会長選挙

side東子


6月に入り、いよいよ私の任期が後1ヶ月程になった。

少し寂しい気もするけど、こればかりは仕方ない。それに、いつまでも私が会長だと後輩たちにとってもマイナスにしかならないしね!


昼休み 生徒会室


誰もいない生徒会室で私は今、次の生徒会長選挙の為に候補者の中から、会長推薦を誰にするか悩んでいた。

会長推薦とは、現会長が「この人なら任せられる」と太鼓判を押して推薦する制度の事で、歴代の会長の殆どがこの会長推薦で当選して来たほど、選挙に影響力がある制度だ!


かくゆう私も、去年の選挙ではこの会長推薦のお陰で、他の候補者たちに勝利する事が出来た。


なので、候補者達にとっては喉から手が出るほどまで欲しい制度でもあり、毎年選挙前になると、脅迫してでも手に入れようとする輩がいるくらいなので、現会長は推薦をするに当たって、相応しい候補者を選ばなければならないので、私は今凄く悩んでいた。


バン!


私は悩みすぎてストレスが溜まり、机を叩きながら叫ぶ


「あーもっ!本当に困ったわねぇ。どうすれば良いのよ!」


久しぶりに大声を上げた事で、冷静になった私は先程の自分の行動を思い出して、頭を抱えながら心の中で叫ぶ


誰もいなくて良かった〜!!


普段『氷姫』として、クールなイメージを通している私が、こんな子供みたいな事をしたなんてバレたら良い笑いものだ!


冷静になった私は、とりあえず今困っている事についてを考える。


現在困っているのは、会長推薦を誰にするかについてだ。

本当なら、現副会長の「平和島美々子」さんを推薦するはずだったのに、事故によって1ヶ月もの入院を余儀なくされた為、選挙を辞退したのだ。おまけに、次の候補だった芽依ちゃんも、選挙を辞退したので誰にすればいいのか困っている。

本来ならば、候補者の中で一番実績のある2年生の「影浦隣寺」を推薦しなければいけないのだけど、私はこの影浦隣寺と言う男が昔から大っ嫌いなんだよね!!


なんで嫌いなのかって?


そんなの簡単よ!一言で言うのならば、影浦隣寺はいけ好かない!!


あいつは外見こそ爽やかイケメンな感じで、クラス委員を務める位の優等生だけど、私だけは知っている。あいつは、影浦隣寺には、誰も知らない、いや、隠している裏の顔があると!


あれは去年の生徒会長選挙の時、当時一年の影浦は生徒会副会長として、会長選挙に出馬したにも関わらず、会長推薦に選ばれる事は無かった。

それどころか、私は当時の生徒会長から会長推薦で選挙に出馬して欲しいと言われて、驚いた位だった。


元会長に、なんで私を推薦したのか聞いてみた所、影浦だけは会長にしたく無いと言われ、私は選挙に出馬する代わりに、その理由を聞いた。すると、元会長がとんでもない事を教えてくれた。


なんでも、当時影浦隣寺は同じクラスの男子生徒をイジメによって不登校にさせて、最終的には転校まで追いやったと言う内容でした。


でも、影浦が関与したって言う証拠がない為結局影浦には特にお咎め無しな上、むしろイジメられていた男子生徒を庇っていたなんて話があったそうだけど、元会長が調べてた所、どうやら誤魔化すための演技だったそうだ。


それを聞いて私は、影浦隣寺と言う男を絶対に生徒会長にさせてはならないと決め、選挙で圧倒的な票を獲得して当選した。

自分が完膚なきまでに負けたと知った時の影浦の顔はなかなかに笑えましたが、そのあとの怨みのこもった目は、今でも忘れられない!


おそらく今回の選挙では、何がなんでも勝ちにくるでしょうし、汚い手も使う可能性がある以上、いくら会長推薦に選んだとしても、下手な候補者では勝ち目は無いだろう。かと言って、辞退した芽依ちゃんにお願いする訳にはいかないので行き詰まってしまっている。


困り果てた私は、他の候補者の資料を見ているとその中になんと、今年転入して来ていきなり4美姫に選ばれたキム兄の従妹である木村日和さんの名前を見つけた。


「あれ?たしか木村さんは立候補を取り下げたはずなのになんで?」


そう、木村さんは転入して来てまだ日が短いと言う理由から結局立候補を取り下げた筈なのに、何故か立候補の中に入っていたのだ!


私はすぐに職員室へと行き、生徒会顧問の林先生に理由を聞くと私は納得した。


なんと木村さんは、私が進学先に選ばなかった『日大』への進学を目指しているそうで、内申点の為に会長選挙に出馬したいそうだ。

けれど、転入して来て日が浅い木村さんが選挙に出るとなると誰かの推薦が必要となる為、会長推薦の資料に入っていたそうだ。


この時、私はチャンスだと思った。

木村さんは、芽依ちゃんに負けない位の知名度と転入試験では高成績をとっているので、選挙で勝つ為に必要な条件を満たしていた。


私は木村さんを説得する為、2年生の教室へと向かった。


木村さんの教室へ向かうと、お昼時と言う事もあり、教室内はあまり人がいなかったので、すぐに見つかる事が出来た。


私が木村さんの元に向かうと、芽依ちゃんも一緒にいたので2人に挨拶をする。


「こんにちは木村さんと芽依ちゃん。実は込み入った話があるのだけど、大丈夫かしら?」


私の質問に対して木村さんは


「えっと、葵先輩ですよね?はい、大丈夫ですよ。芽依ちゃんは?」


「うん。私も大丈夫ですよ東子先輩」


「そう。ありがとう2人とも!それじゃあ生徒会室へ行きましょうか」


「「はい」」


私は2人を連れて生徒会室へと向かう。








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