間話 旦那様にも秘密の私 後編
事務所に入った私は、早くデビューできるように歌は勿論、ダンスや発声練習など毎日血の滲むようなレッスンを続けた。
事務所には私よりも年下なのにも関わらず、私よりも才能豊かで可愛い子が何人もいて、その殆どが何年もデビュー出来ないと聞いて、私は驚きと同時に音楽業界の厳しさを知りました。
事務所に入ってからおよそ1年が経ったある日、突然私は事務所の社長に呼ばれました。
先輩の話しでは社長に呼ばれた時はデビューが決まった時か、才能無しと判定されて辞めさせれらる時の二つのパターンがあると聞いていたので、入ってからまだ1年しか経っていない私の場合、前者よりも後者の可能性の方が高いと思い不安になりました。
私は恐る恐る社長室へと向かい扉をノックします。
コンコン!
「どうぞ!」
すると中から声が聞こえてきたので私は震える手で扉を開けて中へと入ります。
「失礼します。真白三葉、ただいま参りました」
「突然呼び出して済まないね真白君」
「いえ、とんでもございません社長!」
「ふふふ、そんなに緊張しなくても大丈夫だよ真白君。もっと肩の力を抜いて楽にして構わないからね!」
「はい!」
うちの事務所の社長はまだ40代と他の事務所の社長に比べて若く、落ち着いていて優しいとてもいい人だ!
「さて、今日真白君を呼んだのには訳があってね、実は君に……」
社長が話している途中、扉をノックする音が聞こえた。
コンコン!!
「どうぞ!」
扉が開くと入ってきたのは、うちの事務所の看板グループ【RIZIN】を担当しているイケメンマネージャーの香取さんだった。
香取さんは何故か凄く嬉しそうな顔をしながら社長に
「失礼します社長!先程、龍一から『助さん』が本人に直接会って話をしたいとメールを貰ったそうです!!」
「流石は氷室ちゃんだ!よし香取君、早速真白君と打ち合わせをしたまえ!」
「分かりました。それじゃあ真白さん、会議室へと行こうか」
いまいち、話の流れについて行けない私は促されまま香取さんと一緒に社長室を出て、会議室へと向かう。
「じゃあそこに座って貰えるかな」
「はい」
会議室へと到着すると言われるがまま私は椅子に座り、香取さんは私の対面へと座って何枚かの書類を渡してきた。
「えーと、真白さんには突然のことで訳が分からないだろうけど端的に言うと、真白さんのデビュー曲を提供してもらう為に明日『助さん』と面接をする事になったらからよろしくね!」
「え?!!」
香取さんからの爆弾発言に私は思わず変な声を出してしまった。
「ほ、本当ですか?!えっ?!それに明日っていきなり過ぎませんか?!」
「本当だよ。それに、『助さん』がいきなりなのは今に始まった事じゃないから」
と、香取さんはどこか諦めたような顔をしながら言ってくる。
「そうなんですか?でも急に…」
すると、いきなりの事で上手く言葉を繕えないでいた私に対して香取さんが
「もし真白さんが嫌なのならばこの話は無かった事にしてもらうけど、真白さんはどうする?」
香取さんの質問に対して私はハッキリとした口調で
「いきます!!このチャンスを逃せばもう一生会えないかも知れないって事ですよね?それならいきます!」
私の気持ちが伝わったのか、香取さんは先程とは違い笑顔になりながら
「よし!それじゃあ待ち合わせ場所とかの細かい事はこの資料に書いてあるから、明日頑張ってね!!」
そう言って香取さんは帰って行った。
翌日
私は資料に書いてある指定されたカフェへと向かう。事前にスマホで場所の確認とルート案内を設定していたので5分前には到着した。
「よし!」
私は一度気合を入れ直してカフェの扉を開けて中にはいる。カフェの中に入ると私は、事前に伝えられていた目印のパソコンと帽子を被った人を探す。
すると奥のテーブルに帽子被り、パソコンを持った男性を発見したので、すぐにその人の元へと向かった。
この時、正直に言えば私は今にも踊り出しそうなくらい嬉しかった。
憧れの「助さん」が私の目の前にいると言うだけで、もう天にも昇りそうだった。
テーブルに近づくと私は「助さん」かどうかの確認の為に男性に話かける。
「すみませんが、その帽子とパソコン、もしかして貴方が『助さん』ですか?」
すると男性は肯定してきたので、私は対面に座り自己紹介をした後すぐに面接が始まった。
面接の内容はありふれたものから少し変わった質問などバリエーションがあったけど、一番困ったのは最後の質問だった。
「それでは最後に真白さんが目指してる目標はなんですか?」
私はこの質問に対して、どう答えるべきか悩んだ。けど『助さん』にはありのままの私を知って欲しいと思ったので、私は正直に話した。
「私の夢は安室奈美○や中○明菜、宇多○ヒカルのように、一人で何万人もの観客を集められ、武道館でソロライブが出来るほどの歌手になる事です。」
私が話し終わると『助さん』は笑いながら
「合格です。貴女は俺が待ち望んでいた人だ!貴女の夢を俺は全力で応援します。だからこちらから言わせて下さい。お願いします、俺から貴女に曲を提供させて下さい!」
と言って、私の夢を肯定してくれた。
嬉しかった!!
凄く嬉しかった。普段、周囲の人にこの夢を話してもみんな笑いながら「無理でしょ」とか「出来っこない!」と言って否定してくる。だから私は心のどこかで、この夢を諦めかけていた部分もありました。
でも「助さん」は私の夢を否定するどころか応援してくれると言ってくれた。
かっこ良すぎですよね!!
今思えば、そう思った時に私にとって『助さん』が憧れの人から未来の旦那様に変わった瞬間だったのだと思います。
そして『助さん』は私に新曲の[残響]を提供してくれました。
私はお礼をしようとしたのですが、『助さん』が拒否したので私は結局お礼が出来ず、なんだかモヤモヤした気持ちが残ってしまいました。でも『助さん』は最後別れ際に、私が人気になってくれる事を願っていると言ってくれました。
それから私は提供して貰った[残響]でデビューして、いきなりオリコンで一位を取ることが出来ました!
そして、瞬く間に人気になった私は少ない時間を使いながら『助さん』の手がかりを探して行くのですが、しばらく経っても残念ながら全く手がかりをつかめず困っていた私にある日、マネージャーである田代さんが『助さん』に関する重要な情報を教えてくれたので私はすぐに情報を頼りにある場所へと向かいました。
そしてこの後、ついに私は『助さん』いいえ、
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