怖いと恐い


「ねぇ木村君、私と・・・・しようよ」


ヤバイ!可愛いを超えてエロい!

童貞の俺にはやばい、誰か助けてくれ


俺は心の中で叫びをあげた!


「・・・な、なにを?」


俺は残っている理性をフル稼働してなんとか言葉を搾りだす。

このままだと南ちゃんを押し倒してしまいそうだ。


(やばい、南ちゃん目がめっちゃ怖いんだけど!これから俺、なにされんの?マジで?)


「ふふ、分かってるでしょ。男と女が一緒の部屋にいるんだよ」


さらに南ちゃんは色っぽく囁いてくる。


「い、いやいやダメだよ南ちゃん!南ちゃんならもっといい男がいるでしょ!俺なんかよりもさぁ」


「そうやって自分を過小評価するあたり、木村君らしいわね。まぁそこがいい所であり、ダメな所でもあるんだけど」


「と、取り敢えず離れてくれないかな。これ以上は流石に俺も限界なんだよ」


「へぇー、木村君もやっぱり男の子なんだねふふ、それじゃあえいっ!」


いきなり南ちゃんは俺の耳を甘噛みしてくる。


「ちょっと!何するの南ちゃん。耳はやばいって、あっ!」


俺が離れようとした瞬間、今度は耳を舐めてくる。舌が耳の穴の中へと入っていき艶かし音が聞こえてくる。


唾液によって舌がスムーズに耳の中で動き回りくすぐったい上、だんだん気持ち良くすらなっていく。


毎晩寝る前に耳舐めのASMRを聴いている俺だが、次第に体がゆう事を聞かなくなっていき、ベットに倒れてしまう。


「うふ、やっぱり木村君は耳が弱いのね。前に寝技の時、偶然耳に息がかかったら力が抜けてたからそうじゃないかなーと思ったんだよねー」


南ちゃんは耳舐めを止めて俺の上に馬乗りになる。


「も、もうダメ」


力が入らずベットに横たわる俺に南ちゃんが


「それじゃあ頂きまーす」


と妖艶な笑みを浮かべて、唇を重ねようとした瞬間扉が勢いよく開いた。


「ハァ、ハァ、姉さん!何やってるの!ハァ、ハァ」


東子ちゃんが荒い息遣いで南ちゃんを呼ぶ。


 その顔には今まで見たことのないような憤怒の表情をしていて怒っているのが一目で分かった。


「ちっ!あーあ、これからがいい所だったのになー」


南ちゃんは舌打ちをした後、俺の上から退いて東子ちゃんの側へと行く。


「いつの間にか2人ともいなくなったと思ったらまさか抜け駆けするなんてね!本当に油断も隙もあったもんじゃないわね。それで、姉さんは何をする気だったの?」


「あら、分かってるでしょそれくらい。まさか卑怯なんて言わないわよねぇ」


「別に卑怯とは言わないけど、どうせキム兄に、酔ったふりをして部屋まで連れ込んだんじゃないの?」


「ふりなんてしてないわよ。本当に酔ってるんだから」


「嘘でしょそれ、確かに姉さんはいつも酔うと言動が変わるけど意識ははっきりしてるし、判断力も残ってるはずよ!」


「「・・・・・・」」


最初笑っていた2人が真顔で睨み合ったまま何も喋らなくなる。

沈黙が続く中、2人の間で火花が散っているようにも見える。


沈黙に耐えかねて俺は


「ごめん、ちょっとトイレに行ってくる」


と言って部屋を出てトイレへと駆け込む。

トイレの中で俺は


「勘弁してくれよもう。どうすりゃあいいんだよこれ」


と、俺は自分の下半身の方を見る。

そこには、人生で1番巨大化した俺のエクスカリバーがある。


「よく耐えたよ本当」


と、エクスカリバーを褒めてから落ち着くまでトイレで時間を潰し俺は道場の方へと行く。


流石に、また南ちゃんの部屋に戻る勇気は俺にはない。


道場に戻ると、南ちゃんと東子ちゃんが2人で何か話しているが俺は疲れたので寝ている師範の代わりに奥さんに挨拶をしてそのままバイクで帰った。


マンションに到着すると、俺はすぐに部屋に行きエクスカリバーを慰めてからしばらく寝た後、南ちゃんが言っていた言葉を思い出す。


流石に、俺はラブコメ主人公のように鈍感ではないので、あの言葉の意味は分かっている。


だが、俺は南ちゃんの気持ちに応えることはできない。と言うよりも、拒否してしまう。


確かに性的な気持ちはある。それについては断言できる!


さっきだって、もし東子ちゃんが来なければ多分流されてそのまま体を重ねていただろう。だが、それ以上の感情は湧かない。


世間的に言う、愛や恋と言った感情を、女性に対して湧く事が俺にはできない。


あの日から俺は、女性に対してそう言った感情を持った事は無い。


だからこそ、気安くデートなんて言ったり出来るのだが。


「はあー、最悪だな・・俺は」


改めて本当に嫌になる。

自分が中途半端過ぎて、本当に嫌いだと思ってしまう。


そして、そんな自分の事が時折恐くなる事があるのも事実だ。


何もしたく無い俺は、日和に一本メールを入れてから再び眠りについた。

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