3人目の候補者
日和サイド
会長選挙日まで後10日となり、今日は候補者達を集めての選挙説明会が放課後開かれる為、私と葵先輩は会議室へと向かっている。
やがて会議室の前に到着し、私はドアを開けようとする葵先輩に
「ふぅ、なんかこうゆう会議って緊張しますね葵先輩!」
私がそう言うと、葵先輩は微笑みながら
「ふふふ、流石の木村さんも緊張する事があるのね。安心して、去年の私なんか雑務やらなんやらほとんど前会長に任せっきりだったし、この会議も緊張こそしなかったけど、いつの間にか気づいたら終わってた位だしね!」
「えっ!本当ですか?」
意外だった。少なくても私の知る限りでは、ほぼ完全無欠な葵先輩にまさか緊張する事があるなんてびっくりだと思った!
私が驚くと葵先輩は
「ええ本当よ。だから木村さんは落ち着いてどっしり構えていれば大丈夫よ」
と、葵先輩はアドバイスをくれた。
けれど私は
(葵先輩は言ってくれたけど本当にそれで良いのだろうか?)
葵先輩におんぶに抱っこで少し不安があるけれど、ここは葵先輩を立てる事にした。
「分かりました。先輩にお任せします」
私がそう言うと葵先輩は満足げに
「それじゃあ開けるわね」
葵先輩がドアを開けるとすでに芽依ちゃんと推薦人の石見さん、それと選挙管理顧問の林先生と、選挙管理委員会会長の「秤山判事」君が座っていた。
「失礼します」
と言って葵先輩は会議室へと入って行くので、私もそれにならって入る。
「失礼します」
私が葵先輩が座った席の隣に座ると、反対側で資料を見ていた芽依ちゃんがこちらの方を軽く一瞥しながら話してきた。
「どうしたの日和ちゃん。もしかして緊張してるの?」
芽依ちゃんからの質問に私はなんとか動揺を隠しながら平静を装い
「全然大丈夫だよ。ところで芽依ちゃんは何で私が緊張してると思ったの?」
私の質問に対して芽依ちゃんはどこか見下すように
「ふふ、別に特に理由は無いけど強いて言えばなんとなく、かな?……なんとなくいつもより、雰囲気が違ってた気がしたからってだけだよ日和ちゃん」
私は芽依ちゃんに対して笑顔を繕いながら
「ふーん、芽依ちゃんは私の事をよく見てるね!そんなに私の事が気になるの?……それともそんなに私の事が怖いの?」
と、敢えて煽るように言うと芽依ちゃんは不機嫌そうな顔をしながら
「相変わらず日和ちゃんは口が悪いね!そんなんじゃあの人に嫌われちゃうよ」
「ご心配なく、私がこの口調で話すのは敵と認めた人だけだから」
「ヘぇ〜、意外だね!日和ちゃんはいくら友人だとしても、私みたいに格下の候補者の事をちゃんと敵だって認識してたんだね」
「よく言うわね芽依ちゃん。私も芽依ちゃん程の腹黒さが有れば、もっと気楽なんだけどねぇ〜」
お互いに軽く挑発しあってから二人揃って笑い合う。
「「ふふふふふ」」
私達が口論?をしていると、他の人達はただ黙って静かに見守っていた。
唯一、東子ちゃんだけは二人の事を止めようとしていたが、結局止めることはしなかった。
会議室に私と芽依ちゃんの笑い声が響く中、ドアが開く音がして二人の男女が入ってきた。
まず入って来たのは、キョー兄程では無いが割と整った顔をしていて、どこか飄々とした男が
「失礼します。遅れてしまって申し訳ございませんって、あれ?何この空気?俺、なんかタイミング悪かったですかね、黒磯先輩?」
と言いながら隣に立っているおそらく先輩だと思われる女子に話しかけると
「はぁー。ちょっとうるさいんだけど隣寺君!君は相変わらず空気が読めないんだから黙っていなさい。次喋ったらその舌を引き抜きますよ」
女性の方が男の事を睨みながら毒を吐くと男は少し顔を引きずりながら
「うへぇー、奈緒さん怖!まぁいつもの事ですけど、出来ればもっと言葉をオブラートに包んで下さいよ!」
「ふん!いくら私でも君以外の他人に対してここまでの物言いはしないさ!それに、君には必要ないだろ?」
女性はどこか確信を持って男に言うと、男の方は満足げな顔をしながら
「さっすが、分かってるね奈緒さん!」
と言って、右手の親指を立ててグットのポーズにする男に女性は背中を何度も叩きながら
「いいからとっとと座りなさいよこの馬鹿!皆さんが困ってるでしょうが!」
女性の言葉でようやく気づいた男は焦りながら
「あっ!すいません皆さん!ご迷惑をおかけしました!すぐに座ります!」
男は何度も頭を下げながら自分の席へと着くと、ようやく林先生が話し出した。
「さて、ようやく候補者が揃った所で早速会議を始めていくが、その前にまずはそれぞれ候補者と推薦人は自己紹介と抱負をして貰おうか!じゃあまずは木村さんからその後は時計回りでよろしく」
林先生が話終わってから、私は立ち上がって自己紹介をする。
「この度、会長推薦により立候補いたします2年の『木村日和』です。転入して日が浅いですがよろしくお願いします」
私が自己紹介を終わらせて座ると今度は葵先輩が立ち上がり
「木村さんの推薦人を務めさせて頂きます。現会長の3年『葵 東子』です。どうぞよろしくお願いします」
葵先輩は、軽く自己紹介をしてから不機嫌そうに男の事を一瞥して座る。
そんな葵先輩を見て、私は男が葵先輩が言っていた「影浦隣寺」だと理解した。
(この男が葵先輩が敵視してる『影浦隣寺』なのね。たしかに、どこか掴み所の無い感じがしますね)
私が内心、そんな事を考えていると今度は芽依ちゃんが立ち上がって自己紹介を始めた。
「会長選挙に立候補しました、2年の『緑川芽依』です。全力で挑みたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします」
芽依ちゃんは軽く頭を下げながら私の事を見てから座る。
すると今度は隣に座っている同じクラスの石見さんが立ち上がって自己紹介を始める。
「芽依、じゃなかった!緑川芽依の推薦人を務めます、2年の『石見真央』っす!ウチは必ず、芽依を会長にして見せますのでどうぞよろしくっす!」
石見さんは、大声でどこか緩い感じの自己紹介をすると勢いよく座る。
そして、最後の立候補者「影浦隣寺」が立ち上がって自己紹介を始めた。
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