分岐点(ターニングポイント)


やがて時は流れていき、俺たちは小学生になった。


と言っても何かが特別変わるわけでもなく、俺は柔道を続けていき大会でも優勝をしまくっていた。 


そんな俺についたあだ名が『鬼小僧』。

なんでも、俺の試合を見た父さんの同僚の人が名付けていつの間にか広まったのだが、特に気にしなかった。

それよりも、その同僚の人が現在では警視庁の一課長になっている事の方が驚きである。


あと、この頃から従妹の日和と二人で遊ぶ機会が増えていった。日和は俺と同じで、両親が仕事の為ひとりでいる事が多くとても寂しがり屋で、俺が面倒を見てあげないとすぐに泣いてしまう子だった。


そんな日和を俺はよく面倒を見ていた。

日和はすぐ泣く癖に、俺が頭を撫でてあげると笑顔を浮かべながら俺に甘えてくる子で、俺がよくピアノを弾いていると歌を歌っていた。最初は下手くそだったけど、だんだんと上手くなっていって、最後の方はとても上手くなっていった。


 そう言えば、この時日和に楓ちゃんの事を紹介したら二人してなんか変な空気になっていた様な気がする。


そんな楓ちゃんとは同じ小学校で、いつも一緒に遊んだり、放課後は道場の時間まで近くの公園で遊んでいた。

学年が上がって、クラスが別になっても俺は楓ちゃんと出来るだけ一緒にいた。


そんな俺たちを見て、周りからは『カップル』や『夫婦』なんて言われていたけどお互い別に気にしてなかった。

この頃からすでにお互いのことが大好きだったからだと思う。


でも、運命の神様はそう簡単には幸せな生活を送らせてはくれなかった。


小学6年生になったある日、俺は母さんから


「京、中学は私立を受験しなさい」


と言われた。俺はすぐに


「嫌だ!俺は絶対に、私立なんて行かない!地元の中学に行く!」


「な、なな・・・」


俺は全力で拒否をした。


理由は簡単だった。楓ちゃんと離れたくなかったからだ!

俺は母さんと話し合いと言う名の口喧嘩を何度も繰り返して、幾つかの約束をしてどうにか地元の中学へと進学した。


中学に上がり、俺はこの日ほど神に感謝した日はないと思った。なんせ、俺と楓ちゃんは同じクラスだったのだ。


本当に嬉しかった!!


うちの中学では、1年と2年の時はクラス替えをしないのだ。

これで、2年間は楓ちゃんと一緒ならいられる上、3年の時は文系と理系に分かれるのでその時は同じにすれば良いと考えていたからだ。


その後、俺は柔道部へと入り、楓ちゃんは文芸部に入った。


中学の柔道部は、お世辞にも強いとはいえなかったが、それでも俺は絶対に全国優勝をすると言う意気込みを持って、部へ入った。

楓ちゃんは、別に部活に入らなくてもよかったのだが、俺と一緒に登下校をしたいと言う理由から自由度の高い文芸部に入った。


お互い部活で会える時間が減ってしまったがそれでも部活に入るのは母さんとの約束の一つだったので仕方がなかった。

それに登下校はいつも一緒なのでまぁ許せる。


でも、1番許せなかったのは楓ちゃんが男子達からモテだしたことだ!


元々楓ちゃんは、美しい肩までかかる黒髪に大和撫子のようなお淑やか美人なので、モテるのしょうがないのだが、それでも俺としてはなんだか良い気分じゃなかった。


実際、小学生の時も楓ちゃんに告白しようとした奴が何人もいたが、俺が全て消した。


あっ!物理的じゃ無いからね!


嫉妬していた俺は、ある日の帰りがけに楓ちゃんへ少し嫌味を言ってしまう。


「そういえば楓ちゃん」


「なに、キョー君?」


「なんか最近、モテてるみたいだけど俺と一緒に帰って大丈夫なの?」


すると今度は、楓ちゃんが拗ね出して、嫌味を言ってきた。


「そうゆうキョーくんだって、女の子からモテモテじゃん!わたし、何度も他の女子からキョーくんと付き合ってるのって聞かれるんだよ!」


と言ってきた。


正直最初は「何を言ってるんだ?」と思ったが思い返してみると確かに、何度か女子から誘われる事があったけど、俺にとっては楓ちゃん以外はその他大勢の女子としか見ていなかったので全て断ってきた。


ここでようやく、お互いが同じ事で拗ねていることに気づいた俺たちはある決め事した。


それは、『お互いが付き合っていると周囲に言う。でも、ちゃんとした告白は卒業式までとっておくこと』と言う物だった。


なんで卒業式までとっておくのかと聞くと楓ちゃんはその方がロマンチックだからと言って笑っていた。


だけど、世の中はそおうまく行かないもので


これから起こるあの事件の結末を知っていれば、たとえ俺は楓ちゃんの機嫌をそこねることになってでも告白しておけば良かったと今でも後悔している。




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補足1

京の進学について

京のお母さんが京を私立の中学に進学させたかったのは、そこが都内で最も柔道が盛んであり、将来警察官になろうとしていた京にとって、大切だと思ったからです。

決して、体裁や世間の目を気にしてなどではありません!!



補足2

京と楓について

小学校に上り、京と楓はいつも一緒に登下校をし、休み時間も一緒にいました。

それを見て周りは茶化していましたが、学年が上がるにつれて、カッコいい京と可愛い楓はそれぞれモテていきます。

でも、二人はすでに、相思相愛のような関係でしたので、周りからのアプローチなどを全て無視していました。

そのせいで京は何度か男子たちから決闘のようなものを申し込まれ、その全てを返り討ちにし、楓に至っては京にも話していませんでしたが、ちょっかいをかけてくる女子たちに対して、ありとあらゆる手段で相手を黙らせできました。

そのおかげで、二人は幸せな小学校生活を送れました。

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