中間発表


選挙日まで後5日に迫り、今日はいよいよ中間発表の日だ!

2日前の新聞部による事前の調査で、私こと木村日和は支持率5割と芽依ちゃんや影浦君を抜いてトップだったので、今日の中間発表は期待している。


中間発表は昼の段階で生徒会室前にある掲示板に張り出されるので、私は昼休みになった瞬間、葵先輩と一緒に生徒会室の前に向かう。まだ結果を張り出されていないにも関わらず、生徒会室前はすでに野次馬達が群がっていて、その中には芽依ちゃんや影浦君達もいた。私と葵先輩は野次馬を掻き分けて、と言うよりも葵先輩を見た野次馬達が、まるでモーゼのように次々と道を開けていったのだが、お陰で一番前に来る事が出来た。


数分して、生徒会顧問の林先生と選挙管理委員長の秤山君がやって来て、中間結果の紙を掲示板に張り出す。


「「えっ?!」」


結果を見て私と葵先輩は驚愕の余り絶句し、周り野次馬達は騒々しく騒ぐ。


「「「「「「「!!!!!」」」」」」」


騒々しい野次馬達と打って変わって、影浦君は何か分かりきっていたような様子で


「ありゃ〜マジか」


と言って、手を頭に乗せながら呟くと隣にいた黒磯先輩から


「分かりきってた事でしょ!」


「痛!」


と、頭をチョップされていた。

どうやら影浦君達の方は驚くどころか予想通りだったようだ。


そして私は芽依ちゃんの方をみる。

すると芽依ちゃんは石見さんと手を合わせながら笑顔で


「やったわね芽依!!」


「ええ!これも全て真央のお陰よ!!」


とはしゃいでいた。


それはそうだ、なんせ中間発表で芽依ちゃんの支持率は脅威の6割と断トツだった!!


次点で私の3割、そして影浦君の1割と誰がどう見てもこの中間発表の勝者は芽依ちゃんだと思うだろう。


その後、私と葵先輩は直ぐにどうしてこのような結果になったのかを調べた。

そして理由を知って、私と葵先輩は二人揃って


「「やられた!」」


と、悔しくなると同時に納得した。


何故ならば、芽依ちゃんが行ったのは誰でも思いつくけど、おそらく音羽高校で芽依ちゃんしか出来ないだろう方法だからだ。


*******


〜芽依side〜


選挙活動が始まり、普通の方法では日和ちゃんと東子先輩には勝てないと知っている私と真央は、基本の朝立ちやポスター貼りなどをしながら、始まってから3日目にようやく前から用意していた秘策に取り掛かる事ができた。今はその秘策の為に真央とその仲間達が準備をしている所だ!


「ねぇ真央。東子先輩や日和ちゃん達相手に本当にこの作戦で行けるかな?」


と、準備している真央に対して私が弱気な発言をすると真央が私の側に来て


「大丈夫だよ芽依!芽依は自分が思っているよりも人気だし、それにうちの高校で芽依にしか出来ない特技があるでしょ!ほら、自信を持って!!」


「ありがとう真央。……うん、私頑張る!!」


私は真央の手を握りながら立ち上がる。

すると後ろから準備していた真央の仲間の一人が話しかけて来た。


「こっちは準備オッケーだ!あとはお二人さんの好きなタイミングでいいぞ!」


とギターを持つ先輩が言うと、後ろでドラムに座っている同級生の男子が


「いや〜、まさか緑川さん舞姫とこうしてコラボ出来るなんて嬉しい通り越して怖いわ〜。絶対後で、緑川さんファンから何かいわれるだろうなぁ〜」


と笑いながら呟く。


「もしかして嫌なの?」


と真央が聞くとドラムの男子は


「逆だよ石見さん!こんな美味しい事に噛ませてもらえて嬉しいんだよ!」


「そう、なら期待してるわよ!」


「もっちのろんだよ!!」


「それじゃあ芽依。始めるわよ!」


真央の合図と共に私は指定の位置で待っていると、ドラムの合図と共に伴奏が流れ、私はリズムに合わせて踊る。


すでにみなさんもお分かりかと思いますが、私と真央の秘策と言うのは、軽音部である真央とコラボして、私のダンスをSNSに載せて私の事を知ってもらおうと言う作戦だ!

知っての通り、私のダンスの実力はこの高校でも一番だし、真央の所属している軽音部も何気に大会で上位に入る程の実力があるのでかなり有名だ!


なので私と真央は現在、ダンス動画を撮るために近くにあるスタジオを借りている。


軽音部とのコラボダンスは全部で4曲を予定していて、そのうち2曲は有名な歌を使い残りの2曲に関しては真央の大好きな「助さん」が[RIZIN]に提供した曲になった。

ちなみに、「助さん」の曲に関しては真央がゴリ押しして来たので断りきれなかった。


〜四時間後〜


何度もリテイクを重ねてようやく4曲全てを撮り終えた時には既に四時間が経過していて、私を始め、軽音部の皆さんもヘロヘロだった。


「それじゃあ芽依。今日撮ったダンスの中でどれをアップするか決めて貰って良いかしら?」


と、真央はダンスを撮ったタブレット端末を渡して来たので、私は一つ一つを吟味して行く。


「うーん、どれも良いけど、やっぱり一番最初に撮ったこの『偽愛』か、もしくは『一千年と五千年』かなぁ?」


私が悩んでいると真央が


「それなら私は『偽愛』の方が良いと思うよ!『偽愛』は【RIZIN】が歌っているし、比較的新しい歌だから知らない人は少ないと思うし、何より……」


急に声が小さくなった真央に私は


「真央の大好きな『助さん』の曲だから?」


と聞くと、顔を真っ赤にした真央が


「うん!そうなんだよ芽依!!この曲は元々、【RIZIN】の龍一君がソロで歌ってたのを、ライブの時に全員で歌ったのがきっかけで人気になった曲なんだぁ〜!!」


と、【RIZIN】と『助さん』の事を力説をしている真央に私は


「じゃあ、真央の言った通り『偽愛』をアップするよ?!」


「オッケー!」


こうしてアップされた動画が、SNSで拡散していき、翌日には1万回再生を突破した。


そのおかげで、5日目の中間発表では事前調査で圧勝していた日和ちゃんを抜いてトップに躍り出る事ができた。

それに、残りの3曲に関しては投票日前から3日間、毎日アップして行く予定なのでその辺に抜け目は無い!


あとは、何事も無く投票日を迎える事が出来ると祈るばかりですね!


*******


〜日和side〜


負けた理由に納得した私と葵先輩は、お茶を飲んで一息ついた後、今後の対策を話し合った。


「取り敢えず今回は芽依ちゃんに負けたけど、まだ投票日までは4日もあるわ!それまでに出来るだけ支持率を上げたいところだけど、木村さんは何かいい案は無いかしら?」


葵先輩の質問に対して、私は芽依ちゃんの使った方法を利用する案を提案した。


「それならキョー兄の力を借りるのはどうでしょうか?」


「えっ?!キム兄の?」


疑問符を浮かべている葵先輩に私はドヤ顔で


「はい。幸い、キョー兄には事前にお願いしていますから問題無いと思いますよ!それに、キョー兄なら私の歌に負けませんから!」


と言うと、葵先輩はまたしても疑問符を浮かべながら


「どうゆう事??」


「ふふふふ」


と聞いてきた。私はそんな葵先輩をよそに、久しぶりにキョー兄とセッション出来ると思うだけで、嬉しさのあまり笑みを隠せなかった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

補足

〜【RIZIN】裏話〜


「助さん」こと京が龍一に提供した曲は最初の(signal)とその半年後に提供した(偽愛)の全部で2曲ありましたが、(偽愛)を龍一に提供した事を知った有栖川から、自分も歌いたいと何度も土下座をされたので仕方なく龍一が折れる形で京を説得して見事【RIZIN】の曲になりました。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る