拗れる仲



 俺と楓ちゃんの中学生活は順調そのものだった。

 一緒に登下校して、一緒にテスト勉強をしたり、休み時間もなるべく一緒にいるようにした。


 部活でも、俺は2年生にしてすでに部内で敵なしとなり、俺はエースとして部を引っ張りこの年の夏に団体戦で全国3位、個人戦で準優勝をした。


そんなある日


「あーあ、本当だったら個人戦は優勝できたのになー!」


俺は楓ちゃんと一緒に図書館で勉強をしている。そんな俺の左手にはギブスが巻かれていた。


「もー、無茶言わないの!団体戦で怪我した左手が完治しないまま、個人戦で決勝まで勝てた事だけで奇跡なんだからね!」


「いやいや、後1試合位余裕だったんだけどね!それにこれで来年個人戦で優勝しないと母さんとの約束を破る事になるからなー」


「キョーくんなら、大丈夫だよ!」


「ありがとう、楓ちゃん」


 そう、俺が母さんとした約束に、柔道で全国優勝をする事がある。

 その上テストでも毎回10位以内を取る事も約束している。


普通に考えれば無理じゃね?とだろう思うが、テストに関しては俺より頭のいい楓ちゃんが教えてくれるのでなんとか10位以内に入っている。

だが、柔道で優勝出来ないと、高校は母さんの決めた所に行かなくてはいけなくなってしまう。


 そうなれば、楓ちゃんと別れなければならなくるかもしれないので、俺は必死だった。


その後、どうにか試験では毎回トップ10以内をとる事が出来たが、残念ながら左手の怪我が完治せず、冬と春の大会出場出来なかった。

これで残っているのはあと、3年の最後の夏だけだ!


 季節はすぎていき3年生に上がると俺は優勝するため部活に力を入れるようになる。


 だが、そのせいで楓ちゃんとの時間が疎かになっていき、ある日つまらない事で喧嘩になってしまった。


「ねぇ、なんで一緒に帰ってくれないの?」


「しょうがないだろ、部活が忙しくて」


軽く流していた俺だが、楓ちゃんがだんだん強ばった声になっていく。


「キョーくんはわたしよりも部活を取るの?」


「そうゆうわけじゃないけど、今年優勝できないと楓ちゃんと一緒にいられなくなるだろ」


「それは分かってるけど、わたしだってキョーくんと一緒にいたいのよ!」


「そんな事言われてもどうしようもないだろ!分かってくれ楓ちゃん」


耐えかねた俺は、ついに大声で怒鳴ってしまった。そして楓ちゃんはついに泣きながら


「キョーくんは、わたしのこと嫌いになったの?」


「別にそうゆう訳じゃないよ」


俺は、一度冷静になろうとしたのだが


「いや、きっとそうだ!わたしよりも好きな人でも出来たんでしょ!」


そして、ついに楓ちゃんは俺の一番言われたくない事を言った。


俺は楓ちゃんと約束した日から、楓ちゃん以外の女の子と付き合うどころか、ほとんど関わりを持った事は無い。何故なら俺の中で、楓ちゃんこそが全てであり、楓ちゃんさえいれば良いと思っているからだ。


だけど楓ちゃんは、そんな俺の気持ちを他所に「他に好きな人がいるんでしょ」と意味の分からないことを言ったのだ!


俺はそれが許せず、つい衝動てきに


「何言ってるんだよ楓ちゃん!そんな事あるわけないだろ!いくら楓ちゃんでも許さないよ!」


と怒鳴った。


すると楓ちゃんはついにあの事を言ってしまう。


「だって、まだわたし達は告白し合ってないからお互いが好きだってちゃんと確認してないもん!」


そう言って俺を見る楓ちゃんに、俺はすぐに


「俺は楓ちゃんのことが好きだよ!」


告白をしたのだが、


「嘘!絶対嘘!キョーくんのことなんてもう知らない!」


「ちょっと楓ちゃん!」


 楓ちゃんはそのまま帰ってしまい、俺は弁明する機会を失った。


「へぇー、あの二人って付き合ってないんだへぇー」


 そしてこの会話を聞いていた女子がいた事も気づかなかった。



 それから俺と楓ちゃんはあまり話さなくなり、周りからも『破局だ!』や『別れた?』などと言われるようになった。


しかし、この時俺は部活の方しか考えていなかったため、噂に対して特に対策をしなかった事がこの後、取り返しのつかない事となると気づきすらしなかった。


 放課後部活に行こうと体育館へ向かっていると入り口に、うちの中学で1、2を争う美人と評判の「門倉里奈」がいた。


 門倉里奈は確かに美人であるが性格が最悪な上、プライドが高く、気に入らない女子に嫌がらせをしているなんて噂があるほどで、楓ちゃんに比べると『月とすっぽん』だ。

そんな門倉さんが俺に


「ねぇ、話したいんだけどいい?」


 と言ってきたので、俺は断ろうとしたが


「もし断ったら貴方と天音さんとの秘密をバラすわよ!」と脅してきた。


「わかった」


 俺は了承して、2人で体育館裏の人気のない所へと移動する。


 すると門倉さんが口を開き


「それで話なんだけど、貴方、里奈と付き合いなさい」


と女王のように言ってきた。


「え、嫌だけど」


俺は速攻で断った。

当たり前である。


「はっ?いいの、断るんなら秘密をバラすわよ!」


「どうぞバラしてくれて結構だ!それなら明日、みんなの前で楓ちゃんに告白をすればいいし、もし断られても別に後悔はないから」


「なっ!そんなにあの女の方がいいの?」


「ああ」


「あの女、いつも無口で貴方としか喋らないし、無愛想でぼっちなのよ!」


「それでも楓ちゃんは俺の大切な人だから」


「・・・あっそ!もういいわ!マジあり得ない!あんたのせいであの女がどんな目に合うか楽しみね」


 そう言って門倉さんは帰っていった。


(まるで、アニメやマンガに出てくる噛ませみたいだな)


 俺はそのまま部活にいき練習をしたが、終始門倉さんの事が気になっていた。


(噂の通りなら楓ちゃんに嫌がらせをする可能性もあるな、明日は一緒に登校しよう)


 心配になった俺はそう決めた。


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補足

門倉里奈は自分こそが一番可愛いと思っている女子で、自分と同じくらい可愛いと言われている楓に対して対抗心がありました。

しかし、楓には京と言う彼氏がいた為に劣等感を持っていた所に京と楓の話を聞き、二人の仲を割きあわよくば京を自分のものにしようと考えていました。


補足2

京の進学について両親は、もし京が約束を破ってしまっとしても京の希望する進路に進ませるつもりでいましたが、その事を言うタイミングを逃してしまい、京はずっと約束を守る為に頑張ってきました。

もし、両親が京にその事をもっと早く言ってさえいれば、二人が言い争う事も無かったでしょう。


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