ここで断ると男が廃る
久しぶりの京視点でのお話しとなります。
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リューの所属する【RIZIN】のライブや真白さんの告白など、波乱の日曜日から5日が経ち、大学から帰って来た俺はいつものように自室篭り作曲の続きをしていた。
つい最近完成した新曲[Alba]は真白さんに渡してしまったので、現在俺は動画サイトにアップする為の曲を作っているのだが、なかなかこれと言った曲が出来ず、煮詰まっていたりする。
「だーもー!ダメだ、全然良い曲が浮かばん!」
俺は頭を掻きながら愚痴をこぼすと部屋を出てキッチンの方へと向かう。
俺は、作曲に煮詰まった時や書けなくなった時に料理を作って気分転換をするのが日課になっている。俺は冷蔵庫から無造作に食材や調味料の類を取り出すと料理をして行く。
「まずは人参、玉ねぎ、椎茸をみじん切りにして、ひき肉と一緒に炒めて行くだろ」
俺はフライパンにみじん切りにした野菜とひき肉を入れて、しんなりするまで炒めて行くと、続いてトマト缶とコンソメスープを入れる。
「よし、あとは塩と砂糖、胡椒なんかで味を整えたらミートソースの完成!!」
俺はミートソースをタッパに入れると、続いてナスとピーマンを取り出して縦に半分に切ると、中をくり抜いておく。
「さて。そしたら、さっきみじん切りにした玉ねぎの残りを飴色になるまで炒めてからひき肉に加えて卵を入れてから味を整えたら、ナスとピーマンに片栗粉を塗してから中に詰める。そしたら肉の面からじっくりと焼いて行くっと!」
俺はフライパンにピーマンの肉詰めを並べてから火を付けて焼いて行く。
5分程経った後、酒を入れて蓋をして蒸し焼きにしたら、ひっくり返してさらに焼く。
「ふふん、良い感じに焦げ目が付いたようだし、そろそろフライパンから取り出すか」
俺は火を止めてフライパンからピーマンの肉詰めを取り出すと皿にもる。
「あとはパスタを茹でれば今日の晩飯は完成だし、日和が帰って来る前にもう一つ頑張りするとしましょうかねぇ〜」
俺は洗い物や片付けを終わらせて、自室へ向かおうとした瞬間、玄関の鍵が開く音がした。
ガチ!
「おっ!どうやら日和のやつが早く帰って来たみたいだな?ハイハーイ!ちょっと今行くから待ってろ日和!……えっ?!」
俺が急いで玄関へ向かうと、そこには日和ともう1人、黒髪に鋭い目つきが特徴の美人姉妹の妹、東子ちゃんが隣に立っていた。
「あれ?何で東子ちゃんがいるのかな?」
俺は平静を装いながら東子ちゃんに理由を聞くと、東子ちゃんは俺の事を睨みながら
「あのねキム兄。私は一応木村さんの推薦人として、一緒に選挙活動をしているんだから当たり前でしょ!それに、さっきの口ぶりだと、まるでキム兄は私が家に来て欲しく無いみたいね?」
「そ、そんな事ないよ東子ちゃん。俺としては、追加で晩御飯を作るのに事前に連絡が欲しいだけだよ。それにほら、人が来るなら、なるべく綺麗な部屋を見せたいでしょ!」
東子ちゃんの予想は殆どドンピシャで俺は東子ちゃんに悟られないように必死に誤魔化す。
(なんで東子ちゃんはいつも俺の思っている事を当てて来るんだよ!何?エスパーか何かなのか?それともシャーロックホームズやポアロの生まれ変わりか?……いや、両方とも架空の人物だったわ!)
俺は内心そんな事を考えながら日和と東子ちゃんをリビングへと案内する。
「取り敢えず2人とも適当に座って待っていてくれ。今お茶を淹れるから」
俺がお茶を淹れにキッチンへと向かうと日和が手を上げながら
「ありがとうキョー兄!私はいつもと同じレモンティーね!」
「はいはい、日和はレモンティーの蜂蜜入りね!東子ちゃんは何かオーダーとか無いかな?うちには大体揃ってるから大丈夫だと思うよ?」
俺が聞くと東子ちゃんは少し考えた後
「それじゃあ、冷たい緑茶をお願いしても良いかなキョー兄」
「はいよ!」
俺は短く返事をした後、キッチンへと向かい冷たい緑茶と蜂蜜入りレモンティー、それとコーヒーを用意してリビングへと向かい、2人の前に飲み物を置くと俺は日和の隣に座る。
「それで、東子ちゃんがうちに来るなんて何かあったのかな?」
俺が東子ちゃんに質問すると何故か隣に座っている日和が話し出した。
「あのねキョー兄。実はキョー兄にお願いがあるの!」
「お願い?それはもしかして、この前言っていた選挙活動に関しての事かな?」
俺は東子ちゃんのほうに目線をやりながら日和に聞く。すると東子ちゃんが
「うん。木村さんの言う通り、実は中間発表で木村さんの支持率がちょっと悪くて、それで木村さんと相談したら、キム兄ならどうにか出来ると言うから今日来たの」
「ふーん。それで、何で負けてるの?確か会長推薦は殆どの確率で勝てるって聞いたけど?」
「それはねキム兄。実は芽依ちゃんが…………」
俺が東子ちゃんに聞くと東子ちゃんは今まで何があったのかをひと通り話してくれた。
「成程ね。つまり2人は戦略と言う勝負で緑川さんに負けたわけだ。それじゃあ確かに勝てないねぇ〜」
俺が軽い感じで話すと東子ちゃんは少し悔しそうな表情をしている。対して日和は、俺の手を握りながら
「うん、だからキョー兄にお願いがあるの!」
「なんだい日和?」
「私の動画の為にキョー兄に演奏をして欲しいの!!」
「「えっ?!」」
日和からのお願いに驚いた俺と東子ちゃんを他所に、日和はさらに話を続ける。
「私、芽依ちゃんには本気で負けたく無いの!!でもその為には私の歌に負けないくらいの演奏が出来る人とじゃ無いと絶対に芽依ちゃんには勝てないの!だから、お願いキョー兄!私を助けて」
日和からのお願いに対して、俺は少し考えてから話始める。
「つまり日和は、俺に動画をとる為に演奏しろって事かな?」
「さっすがキョー兄!!その通りだよ!それで、どうかなぁ〜?」
上目遣いで俺を見てくる日和の頭を俺は何度もポンポンしながら
「ああ、日和が望むならばこんな俺で良ければ日和の力になるよ!」
「やったー!ありがとうキョー兄。でも本当に良いの?」
「ああ、構わないよ日和。約束したし、それにここで断ったら男が廃るしね!」
俺は2人の顔を見ながら軽くウインクすると自室へと向かった。
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