生徒会長と二人の美姫
東子サイド
長いゴールデンウィークが明け、今日から久しぶりに学校が始まる。
私は生徒会長として、早めに登校しなければいけないのでいつもよりも早めに家を出た。
昨日は姉さんと、久しぶりに喧嘩をしたので昨日の夜から一度もはなしをしていない。
姉さんと喧嘩なんて、私が中学生の時以来だけど、あの時はすぐに仲直りができたが、今回だけは別だ!なんせキム兄に対してあそこまで強攻策を取ってくるとは思っても見なかった。
こんなんで来週のTDWに行けるんだろうか?
と思ってしまうが、それでも今回だけは私も折れるわけにはいかない。
そんなモヤモヤした気持ちを抱えながら登校すると、私の下駄箱に何かが入っていた。
確認してみると手紙の様で、どうやらまたラブレターの様だ。
名前が書いてないので私はそれを破り捨てて生徒会室へ行く。
それを見ていた友達は心配していたが、私はこういった手紙やメールなんかで呼び出そうと考える神経が分からない!
自分で来ない時点で論外だ!まぁ誰がきても、私にはキム兄意外は考えられないから意味ないんだけど。
(もし、名前が書いてあったらそいつの教室に乗り込んで一言文句を言ってから振ってやろうと思っていたのに)
お昼休み、私が生徒会室で昼食を取ろうとすると赤みがかった茶髪の女の子がやってきた。
「こんにちは葵先輩、この間の大会ではおめでとうございます」
「ありがとう紅里さん。父や姉に伝えときますね」
この子の名前は「紅里ミチル」1年生
柔道で全中準優勝した子で、1年生にして柔道部のエースと言われている。
私も大会で何度か闘った事があり、どうやら私をしたって、うちの高校へ来たそうだ。
そして、私や芽依ちゃんと同じで音羽4美姫の1人で「紅姫」ってあだ名がついている。
「それにしても先輩のお姉さん凄かったですね!同じ女として本当に尊敬します!」
「そうね、私も自慢の姉よ」
「あの、ひとつお聞きしたい事があるんですが」
「何かしら?」
「先輩のお知り合いに、黒髪で眼鏡をかけたかっこいい大学生位の人はいませんか?」
「うーん、そんな人はいないと思うけど理由を聞いても良いかしら」
「はい、実は会場で絡まれまして、その時助けてくれたのがその人なんです。しかも凄く綺麗な技を使う人で思わず見惚れてしまいました。それが先輩の流派の技に似てる様な気がしたんですが違いますか、残念です」
「ちなみにそれで、その人にあったらどうするの?」
「えーと、できればお礼したいです」
「そう、見つかると良いわね。ちなみに絡まれたのはいつ頃なの?」
「確か準決勝の前ですかね」
「!!」
「どうしました先輩?急に驚いた顔して?」
「い、いえなんでも無いわよ!それじゃあまたね」
「はい、失礼します」
紅里さんは自分の教室の方へと去っていった。
「危なかったわ!多分だけど紅里さんが言ってた人は間違いなくキム兄ね!たしか準決勝の時はいなかったし、投げ技が綺麗で似てるなんてキム兄しかいないわよ!ハァー、またライバルが増えそうな予感がするわホントに」
放課後
生徒会室で仕事をしていると選挙管理をしている先生がやってきて次の生徒会長候補の書類を持ってきた。
うちの高校では6月の中頃には会長選挙が行われて生徒会が代替わりする。
私は書類に目を通すとそこには1、2年生の中から立候補又は、推薦された生徒の情報が乗っていた。
その中でも気になったのは2年生の3人だ。
1人目は現在副会長をしている子で、順当に行けば次の会長は彼女だろう。
2人目は芽依ちゃんだ。どうやら彼女は推薦の様でおそらく立候補は取り下げると思う。
最後は、今年転校してきた「木村日和」さんだ。たしか、転入試験で高得点を叩き出し、取り分け英語に関しては満点をとったらしい。
さらに容姿端麗で、私や、芽依ちゃん、それに紅里さんと同じ、音羽4美姫の1人で「歌姫」と言うあだ名が付いているほどだ。
(でも、1番気になるのはこの子の苗字がキム兄と一緒なのと、出身地も東京なのよね。でもキム兄は兄妹はいないって言ってたし、きっと違うわよね?)
生徒会長は次の会長立候補者と一度面談をするのが通例になっているので今日はまず副会長との面談だ。
(と言ってもいつも話しているし、あんまり意味ないけど)
翌日
いつも通り生徒会室で昼食を食べようと向かっていると中庭に木村さんと男子生徒が2人でいた。おそらく告白だろう。
私は物陰から見ているとやはり男子生徒が木村さんに告白をした。
「木村さん好きです!俺と,付き合って下さい」
しかし、木村さんは
「ごめんなさい、貴方とはお付き合いはできません」
と断った!
「な、なんで!理由を聞いてもいいかな?」
「えっ!あの、タイプじゃないんです」
「そんなこと言わずにさ、お試しって事でどうかな?」
「ごめんなさい。お断りします」
「ふ、ふざけるな!俺が告白してやってるのに断るだと!」
「な、いきなり何をするんですか?やめて下さい!」
振られた男子生徒が木村さんの腕を掴んだ。
木村さんは必死で振り払おうとしたが流石に男の腕力には勝てない。
私はすぐに男の元へと行きその手を掴んで投げる。
「痛え!何をすんだよって・・・か、会長!」
「ふん!振られたからって女の子に手を挙げるなんて最低な男ね!よく見たら貴方、前に私に振られて逆恨みして襲ってきたやつじゃない!あんたも懲りないわね!」
「え、あの、その、」
「とっとと消えなさい!そして二度と関わるんじゃ無いわよ!分かった!?」
「はい!!すみませんでした!」
男子生徒は脱兎の如く逃げていく。
私は唖然としている木村さんに声をかける。
「大丈夫?怪我はない?」
「はい、大丈夫です。ありがとうございました。たしか3年生で生徒会長の葵先輩ですよね?」
「ええそうよ。気をつけてね、ああゆう男もいるんだから!」
「はい、分かりました。それにしても先輩カッコよかったですね!まるでキョー兄みたいでした!」
「????」
「あれ?どうしたんですか葵先輩?」
「ねぇ貴女、今なんて言ったの?」
「えっ?先輩カッコよかったですねって・・・」
「違うわ、その後よ!」
「えっと、まるでキョー兄みたいって」
「そのキョー兄ってどなた?」
「すみません。キョー兄はですね、私の従兄で、今大学生なんですけども、とても強くてカッコいい人なんですよ!それに料理も得意で、いつもご飯を作ってくれるんです!私のお弁当もキョー兄の手作りなんですよ!」
暴走している木村さんが落ち着くまで待ってから
「ちなみにその方のお名前は?」
と聞くと
「あっ!忘れてました。「木村京」って言います」
「えっ?!えええええええ!!!!!」
私は思わず大声で叫んでしまった。
「どうしたんですか葵先輩?!いきなり大声を出して?」
「ごめんなさい。もしよろしければこの後、一緒に昼食を取らないかしら?お話したいこともあるし」
「分かりました。お弁当を取ってくるので、ちょっとまってて下さいね」
木村さんは自分の教室へと行きお弁当を持ってきた。
「お待たせしました葵先輩」
「大丈夫よ、それよりどうぞ座って」
「ありがとうございます。私、生徒会室に入るの初めてです」
「そうね、たしかにあまり人の出入りは多くないものね。それにしても、随分美味しそうなお弁当なのね?」
「はい、キョー兄が毎日作ってくれるんですよ。それに、偶にキャラ弁なんかも作ったりして可愛いですよね」
「へぇー、凄い女子力高いわね。所で2人は一緒に住んでいるの?」
「いえ、私一人暮らしで、隣にキョー兄が住んでいるんで毎朝起こしてくれるんです」
「うらやましいわ」
「えっ?なんかおっしゃいましたか?」
「い、いえ、なんでもないわ」
「そうですか?それでなんのお話でしょうか?」
「ええっと、ほら今度生徒会長選挙があるでしょ!その立候補者に面談をしているのよ。まぁ、面談って言ってもそんな堅苦しいものではないから心配しないでね」
「はい、分かりました」
しばらくして面談が終わるとちょうど昼休みが終わった。
「それでは葵先輩、失礼します」
「ええ、今日は付き合わせて済まなかったわね」
木村さんは最後に会釈をして生徒会室を後にする。
残った私はテーブルに顔を突っ伏してしまう。
「はあー、まさかキム兄に従妹がいるなんて知らなかったわ!それも後輩だなんてね。それにしても、聞いているだけで羨まし過ぎるわ、毎日起こして貰って、ご飯を作って貰う上、お弁当まで・・・しかもあの顔は恋する乙女の顔よね。またしてもライバルが増えていくわ!姉さんに、芽依ちゃんに木村さん。
このままだと私じゃ勝てない・・・こうなったら、今度のデートでは私からアプローチをかけないと!」
私は拳を上に挙げて覚悟を決めた。
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