バレちゃった


それから俺は、増えた2人分の食事を作り始める。と言っても、夕食はあらかた作り終わっているので、あとは鶏肉を揚げるだけなので大した事はない。


少しして、夕食の準備を全て終わらせてからテーブルに料理を並べる。


するとまず東子ちゃんが


「うわー、凄く美味しそう!これ全部キム兄が作ったんだよね!?」


あれ?『氷姫』モードからいつもの東子ちゃんに戻ってるよね!


変わり身はや!!


俺はそんな事を考えながら


「当たり前だろ!」


と言うと、今度は緑川さんが珍しくハイテンションで


「凄いです!まさか木村さんがこんなに料理が得意なんて思っても見ませんでした!」


と緑川さんは言っているが、よく考えてみるとそれって軽く俺の事をディスってるよね?


流石は腹黒緑川さんだよ!


俺がそんな事を思っていると、さっきまで黙っていた日和が目を輝かせながら


「うわぁ〜!今日は私の大好きなチキン南蛮だ!やったー!ありがとうキョー兄!!」


うん、まさに天使だね!!少し面倒だったけどチキン南蛮にして良かったよ本当!!


俺は、日和からのお礼の言葉を聞いて表情筋が緩んでしまった。

すると、だらしない俺の顔を見て緑川さんが


「あのー木村さん。言いづらいのですが、お顔が凄く変ですよ」


と、小声で教えてくれた。

俺はすぐに顔の筋肉に力を入れて表情を元に戻すと、緑川さんにお礼を言う。


「ありがとう緑川さん。お陰で2人に恥を見せずに済んだよ」


「いえ、そんなお礼なんて・・・あれ?2人って事は私には見せても良いんですか?」


緑川さんは少し不満げな顔をしながらそう言ってきた。


「ち、違うよ」


俺が否定すると、緑川さんはさっきより小さい俺にだけ聞こえるくらいの小声で


「もしかして、木村さんって年下好きなんですか?」


と言って、俺の事を茶化して来るので俺はあえて、緑川さんに乗っかる


「もし、そうだって言ったら緑川さんはどうする?」


「!!!」


俺が逆に緑川さんの事を茶化すと、緑川さんは顔を真っ赤にしながら、俺の事を睨んできた。


「ふふふ、冗談だよ。冗談!」


俺が緑川さんの肩を軽く叩きながらそう言うと緑川さんは


「で、ですよね〜。もしそうだったら警察に通報してますもん!」


と言ってスマホを取り出す。

俺は少し驚いたが、本気では無い事がすぐに分かったので笑うと緑川さんも釣られて笑う。


俺と緑川さんが笑い合っていると、日和が


「なにを2人で笑い合ってるんですか?早く食べましょうよ!」


と言って来たので、俺と緑川さんは笑うのをやめて俺が


「いただきます」


と言うと3人も同じく


「「「いただきます」」」


と言って、みんなで食事を始めた。


食事が始まると、東子ちゃんが俺に質問をしてくる。


「ねぇ、気になってたんだけどさ、どうして私たちに木村さんのことを黙ってたの?」


げっ!!ついにきたよこの質問!


さて、どうやって誤魔化すか。


流石に、普段陰キャの格好をしてるからなるべく日和の家族だって言いたく無いんだよなぁ。もしバレて、日和に変な噂が流れても嫌だし、俺の素顔がバレるのもいやだったからとは言えないもんなぁ・・・


「じ、実は忘れてたんだよ」


俺は苦し紛れの言い訳をした。


すると、東子ちゃんは


「ふーん、まあいいわ。キム兄にも事情があるだろうしね。今回だけは見逃してあげる」


なんだか腑に落ちないような顔をしているけど、どうにか納得してくれたようだ。


・・・・・・多分?



(なんだろう、凄く嫌な予感がするけど・・・まぁ、いいか)


いくら考えても分からなかったので、俺は考えるのをやめた。


「ありがとう東子ちゃん。忘れてて本当にごめんね。・・・ところで、緑川さんはさっきからなんで玄関の方を見てるの?」


俺が緑川さんに質問すると緑川さんは驚いたように


「えっ!?い、いやぁ〜、あのー、すみません!つかぬ事をお聞きしますが、木村さんって眼鏡とかかけますか?」


いきなりの質問に訳がわからない俺は、緑川さんがさっきまで見ていた所をよく見る。

するとそこには、俺が普段変装に使っているマスクや帽子、服などがあった。


(あっ!やっべ!!あの服と帽子は緑川さんを助けた時に着てたやつと同じだわ!)


俺は内心動揺している中、平静を装う。


「い、いや、目は悪くないからかけないけど?」


俺がそう言うと、日和が横から


「あれ?でもキョー兄、いつも伊達メガネをかけてますよね!!」


おいいいいい!!!!!!!!


なんて事を言ってるんだよ日和!!!!


俺が必死に隠そうとしていたのにさぁ!!

あーも、これじゃ意味ないじゃんか!


俺が心の中で叫んでいると、緑川さんが


「あの木村さん!木村さんってもしかして・・・いえ、やっぱりなんでも無いです」


緑川さんは何かを言いかけて、途中でやめてしまう。


(あー、これ完全にバレたよな?はぁー)


俺はこれから起こるであろう事を想像するだけで、胃が痛くなった。


*******


食事が終わり、2人が帰ると俺は紅茶を入れて、日和と話しをした。


「なぁ日和。さっきは聞かなかったけど、本当に大丈夫なのか?」


俺が心配して聞くと日和は


「うん、色々な手続きは葵先輩がやってくれるし、芽依ちゃんも手伝ってくれるから!それに、いざとなったらキョー兄にも助けてもらうしね!」


と言って、俺まで巻き込んできた。


俺は思わずため息をついて


「はぁ、まぁ日和のためならある程度は手伝ってやるが、俺は良くも悪くも部外者だからなぁ・・・」


俺が悩んでいると日和が突然


「そんなこと無いよキョー兄!キョー兄がいるだけで百人力だよ!」


と、大きな声で言ってきたので俺は


「そ、そうか?分かった!何かあれば俺に任せなさい!日和は大船に乗ったつもりでいてくれ!」


自分の胸に手を置いてドヤ顔で言う。


ちなみに、痩せ我慢である。


第一、俺は今まで生徒会だの、選挙だのに関わった事がない!


なので、さっきの言葉は言わば虚勢だ!


だってしょうがないじゃないか!

兄として、可愛い従妹にはカッコ付けたいんだよ!


俺が心の中で頭を抱えながら悩んでいると、日和は嬉しそうに


「ありがとうキョー兄!」


と言って、俺の手を掴んできた。


(あーあ、今更無理ですって言えなくなったよもう)


俺はこの後、日和を自分の部屋へと帰してから、洗い物や掃除をして風呂に入る。


そして、東子ちゃんや緑川さんによる突然の来訪で疲れたので新曲をアップしてからすぐに眠りについた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


割と早い段階で京の正体がバレてしまいましたが、果たしてこれから腹黒芽依がどう行動を起こすのか、皆さんお楽しみ下さい


次話からは、東子と芽依の話となりますのでどうぞよろしくお願いします

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