の人達に預けた後、一箇所に集めておいた犯人達を警察官達に引き渡した。ただ、学生服を着た男が殆ど虫の息だったので、警察の人も流石に事情を聞くと言って俺も一緒に警察署へ向かう事になったのだが、その前にナイフに刺された腕を手当てをしてもらった結果、救急隊の人が言うには後2センチ深く刺さっていたら出血多量で死んでいたらしいとの事だ。本当に運がよかった!そう言えば、元ネタの大尉もそのあと死んじゃったんだったわ!……あぶねー!!
その後、俺が取り調べられる事を知った芽依ちゃんはずっと抗議をしていたが、こればかりは仕方ないと言う事で諦めて貰った。
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俺が警察署に行くと、なぜか日和や東子ちゃん達が勢揃いしていた。俺が理由を聞くと東子ちゃん達が調べた結果、どうやら俺が半殺しにした男が今回の誘拐事件主犯らしく、さらにそいつは今回だけでは無くて今までも相当な数の悪事や犯罪にてを染めていたみたいようで、東子ちゃんや日和達はその事を警察に伝える為に来ていたそうだ。
その中には芽依ちゃんと同じように誘拐してから集団で強姦をした後、撮影したビデオを使って恐喝……などの聞いているだけでも胸糞悪い事もしていたようで、話を聞いて俺は「殺しておけば良かった」と、一瞬後悔したほどだ。まぁ、もし芽依ちゃんが同じ目にあっていたら間違い無く犯人達を皆殺しにしていただろうけど。
ひと通りの話を聞き終わった俺は、何故か上機嫌の青山さんに連れられ始めて取り調べ室に入った。どうしてだか理由を聞くと、どうやら俺がぶっ飛ばした奴等が青山さんの追っている半グレ集団のメンバーらしく、今回の件でようやく一斉検挙に踏み込めると言って感謝された。その後、取り調べが始まったのだが、ドラマの様な張り詰めた感じでは無く、緩い感じの中での取り調べとなったのでなんだか拍子抜けだった。
途中で、「カツ丼下さい」と言ったら青山さんが後で奢ってやると冗談を言いながら笑っていた。
結局、聞かれた事も俺が芽依ちゃんを助けに行った経緯や工場内での出来事などと言ったありきたりな事だったので1時間程度の短い時間で終わった。
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時間は少し遡り、京が取り調べを受けていた頃、警察署で保護されている芽依の元に日和と東子、そして真央がやって来た。
驚いた芽依は三人に質問する。
「三人とも何で
すると、芽依の無事な姿を見た真央と日和が瞳に涙を溜めながら芽依に抱きつく。
「芽依!!」
「芽依ちゃん!!」
ドス!
ガタガタ!
突然、真央と日和の二人に抱きつかれた芽依は慌てふためきながら
「うわー!!ちょっと二人ともいきなりどうしたの??えっ?!何で泣いてるの?」
と聞く。
だが、二人はそんな芽依を無視して泣きながら抱きついている。
芽依が困り果てていると入り口付近で腕を組みながらホッとした表情をしている東子が説明する。
「ごめんね芽依ちゃん。でも二人を許してあげて、二人とも芽依ちゃんが誘拐されて心配だったのよ。特に石見さんは目の前で芽依ちゃんを誘拐されたからずっと悔やんでいたわ」
「そう…ですか…ごめんね真央」
芽依は真央の頭を撫でながら謝る。
すると真央は抱きつくのを止め、服の袖で目を擦りながら涙を拭くと
「謝るのはウチの方だよ芽依!ウチは芽依が誘拐されている時怖くて動けなかった……ううん、寧ろウチも誘拐されるんじゃないかと思って逃げようとしたんだよ。ウチは芽依の幼馴染なのに、最低だよね……」
と言って頭を下げる真央の心情は後悔と慚愧の念でいっぱいだった。たとえここで、芽依が罵詈雑言を言っても、真央はその全てを受け止めようと思っていた。だが、芽依の口から話された言葉はそんな真央の思いとは裏腹に
「そんな事ないよ真央!それよりも私は真央が無事で本当に良かった!京さんに聞いたけど、真央は脅されていたのにも関わらず東子先輩や日和ちゃん達と一緒に私の事を助けようとしてくれてたんだよね。それだけでも私は真央が幼馴染で本当に良かったと思ってるよ!」
と、芽依は微笑みながら真央の手を握ると精一杯の感謝の気持ちを込めて告げる。
「ありがとう。真央!」
すると真央は再び涙を流しながら震えて声で
「う、ウヂも、芽依が無事で、本当に良がった!」
「ほら、そんなに泣かないの真央。顔がぐちゃぐちゃだよ」
「グズ!……ひっ!ひくっ!だ、だってぇー!!」
芽依は泣き続ける真央の頭を撫でながら“よしよし”と言って落ち着かせた。
◆◇◆◇◆◇◆
5分ほどして、泣き疲れた真央は芽依の膝を枕にして眠ってしまった。
「うふふ、石見さんは芽依ちゃんが大好きなのね」
東子は笑みを浮かべながらそう言うと、芽依の膝から真央を退かしてソファに寝かせると
時計を見ながら
「私は警察の人に頼んで、石見さんを家に送って貰らうから少し外すわね」
と言って東子は日和と芽依を一瞥した後、部屋から出て行く。
すると、ずっと黙っていた日和が芽依に対して口を開く。
「石見さんも言っていたけど芽依ちゃんが無事で本当に良かった!もし芽依ちゃんに何かあったらと思うとずっと怖くて……キョー兄から芽依ちゃんを保護したって連絡が来だけど、こうして会えるまで心配してたんだけど、無事で本当に良かった」
と言って自分の手を握る日和に芽依は
「どうして……どうしてそんなに心配してくれたの?わ、私は日和ちゃんの敵だったのに??」
震える声で質問する。
確かに、芽依は日和に対して京を賭けた勝負を提案し、二人の仲は険悪なムードになっていたので芽依がそう思ってしまっても仕方無い事だった。そんな芽依の質問に対して日和は笑みを浮かべ
「そんなの芽依ちゃんが私の親友だからに決まってるじゃん!」
と、まるで「当たり前でしょ」と言いたそうな表情をしながら呟く。
すると芽依は涙を流しながら
「本当に、本当にごめんなさい日和ちゃん!私はずっと日和ちゃんに勝つ事だけしか考えてなくて……それなのに日和ちゃんは、私の事を親友だって思ってくれてたんだね……本当にごめんなさい」
芽依は何度も謝った。
それは、自分が敵だと思っていた日和が芽依を敵対していたとしても親友だと言った事で、どれだけ自分の行動が愚かで幼稚なのかを心に刻み込む為の行為だった。
芽依が謝っていると日和が芽依の顔を真っ直ぐ見つめながら
「もう大丈夫。芽依ちゃんの気持ちは伝わったよ!だからもう大丈夫」
と言って芽依を許す日和。……あれ?何で芽依が謝って日和が許す感じになってるの?
今回の勝負って、確かに芽依から言い出したけど日和も割とノリノリだった様な……さらに言えば、別に芽依が謝る必要も無い気がするんだけど??
はっ!もしかしてこれも日和の作戦??
こうして芽依に謝らせる事で自分の方が上だと無意識に認めさせてマウントを取る為の作戦だったりして……いや、気にしすぎだ多分!
先程の真央の様にあやされて泣き止んだ芽依は、ゆっくり深呼吸をすると日和に
「日和ちゃん。……私、選挙辞めるよ」
と告げる。
「えっ?!」
驚く日和に芽依は再度告げる。
「私じゃ日和ちゃんには勝てないって分かったから、選挙の立候補は辞退する事に決めたよ!」
それは芽依から日和への敗北宣言だった。
影浦が捕まったので、実質日和対芽依の一騎打ちになった選挙戦に芽依は自ら負けを認めたのだ。つまりこの瞬間、新生徒会長は日和に決まったと言う事になる。
その事を理解した日和は
「そう……」
と、小さく呟くと晴れやかな表情をする芽依にゆっくりと近づいて行くのだった。
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補足1
芽依が日和に対して謝罪をしていた事に関しては、日和の作戦では無くて純粋に芽依が自分への罰と日和への謝罪の両方の意味を込めて謝っていました。
その事に気づいていた日和は、例えここで否定したとしても、芽依は自らを自分自身で追い詰めてしまう可能性があったので、日和はわざと“許す”と言ったのだった。
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