因縁があるようです!


それぞれが自己紹介をしていき、ようやく自分の番になると「影浦隣寺」は立ち上がり話しだす。


「えーと、2年の『影浦隣寺』です。一年の時には副会長を務めてました。去年は葵先輩に敗北しましたが、今年こそは勝ちたいと思いますので、皆さんどうぞよろしくお願いしますね!」


どこか、漫画の爽やかイケメンを思わせるような雰囲気を醸し出しながら自己紹介をする影浦隣寺は葵先輩の事を見つめながら座る。

対する葵先輩も、影浦隣寺の事を睨みながら見つめていた。


そんな葵先輩の姿を見て、事前に聞かされている私以外の芽依ちゃんや石見さん、林先生は驚いた様子でいた。


影浦隣寺が座ると今度は隣に座っている女性が立ち上がって話し出す。


「この度、『影浦隣寺』の推薦人を務めさせて貰う3年の『黒磯奈緒』です。先程、隣寺君が言ったように、私は必ず彼を当選させたいと考えていますので、どうぞよろしくお願いします」


そう言って、黒磯先輩は軽くお辞儀をしながら座ると、今度は林先生の隣に座る秤山君が立ち上がる。


「今回、生徒会長選挙の担当を務めます、選挙管理委員長の『秤山判事』と申します。やつがれが担当を務める以上、公平で公正のクリーンな選挙にする事を約束致しますのでどうぞ皆さまよろしくお願いします。そして、もし不正が発覚した場合におかれましては、やつがれが然るべき処分を下しますのでどうぞ良しなに…」


秤山君の自己紹介を聞いて私は心の中で


(何度か秤山君には会ったことがあるけど、一人称が“やつがれ”ってだけで既にキャラが濃いのに、どこか話し方が古風な気がするんだよね?なんか、文ストの芥川さん見たいな人だなぁ)


私は、キョー兄が持っている漫画を偶に読んだりする事があるんだけど、その中でも文ストにどハマりした。


ちなみに私の推しは潤一郎君だ!


勘のいい人は気づいたと思うけど、私は潤一郎君をキョー兄と重ねて読んでいる。

だって、潤一郎君は妹のナオミちゃんの事をあんなに・・・いや、ここでその話をするのは辞めておきます。


それはそうと、自己紹介が終わった秤山君は胸に手を置いて軽くお辞儀をしてから座ると、林先生が話し始める。


「それじゃあ、ひと通り自己紹介が終わった所でこれから選挙について説明する。まず、候補者の3人は明日から投票日までの9日間の間、それぞれ自由に選挙活動をして貰って構わないが、法律を犯すような事は禁止だ!もし分かれば、先程秤山君が言ったように然るべき処分を下す!それと・・・」


林先生による選挙に関する説明はどんどん続いた。


選挙活動に関してや、ポスターにビラ配り、そして投票日に開かれる直前演説に関して。


ひと通り話し終わると今度は


「次に推薦人に関してだが、推薦人はあくまで候補者の補助がメインだ!あまり出過ぎた行為が発覚した場合は最悪の場合、立候補の権利を取り消す事もあるので気をつけるように。それと・・・・・・以上で説明を終了とさせて貰う。何か質問はあるか?」


林先生がそう言うと葵先輩が手を上げる。


「それじゃあ葵君、何かな?」


葵先輩は立ち上がって


「はい、選挙活動に外部の人物に助力を乞うのは大丈夫でしょうか?」


葵先輩の質問に林先生は一瞬不思議がったが、すぐにいつもの顔に戻り


「流石に学内に入れる事は出来ないですが、ある程度なら大丈夫ですよ」


「ありがとうございます」


林先生からの答えを聞いた葵先輩はお礼を言って座る。


「それじゃあ、後は何かあれば個別に来て貰うって事で今日はこれにて解散」


そう言って林先生と秤山君は会議室を出て行く。


続いて、芽依ちゃんも石見さんと一緒に会議室から出て行った。少しして、葵先輩も出て行こうとしたので、私も立ちあがろうとした時、危険人物の影浦君が声をかけて来た。


「やあ木村さん。君の事は何度か耳にした事はあるけど、こうして会うのは初めましてだね!影浦隣寺だ、宜しくね木村さん!普段はサッカー部とボクシング部を兼部してるから接点はないけど、お互い頑張ろうね!」


影浦君はそう言って右手を出して握手を求めて来た。

私が握手するべきか悩んでいると、隣にいた葵先輩が


「あら影浦君。私と違って木村さんには随分と優しいのね?私の時はもっと無愛想だったと記憶しているのだけど!もしかして、木村さんに気があるのかしら?」


葵先輩は影浦君を睨みながらそう告げると


「そうですねぇ、たしかに木村さんはとても可愛らしいですが、別に気があるわけでは無いですよ!それに、自分は葵先輩に対してそこまで無愛想にしているつもりは無いですし、失礼ながら葵先輩の被害妄想では無いですか?」


そう言って影浦君は葵先輩を睨み返す。


睨み合う二人の間で火花が散り、なんだか空気が重くなって行く中で、影浦君の隣に立っている茶髪と吊り目が特徴的な黒磯先輩がいきなり影浦君の頭を叩きながら


「ちょっと、隣寺君!今日は挨拶だけって言ったばっかでしょうが!それに、葵さんを相手にするのは私の役目なんだから、勝手に取らないでくれないかしら?それとも何?君は私の敵なのかしら?」


「ちぇっ!分かってますよ奈緒さん。正直言って、不満ですがそう言う契約ですので葵先輩は貴女に譲りますよ」


「よろしい。誰かさんと違って、隣寺君は物分かりが良くていいわね!」


黒磯先輩はそう言いながら葵先輩を睨む。

すると葵先輩は、呆れたような顔をしながら


「相変わらず、貴女はなんでそんなに私の事を目の敵にしてるのかしら?」


すると黒磯先輩は


「なんですって!まさか貴女が私に行って来た、数々の所業を忘れたとは言わせないわよ!」


と言いながら葵先輩に向かって指を指す。


だが当の葵先輩は何のことだ?と言いたそうな顔をしながら


「……ごめんなさい。全然思い当たる節が無いわね。少なくても、私が知る限りでは貴女に対して何かした記憶が無いのよ。もし良かったら教えて貰っても良いかしら?」


葵先輩の問いかけに対して黒磯先輩は


「良いわ!この際だから教えてあげる。私が何故、貴女の事をこんなにも嫌っているのか!」


そう言って黒磯先輩は、何故葵先輩の事を敵視しているのか話し始めた。



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