特別篇 

i f STORY 第一弾  氷室龍一篇 前編

100話突破記念第一作目は


【もしも京と龍一が同じ大学生だったら!】


                 です!


〜初めに〜

この話はあくまで、あり得たかもしれないもしもの話なので、全く本編とは関係ありませんので気軽に読んで下さい。


それではどうぞお楽しみ下さい。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


寒い冬が終わり段々と暖かくなって来た今日この頃、俺「木村京」は新学期始めての講義を受けに大学へと向かっていた。


すると、いきなり後ろからイケメンが声をかけてくる。


「ヤッホー木村!!元気だったかあー?休みの間は会えなくて寂しかったぞー!!」


と、俺の肩に手を回しながら話すこの男の名は氷室龍一。俺と同じ平和農業大学食品科学科の2年生だ!


「おい氷室!暑苦しいから早く離れてくれ!!全くお前って奴は、どうしてこう騒がしいんだよ!」


俺が肩にかかった腕を退けると氷室を睨みながら応える。

すると氷室が笑いながら


「あはは!木村は相変わらずノリの悪い奴だなぁ」


と言って俺の肩を叩く。

俺は面倒くさそうに


「はいはいそうだね〜」


と言いながら大学へ歩いていくと、氷室が指を指しながら声を上げる。


「それだよそれ!その感じやめた方がいいぞ木村。俺はともかく、他の奴だったら絶対に絡まれるから!」


氷室の忠告を対して俺は


「お前が女遊びを止めたらな」


と言って突っぱねる。

すると氷室は顔を顰めながら


「うげ!お前それ言うか普通?……あのな、言っとくが俺は女遊びなんてしてないぞ!」


「嘘こけ、噂じゃ国際農業科のマドンナと付き合ってるそうじゃねーか!その前は栄養科のアイドルで、たしかその前は食品科のミス平和だろ?マドンナにアイドルにミス平和なんて、随分と贅沢な奴だなぁ〜」


俺が呆れながら言うと氷室は真面目な顔で


「いや、彼女とはこの前別れたぞ!」


「はぁぁぁあああああ!!?お前って奴はどうしてこう長続きしないんだよ……で、今回はどのくらいもったんだ?」


「えーと、……多分半月……いや、10日くらいだった気がする。うーん、忘れたわ!」


「よし氷室!!お前は今すぐこの大学にいる全男子に土下座して謝れ!!さもないと、そのうち誰かに後ろから刺されるぞ!」


「あはは!安心してくれ木村、ちゃんと後腐れないようにしてるから!」


と言って笑う氷室に


「そう言う事じゃ無いんだけどなぁ……」


俺は呆れながらそう呟いた。



俺と氷室はそれからも世間話をしながら大学へと向かう。

今でこそ、そこそこ仲のいい俺と氷室だが入学当初は最悪な関係だった。



およそ1年前


季節は春。

桜が舞い散りながら心地よい風が吹き抜ける季節であり、終わりと始まりの季節。


そんな春真っ只中、現在ここ平和農業大学では今年入学したばかりの新入生達が初めてのキャンパスライフを楽しんでいる。


だが、そんな中で一人だけ目元の辺りまで髪で隠し、印象に残らない様なぱっとしない服とズボンを着て全く似合ってない丸眼鏡をかけた絵に描いたような陰キャこと木村京は、目立たない様に騒いでいるグループを避けながらそそくさと大学内を歩いていた。


途中、喋りながら歩く数人の陽キャグループに対して京は心の中で


(はぁ、何もこんな人通りで喋ってないで別の場所で話せば良いのに、何でわざわざ邪魔になる様に歩いてるんだろコイツら?)


文句を言う。けれど京は先程思った事を口にはせずにただ彼らを睨んだ後、別の道から講義室のある場所へと向かった。

ここで彼らに一発ドカンと言わせる事が出来たならば良かったのだが、残念ながら京にはそんな気は更々無かった。

何故ならば、京にとって彼らは関わる必要の無い人間であり、関わっても自分に不利益しか与えない人間だと理解しているからだ。

その為京は、入学してから1週間経っても友人どころか、話し相手の一人もいない。関わったのと言えば、入学初日に絡んできた先輩数人を倒した後に声をかけてきためっちゃくちゃ美人な講師の一人くらいだ。


ただその講師ってのが超が3つ付くくらい面倒くさい人で、会っていきなり道場に誘われ……いや、あれは連行されたと言った方がいいな!なにせ断ったのにも関わらず強引に連れて行かれたのだから。しかも最初に連れて行かれたのは大学内にある道場で、何故か道着に着替えさせられた後すぐに試合をする事になったのだからそりゃあ無いよ!と思ったね。結局その講師にボコボコにされた後、俺の手を握りながら「合格!」って言われた。


さらにそこから数日の間、何度か大学の道場で手合わせをしてから講師の実家である道場に連れていかれ、講師の妹と試合をしたり人生相談に乗ったりした。


俺は便利屋か何かか?


まぁそれは置いておくとして、静かな大学生活を送ろうとしている京には現在、二つの面倒事を抱えている。


一つ目は……やたらと絡んで来る同級生や先輩が多い!!どうやら陰キャの格好をしているせいで周囲から舐められているようだ。ただこの件に関しては自分から陰キャの格好をしているので特に気にはしていないし、どうでも良い。


だけど問題は二つ目だ!!

この二つ目関しては本当にとばっちりだと思う。なんせ二つ目は……俺をボコボコにした美人講師の「葵南」がやたらと俺に話しかけて来るせいで葵さんに気がある学生達が俺の事を凄い睨んでくる。まぁ、いわゆる嫉妬ってやつだな。正直これがすげー面倒くさく、事あるごとに俺に対して突っかかって来るのだ!その中でも特に面倒なのが、俺と同じ食品科学科の1年の中でも、いや、大学でも一番のイケメンと言われている「氷室龍一」と言う男だ!


氷室は短めの黒髪に清潭な顔立ち、そして溢れ出すイケメンオーラとまさに絵に描いたような漫画の主人公キャラ見たいな外見をしているのだが、そのくせ中身は最悪で常に誰かしらの女子を隣に侍らせながら数人の仲間金魚のふんと共に行動している。気に入らない事があれば、直ぐに脅しをかけたり暴力を振るったりとまさにクズ野郎だ。


そんなクズ野郎はどうやら葵さんにご執心の様で、よく講義が終わると食事に誘ったり、遊びに誘ったりと声をかけているのだが、葵さんは全て悉く断っている。それでも諦めない氷室に俺は少しだけ尊敬したが直ぐに消えた。何故なら氷室は自分が断られている理由を俺が葵さんといるからだと決め付け、俺にやたらと絡んでくるのだ!


今現在も、俺が講義を終えて帰ろうとしたら突然氷室が俺の行手を塞いでいきなり胸ぐらを掴みながら


「おい木村!お前ちょっと葵さんに目をかけてもらってるからって勘違いするなよ!葵さんがお前見たいな陰キャに話しかけるのいつも一人でいて可哀想だと思っているだけだからな!」


と、検討はずれな事を述べる氷室に対して俺はわざとビビりながら


「もちろんだよ氷室君。それくらい俺だって理解しているから安心してくれよ。俺見たいな陰キャが葵さんみたいな美人と付き合えるなんて微塵も思って無いからさ」


と言いながら作り笑いを浮かべる。

すると氷室は口元を緩めながら


「まぁそうだよな!よく自分の立場を分かってるじゃないか。ふん、これに懲りたらもうもう葵さんに近づくのは止めろ、いいな!」


「うん。近づかないよ」


「よし分かればいい。お前らいくぞ!」


俺がそう言うと、氷室は納得したのか手を離してどこかへ行ってしまった。


俺は乱れた服を整えると次の講義へと向かった。正直、一発くらい殴っても良いかなぁと思う所も無くは無いのだが、あの手のタイプは何を仕出かすか分からないので取り敢えず従順な振りをする方が良かったりする。もちろん向こうが攻撃してくれば対処するが、こちらから何かをするつもりは無いのでしばらくは様子見だ。

幸い、氷室は俺が葵家の道場に通っている事を知らないし、話すつもりも無いので大学で気をつけていれば問題はないだろう。と、そんな事を考えていたらその4日後の昼頃、俺は人気の無い研究棟で氷室を含む五人の男達に囲まれた。


「ど、どうしたの氷室君?早くしないと講義が始まっちゃうよ?」


俺はわざとビビりながら話すと、氷室は額に青筋を浮かべながら


「そんな事はどうだって良いんだよ!!木村テメー、俺の忠告を無視して葵さんに付き纏ってるらしいじゃねーか?!」


と、高圧的な態度で話す氷室に俺は弁明する


「待って氷室君!俺は特に葵さんに付き纏ってなんか居ないよ!!本当だよ!!」


すると氷室は俺の胸ぐらを掴みながら


「それじゃあ何でテメーは葵さんと一緒の車に乗ってたんだか説明してくれよ木村!!」


(げ!?何でこいつ知ってやがる?!)


俺は内心驚いた。

実は昨日、俺が大学から帰る途中に偶然葵さんが通りかかり、道場に行くついでに送ってもらったのだ!


(まさかよりによってこいつに見られて……いや、恐らく他の奴が話したんだろうなぁ。全くどこの誰だか知らないけど勘弁して欲しいよ本当)


俺が内心そう思っていると、凄い剣幕の氷室が叫ぶ。


「おい!どうなんだ木村?!なんとか言ってみろよクソ陰キャが!!」


徐々に口が悪くなる氷室に対して俺は腹を括る事にした。


幾らこの手の奴らに慣れている俺でも、これ以上は流石に面倒くさい。

俺は氷室を睨みながら


「いい加減にしろよ氷室」


小声で呟く。

すると氷室は驚いた表情で


「はぁ?お前今なんて言った?」


と聞き返してきたので、俺は氷室の腕を掴むとそのまま関節を決めながら叫ぶ。


「いい加減にしろって言ったんだよチャラ男が!!」


すると氷室は苦痛の表情を浮かべながら


「痛てぇぇぇぇぇ!!止めろ!止めてくれ!」


「良いよ〜」


ボキ!!


と懇願する氷室の関節を綺麗に外した。


「あ"あ"あ"あ"あ"ああぁぁぁ!!俺の腕が、俺の腕がーーー!!」


外れた腕を触りながらのたうち回る氷室を他所に、俺は囲んでいる男達を睨みながら冷たい声で告げる。


「で、お前らはどうする?このまま俺の前から消えるなら今回だけは見逃してやる……だがもし、俺の邪魔をするつもりなら……容赦なく折るぞ」


ゾク!!


俺が指をポキポキと鳴らしながら告げると男達は震えながら


「じょ、冗談じゃねぇ!こんな化け物の相手なんか出来っかよ!」


「お、俺もだ!」


「へっ!いいきみだぜ!いつも偉そうにしてるからだよ!」


と、三流以下の捨て台詞を残して逃げ去っていった。


「お、おい待てお前ら!俺を置いて行くのかよ!待てよ、待ってくれよ!」


(うわ〜……こう言うのって漫画とかだけかと思ったけどマジであるんだなぁ〜。氷室を見てるとなんか可哀想に思えてきたわ)


仲間金魚のフンが逃げていったことに嘆く氷室に対して俺は憐憫な眼差しを向けながら質問する。


「さて氷室、取り敢えずちゃんと詫びを入れれば今回は許してやるぞ!ついでにその腕も治してやる」


すると氷室は黄猿並みの速さで見事な土下座をしながら謝罪してきた。


「俺が悪かった!許してくれ木村!」


俺は土下座をする氷室に対して呆れながら


「早!!……まぁいいや、オーケー許すよ!」


「良いのか?!」


「ああ、まさかいきなり土下座をするとは思わなかったけど、お前の気持ちは伝わったよ!」


俺はそう言って氷室を起き上がらせると、氷室は申し訳無さそうな表情で


「悪い木村。お前の事、根暗で何考えてるか分からない陰キャ野郎って誤解していたみたいだ」


と言って頭を下げてきた。


「別に気にしてねーよ!むしろ俺は敢えて陰キャの格好してるから、そのくらい慣れてるし……」


「でも俺、お前の事を見かけだけで判断してちゃんと内面を見てなかった…ごめん!!」


「はいはい!もういいからほれ!早く腕を貸しな!」


「あ、ああ……」



俺はその後、氷室の外れている腕を元に戻すとずっと気になっていた事を聞いた。


「なぁ氷室、ずっと気になっていたんだが、お前は本気で葵さんに惚れてるのか?もし本気なら強くは止めはしないが正直、おススメはしないぞ!なんせあの人は漫画見たいにマジで理不尽だから!」


(なんせいきなり人を道場に連行したり、笑いながらボコボコにしてくる人だぜ!おまけに実家の道場だと性格が変わる……いや、被っていた猫を脱いでうる○やつらのラ○ちゃん並みに理不尽になるんだから)


すると氷室は真剣な表情になり、真っ直ぐな目をして俺を見ながら


「俺は本気だ!!例え葵さんが理不尽だとしても俺は諦めない!!」


と、言い切った。

俺は驚きを隠す事が出来ず、しばらく唖然としていた。まさか、見た目と中身がめちゃくちゃチャラ男の氷室がここまで言い切るとは思っても見なかったからだ。


けれど……この時俺はふと思った!!


あれ?……これは葵さんから逃れるチャンスじゃね??と……


もし氷室が葵さんと仲良くなれば、俺への関心も無くなって、自由気ままなキャンパスライフが送れるんじゃね?!


もちろん上手くいく保証はないが、それでも可能性はある!


そう思った俺は氷室に協力する事にしたのだった。

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